秋
太陽の光が雲間から覗く。
それを背に浴びて深いため息を吐く。
俺は紙だらけの机に目を向けた。
もう14時になろうとしているのに何も手についていない。
真剣に考えた長所は1行半で筆が止まっているし、何度も書き損じてゴミになった俺の将来は、ゴミ箱にもたどり着けずに机の上で不貞腐れている。
一人での生活はこの4年でだいぶ慣れた。
煙草はベランダで吸うのが美味いことも、酒は少し良い値段の張るものが美味いこともこの4年間で学んだ。が、将来に対する不安だけはいつになっても心に残っている。
周りの人間は内定式だのなんだので「社会人」としての階段を上っているのに対し、俺はいまだに「大学4年生」という立場に甘えて昼間から酒と煙を呑んでいる。
もう少しマシな人間になれると思っていた大学1年生の春の俺は、なんの努力もしない癖に理想を並べ、上手くいく妄想ばかりをしている俺を見てどう思うだろうか。
「情けない」
「そんなもんか」
「こうなると思っていた」
「死んでいないだけましだと思おう」
「いっそ死んでいれば良かった」
そんな風に思うだろうか。
もう一度深いため息を吐いて報われない将来を捨て、新しい未来にインクを落とした。
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