君はベッドの中で静かに寝息を立てている。連日の大学のレポートを寝る間を惜しんで書き上げていた反動だろうか。あんなに楽しみにしていた夏祭りの花火の時間が近付いているのにベッドに沈んだまま動かない。

下から見る花火より大きく綺麗に見える特別席。去年一人で見たときはただの炎色反応だ。とかひねくれていた、そんな花火も少し、いやだいぶ美しく見えるぐらいには君は特別な人だ、と感じている。

「ほら、もう少しで始まるよ。」声をかけて体を少し揺らしても呻き声とも返事ともとれる声を上げただけで起き上がっては来ない。

外で大きな音が鳴る。心臓を叩くような音が光の後に続いて。

「ねえ。もう始まってるよ。起きないの?」いつまでたっても起きてこない君に少し溜息をついた。

「きっと起きたら拗ねるだろうな。」思わず苦笑いが顔に出る。

「手持ち花火でも喜んでくれるといいけど。」君の前髪を少し横に流し、僕もベッドに入り沈んでいった。

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