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そう言ってだだをこねていたかわいい彼女も、僕が食事を終えて片付けをはじめるとあっさりベットに移動し寝息をたてていた。最近彼女の寝付きがいいが疲れているのだろうか。以前は深夜まで、薬飲んだのに寝れない!と騒いでいたのに。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あの日も、彼女は同じようにソファで毛布にくるまっていた。何もかもいつも通りだった。
「先輩」「ん?」「先輩、もし僕が、先輩のことが好きだ、って言ったら、どうします?」
僕は弱いから、そんな言い方しかできなかった。
「んー、私も好きだよ?かずくんのこと」
ソファから起き上がった彼女は、よそ行きの綺麗な笑顔をしていた。
「そうじゃなくって、例えば、付き合ってって言ったら、こんなお世話係とかじゃなくて、ちゃんと、僕のこと」
「んー、かずくんは、可愛い後輩だからねー」
彼女が戸惑うどころか普段通り茶化すから悔しかった。
「じゃあどうしたらいいんですか。僕が頑張って勉強して、先輩みたいに研究とかして、そうしたら認めてくれますか。」「んー、そうだねー」「隠さないで本当の事言ってくださいよ」
「んー、」
彼女は僕に背を向けるように座り直した。
「君のことはね、たぶん、すきだよ、だいすき。だけどね、なんだろーね、うーん、私は、今のままの君が、すきかな。君の欲しいのは、きっとそうじゃない。そうでしょ?」「僕は、先輩がいればそれで」「だめ、君は幸せになるの」彼女は食い気味に言った。「私は、君のこと、好きだから」
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そんな話なんてなかったみたいに、あまりにもあっけなく日々が過ぎていった。彼女は毎日のように吐いていたし、僕もいつものように背中をさすったし、彼女がそんな僕の手を拒絶することはなかった。今までもこれからも彼女が何を考えているかなんて分からなくて、こんなに近くにいるのにな、と思った。彼女が心の中に描いた境界線、一体誰なら入れるのかな。もし誰か入れる人がいたなら、僕が泣きじゃくる彼女を宥めることも無くなるのかな。
だから、きっとあの好きだよは聞き間違いなんだ、そう思うことにした。そうでもしないと、彼女の優しさが眩しすぎて、そんな素敵な彼女に気を遣わせてしまった、自分の惨めさに耐えきれなかった。
こんなに近くにいて、彼女の弱った背中に触れて、こんな彼女の姿きっと僕以外誰も知らなくて。それなのに、僕は彼女のことが何も分からなくて、何を考えているとか、何にも教えてくれなくて。そんな彼女にイライラして、でも僕はどうしようもなく彼女から離れられなかった。どんなにゼロ距離にいたって、きっと彼女は僕に心を開いてくれないのに。僕に分かるのは、
「先輩、これあげます」「えっ!あれ、今日何の日だっけ?」「そうですね……今日は研究進めてきちゃったので」
彼女はプリンが好きだということくらいだ。
備忘録 楪 玲華 @if49162536
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