善悪は種族に在らず。各々の心に在るのだ

 妖怪たちが人間と同じ世界で暮らす中、主人公の妖怪少女は父母の影響により人間の粛清を肯定する教団に入ってしまった――簡潔かつ明瞭な文体が、少女を取り巻く環境の異様さと、教祖の底知れぬ狂気と悪意を際立たせております。
 危険思想・裏切者への粛清と全体的には重々しい内容ではありますが、最後には明るい展望が見えるエンディングとなっており、読み口も爽やかです。

 中編の手軽に読める分量ですが、現代社会にも通じるものがあり、考えさせられる内容でした。