第2話 風俗嬢「えぇっ?おニイさん、健康保険知らないんですかァ?」
「えぇっ!?おニイさん、健康保険知らないんですかァ?」
初めて風俗というモノに行ってみたら、相手の嬢にこんな事を言われてしまった。
健康保険?知らない言葉ですね。
「だって、おニイさん冒険者の人でしょゥ?」
冒険者とは冒険者ギルドに登録された人材の事を指して言い、冒険者ギルドとは伝説の勇者が設立した組織である。
そして、冒険者ギルドに登録した以上、ギルドはギルド員を管理する。
身体的特徴から健康状態、さらには性癖に至るまで。
「ココまで、イイですかァ?」
「アッハイ」
この状況は何だろうか?
目の前には、ミニの白衣を纏った風俗嬢。
白衣の下からはみ出る太ももが眩しい恰好だ。
案内された部屋は書類の乗った机に簡易なベッド。
初めて行ってみた風俗店は、想像した場所とは少し違っていた。
顔を合わせてからの一言は
「健康保険適用するゥ?」
こちらが知らないという事を知ると、がらがらと、どこからともなく白いボードのようなモノを引っ張り出してきて板面に文字を書きつつ説明会が始まった。
元々、冒険者をしていたという彼女は、引退後に生活費を稼ぐ為にこの仕事を始めたという。
その為か、冒険者について詳しい。
「若い人って、『冒険者に俺はなる!』って気が逸っちゃって、受付の人の説明を聞かないでショ?」
そんな事を言いながら、手慣れた手つきでお茶を淹れてくれる。
「だから、コッチを初めて利用する人に説明をするの」
同じ説明をされるにしても、女性よりも男性の方が聞かない割合が多い。
それで男性が利用する施設で追加の説明をする、という事を説明された。
「面倒に思えるかもしれないけど、私としては色々な人とお話出来て楽しいのョ」
ところで、健康保険の話はどこに?
「健康保険というのは、冒険者ギルドに登録した人たちの健康を維持する為の制度だョ」
白板に冒険者だろうか?人の絵を描いて話を続ける。
「冒険者の人が良い仕事をすればするほど、冒険者ギルドの評価も上がるんだから当然、冒険者の質を上げる事はギルドの関心事になるの」
人の絵の周りに服、肉、家の絵を描く。衣食住を表しているのかな?
「だから、生きる事に必要な事はギルドが手掛けてギルド員をサポートするし、健康もそう」
少し離れた所には、十字の印が付いた建物と教会の絵。
「怪我や病気の時も、冒険者ギルドはきっちりとサポートします!」
びしっ!と人差し指を立ててドヤ顔の風俗嬢。
立てた指の関節が妙に太かった。
話をまとめると、ギルドから支払われる依頼料。
あれは、依頼人から受け取った依頼料そのものの金額では無くて、仲介手数料の他、保険料として数パーセントが天引きされていたらしい。
「ギルドが健康保険料として徴収した分は、ギルド員が怪我や病気などの時のサポートに使われてるんだョ」
具体的には、提携している病院、神殿の利用料が割安になるらしい。
あと、風俗。
なぜか、風俗。
「健康な成人男性は、毎日精子を作り続けています」
と、今度は白板に男性器の絵を描きながら説明を始めた。
なぜか妙に上手い。
「だから定期的に抜いてあげないと、健康に悪いのです。それで男性の冒険者の健康の為に、冒険者ギルドがこういうお店を作る必要があったのョ」
冒険者では無くても利用は出来るが、冒険者は保険が利くので割安になるという。
「他にも、定期的に健康診断もやってるョ」
冒険者カードは一年に一回、更新の必要がある。
「ほら、カードのここにチェックが入って無いって事は健康診断を受けてないって事だから。忘れずに受けておいてネ」
「話がひと段落したところで・・・さっそく、ヌいちゃゥ?手でスルなら10G、おクチなら15G。その他のオプションは保険が利かないから別料金になるのョ」
ニコニコと微笑みながら、両手で卑猥なしぐさをしながら風俗嬢が言う。
「おニイさん、チョット私の好みだから、少しサービスしても・・・」
改めて彼女を見る。
ミニの白いワンピースからはみ出る足と腕。
はちきれんばかりに
肥満?
否。
それらは全て、鍛え抜かれた筋肉である!
ニコニコと明るく話す彼女。
それだけ見れば実にいい子だと思う。
だが、荒縄をまとめたような手足を持つ彼女を前に、その気になれるか?というと別問題だった。
どのように答えるか?
ここまで話してくれた彼女に対して、申し訳無く思うと同時に、遺憾の意を伝えよう。
ゆえにチャワンを置き、こう伝えたのだ。
「チェンジ!」
貞操逆転世界とはチョット違う。 余記 @yookee
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