第77話

「さあ、皆さん外へ出ましょうか」

 オーゼムとぼくたちは外へ出ると、昼間の空を覆うほどの粉雪が舞って来ていた。気温もいつも通り下がり始めた。


「オーゼムさんは天界にどうやって帰るのですか?」

 ヘレンの微かな涙声に、オーゼムは微笑んだ。

「あれ? 見えませんか? もう、すでに目の前にあるんですが?」

 

 ぼくらの目の前には巨大な半透明の階段が、いつの間にか現れていた。


「どうでしたか。人の魂は……。おおよそ皆、魂は磨けば磨くほど更に綺麗になるんです。例え罪人でもね。だから、磨かなきゃいけない。それでは失礼しますね。さよなら」


 オーゼムはそう言うと半透明の階段を天へと登って行った。


 ぼくの記憶ももうすぐ戻るだろう。

 だって、アリスの声色は……。

「アリスの声は、大好きだった。今でも好きだ。だって、大昔に失ったフィアンセと同じ声色だったから……」

 ぼくは隣にいるアリスの肩を優しく抱いた。

「そう……悲しいですね。でも、私にとっては、とても嬉しいことです」

 アリスは少し悲し気な声色になって、俯いたがすぐに上を向いた。

「一つアリスにお願いがあるんだ。ここで、昔叶わなかったことをしたいんだ」

「ええ、いいですよ。結婚をしましょう」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜を狩るもの 終末のディストピア   主道 学 @etoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ