第8話

パラノイア




  イコとリズが

   ロビーのドアを開けた。


  天然教の配信が始まる所だった。


   ロビーには、麻世、タロの他にも、

  数名がその様子を見守っていた。



  タロにうなさがされて、

   椅子に座るイコとリズ。




セン「はじめよう。」


麻世「、、」


タロ「はい。」




セン「おはようございます。」


セン「、難しい話かもしれません。

   長くなると思います。


  聞いてください。」



  センは仮面を外していた。

   まだ、日も上る前というのに、

  センの素顔、それに対する反応で、

   コメントが凄まじく流れている。



イコ『センさん、

    とても心が静か。

   余裕?、、』


セン「、この星に、

   人が住めなくなるまで、

  100年もかかりません。」



セン「30年かもしれません。」


セン「あいつぐ異常気象は、

   偶然ではありません。」


セン「近年、急発展をとげる、

   人類により引き起こされた、

  必然です。」


イコ『こんな人はじめてだ、

    何て言うのだろう。』



セン「人々は、この星から、

   資源を取り出しては、

  便利な物を作り、

   よい世界を作ろうとしてきました。」


セン「それにより、

   星は歪んでいきました。」


イコ『、、ジンのこと、

   やっぱり知ってる、?、』



セン「星という球体は、

   重さという力が、

  中心でぶつかっている物。」


セン「中心でぶつかる重さが、

   全方位ほぼ等しい事で、

  星は球体という、形を成します。」


セン「採掘などにより、星のどこかに

   軽い部分を作るとどうなるか。」


セン「中心でぶつかる、重さという、

   押す力に強弱ができます。

    軽い部分は、

  他の方向から押される。」


セン「すると固体は液体へ、気体へ、

   形を変えて、軽い場所へ、

  流れていく。」


イコ『、ジンとは違う、

   ジンはどこか、楽し気に話す、

  、、この人は、、、

   どこか、心ここにあらず、?』



セン「その時発生する熱、それが地熱。」


セン「地震が起きる。

   プレートがあり、それが地中に

  引き込まれる、その仕組み。」


セン「風が吹くのも、雨が降るのも、

   この仕組み。」


イコ『あえて、この雰囲気を、

    演じているのかな?』



セン「そして、ときおり空からは、

   おたまじゃくしや、カエルが

  降ってきた。」


セン「生命?人間を含む頭部があり、

   背骨へ続く、おたまじゃくし族の、

  誕生か?」


セン「そしてカエルは形を変えた。

   環境にあわせて。」


セン「地球という、

   いつか歪んだ星の経過。」



セン「僕が再三、マニュアル進化、

   環境適応力の向上を

  うながしてきたのは、」


セン「我々が、新しい星に移住し、

   そこに、適応するため。」


セン「他の星に大きな穴を開ければ、

   そこに水が溜まり、

  大気も発生する。」


セン「この星とは違う大気、

   違う環境、そこに、

  適応するための適応力。」


セン「環境を整備する機械技術も、

   医療も、そこへはもっていかない。」


セン「適応追い付かず、病気という

   状態になり、弱り死ぬものを、

  助けたりはしない。」


イコ『!嫌いだ!

    何?この嫌悪感。

   こいつが嫌い。

  嫌い?こんな感情はじめてだ、

   なんなの?この人。』



セン「適応したものが、その遺伝子を

   未来へ託す。」


セン「適応しつづけ、老いる事もせず、

   成長し続ける個体、

  その者達を王とし、ただ生きる。」


イコ『何を考えてるの?

   こんなやり方をして、

  どうしたいの?』



セン「この星、この文明は人により、

   作られすぎた。」


セン「時に、その王を、

   鬼や魔女、などと蔑み、

  ないものにして、

   進めた歴史。」


イコ『やめて、嫌だ、

    やめろ!!』



セン「出来上がった今がいいものと、

   僕は思わない。」


セン「違う結果を願っての方針。」


イコ『仕向けたい方向はどこなの?

   混乱を、悲劇を、うみたいの?』



セン「ボスは果たしてボスなのか?

   ちゃんと、選んだのか?

  人が猿なら、多くの猿の幸せは、

   よいボスに使えること。

  老いぼれがボスなど、

   人間の他では、ありえない。」


イコ『犠牲になろうっていうの?

   汚い部分も明るみにして、』


セン「医療技術の向上に伸びた寿命、

   若者の、未来への、

  枷になりたいの?」


イコ『、心、読まれてる、、』


セン「なにがしたいの?

    なにをしてるの?

   それでいいの?

  よかったの?」


イコ『、、この場のみんなの心も、

    私がこう思ってる事も、

   計算済みなの?』


セン「僕は行くよ、別の星へ、

   君たちがなんとかしなよ。

  この星の崩壊。」


イコ『なんであんたが、

    なんでこんなことしといて、

   そんなにも、冷めてるんだよ!』


セン「、、崩壊の仕組みは、

    教えたからね。」


セン「、それと、」


  ガシャーン!

   イコは撮影の機材を破壊した。


  配信を、強制的に、終わらせた。



ニク「がはははははは」


リズ『ごめんなさい、ごめんなさい

    ごめんなさいごめんなさい

   ごめんなさい、ごめんなさい、

  ごめんなさい、、』



イコ「なんであんたが、

   やろうとしないんだ。」


イコ「どうして、あんたが希望を

   みせてくれないんだよ!」





  沈黙を嫌う

   意思なき進行を嫌うジンの思考、

   センはそれを投影していた。

  イコの100点を越えるかたちで、


  ジンが好む、人の綺麗さを

   かきけしながら。


   自分が何もできない苛立ちの中、

  そんなセンに対する不満ばかりが

   込み上げることに、イコは、、



   魔法は、呪いに変わった。



   

~つづく。




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