みかん山ダイブ

　医師の子でありながら、病気治療よりも食事指導が大事と考える上野聡子の将来の夢は管理栄養士。
その聡子が湯河原のみかん山で崖から落ちて、戦時中の学童疎開にタイムスリップする。聡子の名前は、曾祖母の名前をもらったものだ。
　昭和19年の夏、横浜市立Ｔ国民学校初等科五年生だった曾祖母・円城寺聡子は湯河原の共栄館に学童疎開をした。その3日目の曾祖母の体に聡子は入り込んだのだ。
　聡子は、疎開生活の食事の貧しさに慄然とする。食に関する教育をまったく受けていない子どもたちは、人間は食べなくても死なないという東条英機の哲学を信じている。大人たちは、武士道や大和魂という精神論に洗脳され子どもの現実を直視しようとしない。　
　聡子は人間には最低限必要なカロリーと栄養素があると主張する。その主張に清子たち同級…続きを読む