「お前はカクヨムへ転生することになったのじゃ」「急展開だな。つかどこなんだここ、随分狭いな」「タイトルじゃ」「はぁ!? なんでだよ、せめて本文に転生させてくれよ!」「わがままじゃのう。ほれ」

黄黒真直

「エピソードタイトルにも字数制限があるのか?」「もちろん。エピソードタイトルも100字が限界じゃ」「なんだ、じゃあエピソードタイトルにいる時間は長くないんだな」「そうじゃ、『エピソードタイトル』だけで

9文字もあるから、すぐ次へ行けるぞ」


「ん? なんて言っている間に、急に開けたな」


「おお、やっと本文が始まったようじゃ」


 女神は背中に畳んでいた羽を大きく伸ばした。


「あんた女だったのかよ。てっきり爺さんかと」


「失敬な奴じゃの。どこからどう見ても女神じゃろ」


「いや言葉が爺さんっぽかったし」


「のじゃロリじゃ!」


 120cmほどの愛らしい女神が、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら抗議する。


「あんたそんな小さかったのかよ! イメージがどんどん更新されていくんだけど!?」


「当然じゃろう、本文なんじゃから。タイトルやあらすじだけで、すべてがわかるとでも思っているのか? 最近はそういうやつが多いんじゃ、『あらすじみたいなタイトルwww』と言って馬鹿にするだけで一切中身を見ず、果てはあらすじすら読まないようなやつらが多くてわれらは心底困っておるんじゃがみがみがみがみがみ」


「わかったわかった、あんた一体なんの神なんだ」


「本の神じゃ」


「本の……。意外と高尚な神じゃん」


「そうじゃろう、そうじゃろう。最近生まれたばかりなんじゃぞ!」


「最近? あー、神の世界で数千年は最近か」


「その通りじゃ。……ところで、お前、われが本の神と聞いて、なにか思いつかないのかの?」


「へ? 何を?」


「さっき、できれば生き返りたいと言っておったじゃろう」


「できるのか!?」


「それは無理じゃ」


「なんだよ」


「じゃが、現実世界へ還ることは可能じゃ」


「え、ど、どうやるんだ!?」


「書籍化じゃ!!」


「しょ、書籍化……?」


「このお話が書籍化されれば、お前の絵が描かれた本が出版される。運が良ければコミカライズ、さらにはアニメ化して声が付く! こうすれば、お前は本の形で現実世界に還ることができるのじゃ! 親御さんも喜ぶじゃろう」


「書籍化、書籍化かぁ……」


「……」


「……なぁあんた、この話、書籍化すると思うか?」


「無理じゃろうな」


「だろうな!! こんな意味不明な話、どこの誰が書籍化するんだよ!?!?」


「じゃがここは何が起こるかわからんカクヨムの世界。この話が何かのきっかけでブレイクして、誰かが同人誌でも作ってくれるかもしれんぞ?」


「もういいよ……俺は今後ずっと、この狭い本文の中で生きていくんだ……」


「われも一緒だから元気を出すんじゃ。そうじゃの、まずはこのお話に★が付くことを祈るんじゃ。ほれ、一緒に祈るぞ」


「あんたも祈るんかい」


 彼は女神とともに両手を合わせ、“上”を見た。なんとなく、そこに読者がいるような気がして。


「ああ、頼む! こんな話をこんなところまで読む殊勝な人がいたら、どうか、どうか星をつけてくれ! そして俺を、現実世界へ還してくれ!!」

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「お前はカクヨムへ転生することになったのじゃ」「急展開だな。つかどこなんだここ、随分狭いな」「タイトルじゃ」「はぁ!? なんでだよ、せめて本文に転生させてくれよ!」「わがままじゃのう。ほれ」 黄黒真直 @kiguro

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