最終話  かくて、リーリアの運命は...?

 えっとぉ…偶然?成り行き?いいえ、きっとロイルの神様のいたずらよね。

 だって、伝説の剣よ。あたしは騎士でも戦士でもないわ。

 その剣にあたしが選ばれるなんて、あってはならないこと。ほら、ガイザード王子様があたしを見て睨んでるし、


 たーいへん!!若長がまた、倒れてる!!

 エリサが若長に近づくのと同時くらいに、空間がかすかに揺れて、二人の大人がやってきた。


 一人は、エリサとよく似た面立ちをしており、すぐにエリサの父親、レフ様だとわかった。もう一人知らない人だったけど…

 レフ様は昔、ロイルの姓を貰った一流の魔法使い、今は、騎士隊長だけど…

 淡い金髪の人もアフレオスに縁のある人だったのかしら…?


「派手にやってくれたね。」


 淡い金髪の人が、若長を抱き上げながら、あたしに言った。


「だって…」


 としか言えない、あたし。

 レフ様が近づいてきてあたしから、剣を取り上げ、持って来た鞘に納めると再びあたしに渡してきた。

 レフ様は何も言わない。もともと、寡黙な人だけど、こういう時は一言くらい話かけて欲しいよ大丈夫かって?くらい…

 うちの父さんと友人でしょう?


 金髪の人が話す。

「ガイ王子、ティランを銀の森から、連れ出した罪は重いですよ?」

「わかっている。覚悟の上だ。それより、聞きたいことがある。」

「何ですか?」

「ジェド…お前は知っていたのか?こうなることを。」


 あたしには意味が分からなかったけど、ジェドってロイルで一番の予見者の名前!! 


「言ってあったでしょう。僕にも分からないことはあるんだと。それより、自分の都合のいい占いを信じたのは王子です。」

「マリリルが間違うなんて…」

「アフレオスは、神代から、伝わる魔剣ですよ。剣自体が魔力の塊みたいなもの。僕の水晶に全てが映ったのは、アフレオスが。正式に主を決めてからです。」


「そなた、知ってたのか?」


 今度は、レフ様がエリサに話す。


「知ってたら、知ってたで騒ぐでしょう?」


 なんか、エリサは何か知ってたぽい言い方するのね。


「アフレオスと共鳴してるなとは、思ってたわ。北の丘からよく、剣が光ってるよって、言ってたから。」


 あたしは横から口を出す。


「エリサにだって、見えてたわよね?あの光!!」

「あなたと一緒の時だけね。」


 その時、ジェド様があたしたち全員に銀の森まで招集命令が出ていることを告げる。


 なんで、私まで?と言ったエリサまで連行された。


 初めて来た銀の森は、まるで別世界。さすがは、ロイルの神の降臨した地でもあるわ。

 森中が銀色に輝いて、聖なる光って感じね。


 少し小ぶりな神殿、ここが、イリアス・ロイルの総本山。別名光の神殿。

 ここには、一番偉い大神官の三賢人がいる。この中の一人がデュール谷の谷長、アレクサス様で、エリサのおじい様。


 あたしたちは、銀の森に着くと、バラバラにされて、あたしは神殿に残されて三人の神官の前にいた。勿論身体は、ガチガチである。アフレオスは、ジェド様が持って行こうとしたが、いつの間にかあたしの腕に戻ってくる。何度やっても同じことが起きるので、神官たちも認めざるを得なかったみたい。

 本人が一番、認めたくないですけど。


「デュール谷のリーリア・フレイドルよ、これからはアフレオスの主として、ふさわしい振る舞いをし、ふさわしい者になるのだ。そして、神殿のために働け。それが、アフレオスに選ばれしそなたの使命じゃ。」


 アレクサス様が言った。むつかしい顔をしている。あたしこの谷長苦手なのよ。

 エリサには、大甘なのに…


「具体的には何をするんですか?」

「おいおい、理解出来るじゃろうて。」


 答えになってない!!



 今夜から、あたしは神殿での寝起きを命じられた。

 この神殿にいるのは、わりと位の高い巫女ばかり。みんな興味津々とあたしを見物しつつ、噂してるのが耳に入ってくる。

‘’あの子が例の剣の主ですって?‘’

‘’普通の子ね‘’

‘’ド田舎の出身らしいわ‘’

 聞こえてますよ~ってか、聞こえるように言ってるのね。あたしはだんだん腹が立ってきた。

 こんなのとなら、谷のミジア様のもとでリーア修行嫌がらず、真剣にやっておけばよかった。

 あたしは大きなため息をつく。

 そうして、案内されたのは神殿の最奥にある貴人のための部屋だった。

 なに?この調度品!!谷では見たことのない物ばかり!!部屋自体はそんなに広いとは思わなかったけど、ベッドが天蓋付きで、絨毯はフカフカ。窓には、厚そうなカーテンで日を遮るようになっている。ベッドの横のサイドテーブルなんてどこから持って来たのよ。


「こちらでお過ごしください、とのことです。」


 案内の巫女がそれだけ告げて、帰ってしまった。一人取り残されるあたし...

 どうしたもんかと自答していると、さっきの巫女が戻ってきて、湯あみの用意が出来たことを知らせてきた。??はっと気が付く自分の姿!!!!

 魔竜の息吹の風に飛ばされて土まみれ!!でも、気が付かなったのよ!気が動転しすぎていて!!


 湯あみの場に行く時も、アフレオスはついて来ようとするので、言ってやった。


「ついてくるな!!このスケベ剣!!」


 そしたら、あら、不思議。アフレオスは大人しくベッドのサイドテーブルの上に自分から移動していった。

 ひょっとして、アフレオスって男なのかしら?


 湯あみが終わって、寝室に戻ってもあたしは、眠れなかった。

 こんな豪奢な寝間着も初めて、

 ベッドはいつもの3倍はフカフカ。


 これからどうなるんだろう…?あたし…

 こんなこと考えてたら、ますます眠れなくなってしまった。

 あたしはベッドから起きだすと、椅子に掛けてあったショールを肩に巻いて部屋に外に出ようとした。

 ドアを開けたところに神官がいて、


「何かありましたか?」

「じゃなくて眠れないから、散歩でもって思ったのだけど…」

「リーリア様に置かれましては、無断で外出などされぬようにと命令が出ています。」


 え…?もしかして、あたし監視されてるの?てか、この部屋で幽閉生活??

 あたしは、この見張りらしい神官の人に部屋に押し戻されてしまった。あたしはベッドまで戻ると考え込んでしまった。

 アフレオスの主だから?幽閉されるの?死ぬまで…?

 嫌よ!!冗談じゃないわ!!あたしの夢はどうなるのよ!!第一あたしはまだ、15歳よ!!


 あたしは、脱走の計画を練った。


 どうすればいいんだ…?アフレオスは、さっきあたしが怒鳴って以来、ずっと同じところから動かない。

 あたしは閃いた。

 そうだ!!アフレオス持ってればどうなるかなあ…?

 あたしはアフレオスを手に取って、再び部屋のドアを開けた。あらら…さっきの見張りさん寝てますよ。


 あたしは、アフレオスに念じた。デュール谷に帰るのよって。

 アフレオス持ってれば、何でも出来ると思ったし、勇気も出てきた。寝間着のままだったけど構うものか!!すぐに帰るんだもん!!

 部屋を出て、神殿から外に出るまで数人の人とすれ違ったが、咎められなかった。

 みんなあたしが見えてないようだ。

 そうしてあたしは、神殿の外の出ることに成功!!

 あとは、船着き場を探して谷へ帰るだけ。イムル川は、銀の森からデュール谷を通って、北の海まで繫がっているという。

 よし!!アフレオス持ってたら、タダで船にも乗れるだろう…と、ちょっぴり不謹慎なことを考えたりして…ん!!少し、余裕が出てきたわ!


 あたしが、船着き場を探してウロウロしてると、神殿とは逆の方向から、馬が走ってきた。真夜中よ、こんな時間に馬を走らせるなんて、どこの馬鹿よ?


 あれれれれ~?よく見れば、馬上に人がいる?

 暗くて、よくわからないけど白い馬?

 白い馬と言えば…

 天馬の子孫だというハルクス?

 の持ち主は…とあたしが連想してたら、体がフワッと持ち上がった。そして、強制的に馬上に座らされていた。


「ガ、ガイザード王子…なんで!?」


 王子は無言である。


「あ、あのね、あたしは谷に帰りたいの。」


 王子は、ハルクスを全力で走らせているようだ。物凄く速い!!


 森を抜けて、やっと王子は馬をとめた。

 そこで、王子は、あたしが、寝間着なことを知って、自分の外套をあたしに羽織らせてくれた。はっと気が付く、あたし。そもそもなんで、王子にはあたしが見えてるの?


「リーリア、お前に頼みがある。」


 王子が急にあたしに目を合わせるために、かがんでくる。

 なんだろ!?なんか嫌な予感しかしないけど…


「私は英雄になりたい。アフレオスのリーリア、力を貸してくれ!!」

「銀の森の神官さんたちは何て言ってるんですか」


 話が嚙み合っていないことにも気が付かない 。


「銀の森は永久に出禁だ。ティランに会うことも、もうないだろう。父王もほとぼりが冷めるまで、旅でもしてろと言った。」


 ガイザード王子様の処分は、思いに他重かったようで。


「あたしは谷に帰るんです。王子様。」


 きっぱりとあたしは言った。つもりだったのだけれど、王子には鼻で笑われた。


「一生、隠れて、か?」

「そんなつもりはないけど...」

「エリサだったかな?あいつが言っていたが、おまえは、エリサの従兄と結婚して家庭を作るのが夢だとか?何処までも、平平凡々なやつだな。」

「悪かったわね!!早くに母さん亡くしてるから、誰かと早く結婚したいのよ。」


 あたしは、拗ねて横を見た。そんなあたしの顔を王子は、自分の方に向き直し、


「そんな暮らしは出来ないぞ。アフレオスがお前を主と認める間はな。光の神殿の爺様たちも頭を抱えてる。しかも脱走してくるとはなあ。」


 あたし、みるみる真っ赤かなのか、真っ青なのかわからない。


「こまま、尋ね人か?わたしと旅をしないか?わたしとて、まだアフレオスを諦めたわけではない。」


 そんなこと言われても...ねえ...

 あたしが考え込んでいると、王子は再び、あたしをハルクスの上に乗せた。


「まあ、深く考えるな!!黙ってわたしについてこい!!」


 その言葉はあなたから聞きたかったわけじゃないわ!!それに意味がちが~う!!

 と、いうわけであたしとガイザード王子の旅は始まった。




(完)


 お読みくださって有難うございます。

 作者の処女作です。

 リーリアの話は天翔る馬に乗って乙女は旅をしたに続きます。

 こちらは、リーリアとガイザード王子とハルクスとアフレオスの2人と一匹、1魔剣の冒険物となっています。

 よろしかったら、覗いてみてください。



 葛城実桜

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☆処女作☆アフレオス物語  月杜円香 @erisax

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