第7話 アフレオスの選んだ使い手は...?
「おい!!大変だぞ」
銀色の若長の後ろからミシャールさんが叫んでる。
「どうしたの?ミシャール。」
「リックの奴が黙ってられないと、ディムデルムの大人たちに知らせに行ったぞ。」
「何?」
あたしたちは、顔を見合わせた。
熱が下がったといっても若長の顔色はまだ真っ青である。フラフラしてるし…
エリサが言った。
「アフレオスにどうしても、挑みたいのなら今すぐに出発することね。」
「ティランはどうするんだ?残しては行けない。」
「優しいのね、王子様。でも若長は足手まといよ。ここで保護してるわ。
あとは時間の問題よ?大人たちが帰ってくれば、銀の森にもすぐに連絡は行くし、若長を銀の森から連れ出したこと、すっごい問題にされるから、首を洗って行ってらっしゃい。」
エリサは、何気に怖いことを言うと、あたしの方を見て
「リーリアを連れて行きなさい。断言できないけどリーリアは、アフレオスと共鳴する力があるみたいだから。」
何?それ?初耳!!
あたしが反論する前にミシャールさんが、ハルクスっていう白い馬を連れてきてくれた。それに、軽々跨るガイザード王子。
王子は、馬上から若長を見下ろして言った。
「悪いなティラン。どうしても、試してみたい。」
「それは良いですが、大丈夫ですか?火の使い手もいないのに?」
まるで若長なら大丈夫って口ぶりね。
「時間がないって言ってるのよ。今回は、魔法使いは抜きで頑張りなさい。」
エリサが冷たく言い放つ。
「魔竜の息吹に対抗するなら、炎の魔法使いは必須かもだけど。そんな人はいないしね。」
「やってみなければわかりません。やっぱり、僕も行きます。」
いきなり、言い出す若長。なんか、元気になったわねっていうより、今まで大人しかった若長がエリサに言い返してる。
あとあと聞くと、若長は調子の悪い時の方が多くて、それなりに休めば動けるんですって。
「あ~!!もう勝手にすれば!?」
エリサ、完全に投げたわね。
「エリサ…」
あたしはおずおずと言う。
完全に怒りに燃えてるエリサにこんな事言えばさらに怒るとわかってたけど、言わずにいられなかった。
「お願い!!ついてきて!!」
だって~~、怖いんだもん!!魔竜谷なんて、谷の住人でも行く人はいないところよ!!
そうしたら、一番早く食いついてきたのが若長だった。
「それは良いですね。精霊と話が出来るのでしょう?魔竜の気をそらしてくれれば嬉しいです。」
ニッコリ笑うとどこから見てもチョー美少女。
エリサは黙ってうつむいていた。体も微かに震えてたから、エリサに限って言えば怖いってことじゃないと思う。怒りがマックスになっちゃってたのね。
♦
それから、あたしたちは4人で魔竜谷に向かった。
谷で一番足の速い馬を借りて
それでも、ガイザード王子の馬には勝てなかった。
「あの馬は特別よ。」
馬の大きさの都合により、ハルクスという王子の馬には、ガイザード王子とティラン若長が、
村の馬には、あたしとエリサが乗っていた。
「古の天馬の血を引いた馬。」
ガイザード王子が突然後ろを振り向いて言った。
「道はあってるのか?」
「馬で行けるところまでは、道なりに北上よ」
「馬で行けるって…?」
「魔竜谷はもっと強い結界で守られていてるわ。」
それじゃあ、あたしと王子だけで来ても魔竜谷にすら行けないってことじゃ…?
エリサの馬鹿!!
やがて、目に見えないけどこれ以上進めないっていう所まで来た。
若長がすぐに分かったみたいで、馬から降りて色々ブツブツ言い始めていた。そして、あたしたちに振り返ると、
「この結界は誰も手によるものですか?」
あたしは思いっきり振りかぶる。そんなことは、誰も知らないはず、だって伝わってないんだもの。
「一通りの開封の呪文は試しました。無駄でしたよ。」
「魔法鍛冶師をご存じで?」
「レフの剣の?」
あれ?エリサは、知ってるのかなあ。レフってエリサの…
「この結界は魔法鍛冶の手によるものよ。ちなみに若長の風の奥方の力でも無理よ。ここは、火の領域。」
若長の顔が歪む。
「じゃあ。谷に入れなかったのは?」
「大地の力に特化した人たちが複数人で、かけたものよ。あなたは、風の力に長けているようだけど、大地の力はないわね!?」
「あなたは、そういうことが分かるってわけですね。」
若長の言葉を言葉を無視してエリサは前に出た。
「ここの結界に呪文なんて無いわ。無の心で通ればいいの。そして、無の心の呪文ほど強いものはないってこと。呪文に頼りがちな魔法使いの落とし穴よ。」
若長が納得いかない様子で言った。
「なぜ、あなたは知っているんですか?」
「4歳までここの結界の中で育ったわ。」
あら、そうだったの…
一番初めにエリサが通り抜けた。次に若長、少し遅れて、ガイザード王子が。
あたしは、3人より大分遅れて合流した。怖いんだもん、無心になんてなかなか、なれなかった。
そうしたらもう、ガイザード王子の挑戦が始まっていた。
若長とエリサが上手にまわって、魔竜の気を引いている間に王子は、アフレオスに近づいていた。あたしは、取り敢えず王子に近づいて行った。
王子がアフレオスを乾いた大地から、引き抜こうとしたが、結果は彼の望むものではなかった。それでも、挑み続ける王子様。
「そろそろ、限界よ!!王子!!」
と、エリサ。
諦めきれない王子は、アフレオスから離れようとしない。
…とその時、魔竜がこちらに気が付いて火を吹いてきた。火もすごいが風もすごい!!
ガイザード王子のような大きな体格の者でも吹き飛ばされていた。
わ~~ン!!!熱いよぉ~~!!魔竜の息吹の風は、熱くて、突風なんて知らなかったよ。
あたしはコロコロとなんでか、魔竜の方向に飛ばされていく
「リーリア!!」
遠くでエリサに声が聞こえる。
こんなことなら、ダールに告白しとけばよかったなあ…ロイルの神様、もう少し生きたかったです…
あたしが辿り着いた先は、なんとアフレオスの真ん前。
あれ?地面がひび割れてる?ガイザード王子様良い線いってたんじゃあ?
なんてことを考えてたら、アフレオスが突然光り出した。
規則正しい光で、でもあたしには、眩しくはない。
そして、どこからか、頭の中に声が聞こえてきた。
『剣を抜け』
?????
あたりを見渡しても、みんな自分のことで精一杯のようだった。
そして、再びあの声が・・・
『剣の力で魔竜を抑えることができる。』
なんか、わからないけど魔竜を大人しく出来るならと、声の主の言うことを聞いてみた。
アフレオスに手をかけ、恐る恐る地面から抜き取ってみた。
動く・・・?完全にアフレオスを大地から、引き抜くと途端に剣は、閃光をを放ち
魔竜は、目をやられたらしく巣に籠ってしまった。
後に残ったのは、唖然とする3人。信じられないものを見たというような顔してあたしを見てる。
ねえ、何が起こったの?
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