第6話  若長の真意

 あたしとガイザード王子が神殿のある谷長の館に帰ったら、お昼近くになっていた。

 またしてもエリサが怒りながら、待っていた。

 あの後、ガイザード王子は、色々なことをあたしに話してくれた。

 長の病がはやり病で、若長は、長の最期のお別れさえ出来なかったこと、

 亡骸が高位の神官たちによって、素早く火葬にされたこと。

 神官さんたちの判断は正しい思う。流行り病をどこの国からも人の訪れる銀の森へは持ち込めないわ…


 で、あの銀の若長は考えたそうよ。父長の一番望むところに眠らせてあげようって。

 それで、亡骸がお骨になるのを待って妹姫としめし合わせて、逃亡したってわけ。

 長のお骨は、妹姫が持って行って長の本当に愛した人の隣りに埋めてあげたいんだって。

 ガイザード王子は、ビルラードの城で大人の騎士たちを相手に大太刀回りをしてたらしく、手を焼いた父王とロイルの長の命令で、病弱な若長の話し相手として銀の森にいたとか。大人げないことをしたと言ってたけど王子は、まだ18歳なのですって。

 アフレオスは、そのついでのことだったらしい。


「目が覚めないんですけど!!」

「誰の?」

「ティラン若長に決まってるでしょ!!」


 わ…エリサ、機嫌が悪い。本当に喜怒哀楽のハッキリしてる子だ。


「熱は下がったわ。気管支にも持病があるみたいだから、それも処置した。

 もう、目を覚ましても良いころなのだけど、一向に目覚めないわ。」

「疲れてるんじゃないの?」

「ルーア草を処方済みよ。ミシャールには限界まで頑張ってもらった。これ以上のことは今は出来ないわ」

 エリサは大きくため息をつくと、言った。


「保護できるのは、夕方までよ。若長を診たけど、彼は対して力を使ってなかったわ。なのにあなたたちは、結界をスルリとぬけてやって来た。

 いろいろ考えたけど、あの馬のせいね。あの馬、ただの馬じゃないでしょう?」

「ハルクスのことか?」


 ガイザード王子は、いかにも自慢げに言う

 彼が言うには、ティラン若長の友人になるならという条件で、長が用意した駿馬だそうだ。それに対してエリサが、


「古の天馬の血を引いてるわ。だから、結界なんて関係なかったのよ。おそらく、それに気が付くのに時間がかかったのね。」

「よく、見ていたみたいに言えるな。」

「だって、風の精霊に見られてるじゃない。」

「なんだと?」

「それより何がしたいの?本当にアフレオス取りに来たの?」


 この答えにはあたしが答えた。


「お城の魔法使いにアフレオスの主になるって言われたそうよ。」

「魔法使い?誰?」


 ガイザード王子は、胸張って答える。


「マリリル・ロイルだ。水占なら、右に出る者はいない。」

「馬鹿ね。占いなんて、当代一の水晶占いのジェド・ロイルでさえ若いころは失敗だらけだったのよ。あてにならないわ。」

「マリリルは、もうベテランだ!!それに我が国はマリリルの助言の元、発展している。」

「あらら…魔法使いは、国の政治には不介入のはずよ。」


 そうよね。力のある魔法使いは、みんな神殿に管理されている。フリーの魔法使いが一国を任されてるのもおかしな話である。


「ビルラード王国はいろいろあったと聞くけど、今の王様の統治が良いのね。」


 エリサが、笑って言うと王子もつられて笑った。


「あの…ここはどこですか?」


 ん!?誰だ、この割と高い男の子の声。


 振り返ると、長い銀色の髪をなびかせた少年が立っていた。

 あら、瞳まで銀色だったのね。









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