第5話  アフレオスの見える丘

 神代から伝わる魔法の剣、アフレオス。

 数々の英雄の友として共に戦い、共に生きた。

 その伝説の剣が、どういうことかこのデュール谷にある。

 あたしたちにの住む別名谷村から、北に馬で2刻あまり。

 火を噴く魔竜が棲みついて、人間は誰も近づかない。

 その魔竜の巣の傍らにアフレオスは、抜き身で地面に突き刺さっていた。


 客人に朝ご飯を出すと、エリサはみんなにかん口令を出した。

 少なくとも、若長の熱が下がって二人が村を出て行ってくれるまで。

 一番反対したのは、エリサと同じ谷長の血を引くリックで、すぐにでも大人たちに知らせようと言い張った。

 しかし、エリサにぴしりと言われ


「そうして、結界を張ってった大人たちを貶めるの?」


 これで黙ってしまった。


 御飯が終わると、エリサとミシャールさんはまだ熱の下がらない若長を診に奥へと行き、ビルラードの第二王子様は手持ち無沙汰みたいだった。


 エリサに


「あんたは、絶対近づくな!」


 と、言われてるもんね。

 あっ!!目が合っちゃった。


「おい。娘。」

「あたしは、そんな名前じゃないです、王子様」

「そんなことはどうでもいい。なんで、あの女はあんなに偉そうなんだ?」

「エリサのこと?彼女が今、村の責任者だからよ」

「お前より年下だろう」

「同じ年だけど…」

「はあ?」


 あたしは、少し笑った。確かにエリサとあたしは同じ年には見えないし、能力も全然違う。(エリサの見かけは12~13歳)15歳のあたしとは明らかに違う。


「彼女は、先祖返り…っていうんだっけ?、精霊使いなだけよ。」

「ふーん」


 さすが、ロイルの若長とお友達だけあって、ロイルの一族と呼ばれるあたしたちのことは、多少の知識があるみたいだ。


「娘、ここからアフレオスは、遠いのか?」


 あたしが考え込んでると王子は再び話しかけてきた。


「おい!!答えぬか!!」

「だ、か、ら、あたしはリーリアです!!ビルラードの第二王子様」


 ムカッとしたから、睨んでやったもんね。

 大体自分も名乗ってないじゃないの。

 王子様は、きっとあたしを睨み返してきたが、すぐに少し顔を緩まして


「すまぬ。ここのところずっと、気の張り通しで休まることがなかった。気が立っていたのかもしれぬ。

 ああ…すまないリーリアだったか?わたしは、ビルラードのガイザードだ。ガイと呼んでもよいぞ。」


 笑うと、とっても子供みたいな顔になるのね。

 その笑顔に免じて、あたしは王子様の質問に答えてあげた。

 あたしは北の山脈を指して、


「あの山のふもとよ。この谷からなら、馬で飛ばせば、2刻もあれば着けるわよ。」

「ほう…」

「但し、アフレオスは、魔竜の巣にあるのよ。」


 そして、あたしは続ける。


「今までも、腕自慢の騎士たちが何人も挑戦しに来たわ。我こそがアフレオスの主にってね。でも、成功したは1人もいないわ。半分は魔竜の餌食になってる。

 王子様達もその口?」

「わたしは、魔竜の餌になる気はないさ。城の魔法使いに言われたのさ。わたしこそが、アフレオスに選ばれし者だとな。」


 ガイザード王子様は堂々と言う。


「その魔法使いって、当代一の占い師のジェド様?」

「アホか!!あんな有名な奴、いくら金がかかると思ってる?城で雇ってる魔法使いだ。ビルラードは、ロイル家の繋がりも深いから、腕の良い奴を寄越してくれるんだ。まっ、今の魔法使いは、父王の学友だが。水占に長けた者だ」


 ガイザード王子は自信たっぷりだ。水占ねえ…一番不確かじゃないの。読み方間違えると厄介なことにるのよね。でも、王子様はもうその気満々じゃないの。


「まだ、出発は出来ないけど、アフレオスものある場所を教えてあげられるわ。」

「?」

「ついてきて 」


 あたしは、王子様を誘い歩き始めた。



 神殿からさらに、北の坂を上がっていくと、小高い丘に出る。

 ここからは、北の国境である大山脈が一望できる。

 そして、あたしは、谷の説明。


「あれが枯れ谷、そっちが、はぐれ谷。向こうが隠れ谷」

 あ…なんか王子様が焦れてる。そしてあたしは、谷の一番東側を指して、


「あれが、魔竜谷。」

「あそこか?」

「ええ…見てて。時々光って、ここに人がいるのわかるみたいなの。」


 その時魔竜谷のほうから、微かな光が届いてあたしは嬉しくなった。


「今のが、アフレオスか?」

「そうよ。」


 この光を見ると、なぜか嬉しなってくるの、あたし。 











      

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