「放課後☆告白☆ⅮEATH UNDER COVER」

低迷アクション

第1話


20ⅩⅩ年、止まらぬ環境破壊、終わらない地域紛争、テロに殺戮、疫病、虐殺に対し「世界救済少女」と名乗る少女達が現れ、それに所属する“魔法少女、変身ヒロイン等”のあらゆる事変、事象への介入が始まった。彼女達の活躍は一国家の存在さえ脅かすモノとなり、これに抗う国家は抵抗したが、通常兵器は、全く歯が立たず、実質彼女達の監視下の元、世界は平定されていく。


その半年後、軍事、人外の異能者、犯罪者等が結集した武装集団

“アンチ・オータ”が彼女達に対し、宣戦布告と反撃を開始した…



 「ちょっと、クマッち!今日の5限寝てたっしょ!しっかりじゃなきゃ、僕困るよ!」


短く切った髪&八重歯“あっ、これは元気ハツラツ系、オマケにボクッ子、ボーイッシュな子っすね!”的特徴を醸し出す“最上 八重羽(もがみ やえば)”が


後ろで寝むそうに欠伸をする天然娘風な“熊上 香子(くまがみ きょうこ)”に、

全然困ってない感じの台詞を投げかける。


「だってぇっ、モガちゃんがぁっ、眠らせてくれないからぁっ、昨日…」


「おっ、おっおーいっ!?昨日って…そーゆう話じゃないでしょ?変な感じで

言わないでよ!大体…昨日のは、それは違うでしょ…」


周り(特に自身の方向)をチラチラ見ながら、喋る最上、大丈夫!今は授業&帰りの

ホームルームが終わって、放課後へと移行する微妙な時間帯…全員、テメーの事で

手一杯、誰も聞いてませんよ。最上の杞憂を知ってか、知らず、いや、知ってても

この子はそれを楽しむタイプだな…


の熊上が拗ねたように声を上げる。


「ええーっ、似たようなモノでしょ~?激しく動いて、色々発散、そして解決…」


「クマッ!その辺だよ」


黒髪を後ろに束ねた、まつ毛キリリの、まとめ役&まじめ女子“伊務 矢剣(いむ やつるぎ)”正直、名前つけた親は凄いと思う…が、腰に両手を当て“生真面目”を体現した感じで、会話に割って入ると同時に、こちらに申し訳なさそうな視線を向けた。


「ごめん、さなっち、ほら、前に言ってたバイトが忙しくてさ」


「ああっ、そうでしたかぁ~っ、イムさん。全くクマちゃんは大袈裟っすね!

“えっ、ちょい私等?まだ学生やん“なんて余計な勘ぐりいれちゃいましたよ~」


「ハハ、全くもう、さなっちはぁっ~、時々、言葉がオッサンみたい、可笑しいね」


ニコニコとても良い声で笑う伊務は、今日、自分達がバイト休みと言う事を伝え、帰りにゲームセンターに行く事を提案する。勿論、こちらに断るつもりはない。


頬を伝う汗をそっと拭い、制服姿の少女達に(いや、こちらもか)に続く。自分は全てを知っている。昨日、東南アジアで起きた海賊による船舶襲撃未遂事件…未遂と言うのは、先読みの能力を持つ世界救済少女のメンバーが攻撃を予測し、実行部隊に指示を出したからだ。


そして解決したのは、戦艦に積むような火砲や重機関銃を軽々と装備し、水上を飛ぶように駆け、魚雷艇に乗った海賊達を圧倒的火力で殲滅した同組織の、3人の少女達…


ここまで言えば語るに以下略だが、あえて言おう。伊務に熊上、最上は異能の力を持つ武装娘系統の変身ヒロインであり、世界救済少女に属している。加えて(というより、主題)彼女達の級友である(先程から自身人称でたびたび登場“さなっち”事

“佐那 日向(さな ひゅうが)←偽名”である自分は、伊務達の敵対組織である

“アンチ・オータ”のスパイであり、目下潜入中なのであったー

(“”の大変多い冒頭で失礼)…



 「で、首尾は…?」


着古した迷彩服と目元に走った2本の切り傷は前対戦の勲章…アンチ・オータ極東支部の兵士“軍曹”は三白眼の眼光を日向にガンガンぶつけてくる。


「あー、今日はですね~、ゲーセンで何かリズムゲームやって、その後ボーリングやって、喫茶店でお茶して、結構楽しかったっすね!ハイッ、お土産のベーグルぅっ!って、あいたぁっ!」


笑顔で渡すベーグルが、そのまま頭にめり込み、悲鳴を上げる日向に軍曹のドラ声が重なる。


「なーにがっ“ハイッ、お土産のベーグルぅっ!”だ。この馬鹿野郎っ!

(と言った後で、おもむろに日向の頭からベーグルを取り、咀嚼する)うっ、美味い!」


「(その顔面を張り飛ばしながら)キモイわっ!何、女学生の香りふんだんのベーグル食ってんすか!軍曹!真面目にやって下さいよっ!」


「お、落ち着けぇっ!馬鹿野郎!お前がしっかり女学生型潜入スパイとしての特性を

しっかり維持できているかを試しだけだ!勘違いしてんじゃねぇっ、大体、お前に

いくらかかってると思うんだ?」


「そりゃ、戦場で死にかけてた体とその辺のパーツを世界の連中から得た技術で繋げて、フランケンガール的な感じで作ってくれたのは感謝っすよ?だけど、だけどさ、女の子はないっしょ?無理だって、若い子達の会話についてくだけで精一杯!」


「バッカ野郎!凄いぞ、その肌に艶、身体、顔のデザインから全て一から作り上げた!んだからなぁっ!!素材集めだって、大変だった。細切れに散らばってた兵士の頭とか、その辺に転がってた足とか胴体全部集めて、それらを磨り潰して、作ったんだからね!


人格だって、あれだよ!いろんな頭切り取って中のみそ複数合わせて、ここまでのトーク力とツッコミを得た存在を作った、いわば俺達は神に近い行為をしたわけ、人間を作った訳だよっ!すごくねっ?」


「ヤバくねっ?えぇっ、って事は何っ?私の人格はアレ?なんなん?てっきり、伝説の傭兵とか歴戦の歩兵が女の子にぃっ?的なモンだと思ってたんすけどっ!」


「いや、悪いけど違うね。偶然と奇跡の曖昧模糊の中で生まれた、あいまいマインドだよ」


そこだけ、すごく劇画調の真剣さで語る軍曹に、日向は自己の存在理由の惑いに頭を抱える。しかし、蹲る少女に粋な言葉をかける術を知らない軍曹は関係なしで言葉を繋ぐ。


「そんな事より、仕事だ。日向…まぁっ、お前の潜入のおかげで敵の動向は逐一把握できてる。あの子達のバイトがある時は、我々の活動が被害被る訳だからな。損害を

最小限に抑える事は出来る」


「でも、海賊さん達は壊滅っしょ?あの子達、人はあんまり殺さないけど、全員、政府軍に拘束されたって聞きましたよ」


「構わねぇっ、連中は“ボゴ・タルタ”大戦前から外道で有名な国際テロ組織…理念、目的全てが異なっている。やってくれた連中には感謝したいくらいだ」


軍曹の指摘は的を得ている。世界救済少女が活動を始めてから、半年…確かに世界は平和になった。ちょっとでも悪い事をするか、災厄を招く企てがあれば、


今や100人規模に増えた「世界救済少女」の1人、もしくは複数が駆け付け、

解決…敵の所在地や兵器に武器を無用の鉄くずに変える。


だが、彼女達は“徹底”しすぎている。“悪い事”は確かに良くない。

しかし、その背景や“その後”を考えなければならない。


例えば、麻薬カルテルが運営する、広大なコカ畑を焼き払うとする。

これによって多くの人を殺める可能性のあるであろう原因を除く事は出来た。


だが、そこで暮らし、もしくは生計を立てていた罪なき人々“止む負えずの民”の生活はどうなる?この事が原因で、新たな貧困と争いを増やすだけではないのか?


それに対する配慮、とるべき行動を“世界救済の娘っ子”は考えない。

ただ、純粋に悪を討つ。単純かつ早急な解決を行使する力を持つ無垢な少女達…


“ガキが刃物を持ったら?”と同じだ。どういう世の中になるかは明白だ。

だから、日向達のような“調整役”の出番となる。


彼等は組織内でも穏健派の部類に属しており、少女達の動きを妨害し、制限する事によって、上手な世界平和の道を探っていた。そのために、向こうの動きを逐一察知し、攻撃先の選定と被害の適切さを実施している。


「最初、あいつ等が出てきた時は、世界の誰もが、日本でやってる日曜朝8時の子供向けアニメや、アキバ系、フィギュア、ゲームの世界そのものの現実化を体験した。


だから、あれはオタク共の願望と妄想の塊、奴等が諸悪の根源じゃね?と、

皆が口を揃えて思った。そこからの我が連合の発足、戦いの半年間…全く、

慌ただしいなぁっ我々はぁっ!」


「いや、ここにきて、長ったらしい解説はいいから、仕事は?」


そもそも、アンチ・オータって名前がヤバくね?と思うだろう(絶対)

読んでいる人への説明(懸命&必死)の語りを遮る日向に、軍曹はニヤリと笑う。


「お前の成果が試される時だぞ」…



 「ねぇっ、イムやん、こないだのあれ、やっぱり可笑しくない?」


お昼休みの食事終わり、机につっぷして眠る熊上の額と机の間にタオルを差し込みながら、喋る最上に伊務も静かに頷く。


彼女達の所属する世界救済少女が迅速かつ的確に悪の芽を摘み取る事が出来るのは、組織の中に未来予知が出来る者達がいるからである。この少女達が交代で世界を見張り、実行部隊である伊務達が役目を果たす。そのスタイルでこの半年間戦ってきた。しかし…


「うん、最上の言う通り、確かに変だった」


彼女達の予知で、深海から現れた未知の巨大生物が商船を襲うと言う情報が知らされた。海の担当は伊務達の役割であるが、巨大生物となると、同じくらいの質量を持つ存在が相応となる。組織は、まだ世界に対し、非公開である巨大人型兵器の投入を決定し、伊務達は後方支援を担う事になった。


作戦は問題なく終了し、巨大生物は頭に大型トラック3台分くらいのたん瘤を作って、海に消える。問題はこの後だ。さほど大きな事ではないが、伊務達に対し、反抗している組織の密輸船が日本へ上陸したとの情報が入る。彼女達が駆け付けたが、船は何処にもなく…


何が持ち込まれたかも、わからない状態となっていた。


「正直、あの人達が何持ったって、僕達には敵わない事はようく知ってる。でも気になるよね?」


「連中がどうやって、こちらの未来予知を回避できたか…」


「心当たりはあるじゃないですかぁ~っ」


いつの間にか起きていた熊上が眠い声を上げる。

伊務も薄々気づいていた。出来れば否定したいけど…

頷く最上の後ろから非常に能天気な声が響く。


「いや~、すいませんトイレが長くなっちま、いや、長くなっちゃって~」


3人の視線が突き刺さるように日向に向けられたのは言うまでもない…



 「こちら、アンダー・ザ・ドーム、ランゴリアーズどうぞー!」


「こ、こちらランゴリーアズ?ええっと、めんどくせえなぁっ、おいっ、誰だぁっ!

こんな呼称決めたのは(“あんたでしょっ!?”という怒声がスマホ越しに耳をつんざく)づいませーん、マジっ、ぶたないで!マジっ!ええっと、どうした?日向じゃなくて、アンダー・ザ・ドーム」


「すいません、多分、バレました。緊急救出パック“クラウチ・エンド”をお願いします!」


「何~っ、こないだの“ドキッ!未知の巨大生物に紛れて、武器及び活動資金の輸送作戦”もうバレたの?はやくねっ!?」


「いやぁ~っ、流石に正義の女の子達、勘づくのマジ早いっすわ」


キッカケは伊務の言葉だった。彼女のバイト先で困っている子がいるとの話を受けた。聞けば、その子はシフト作成担当、バイトメンバーのシフトや予定を立てることで、てんてこ舞い、非常に困ってるとの事…


バイトは組織、シフト長は恐らく未来予知の少女と踏んだ日向及び、軍曹一行は一計を案じ、伊務達にアドバイスをする。


「あ~、わかる、わかる!シフト組むの大変ですよね。シフト長お疲れさんっす~!

あっ!?考えすぎなのかな?シフト長!…そうですね、例えばですよ。


仕事内容の選別っていうか、優先度の高いモノに合わせて、シフト組んでみるとか…

そうですね。今日、何か棚卸しとか、そーゆう目標があったら、あれですよ。お店の掃除はやんなくていいから、人数少なめでとか…


どうでしょう?まぁ、ご検討よろしくですよ」


と良い感じのニカッと笑顔で決めてたら、トントン拍子で上手くいった。いや、美味く行き過ぎた…今は彼女達がこの話を忘れてくれている事を祈るしかない…


「りょーかいっ、だがっ、残念な気もするな。結構気に入ってたんだろ?日向?もうちょっと様子を見ても…」


「いえいえ、楽しかったっすよ。良い子達です。本当に…だから、わかるんす」


「わかる?」


「裏切ったら、いや、騙してた事がわかったら、マ・ジ・こ・わ・い」


「そーかぃ、わかったよ。ちょっとこっちも忙しいが、10分で迎え行かすわ」


「忙しい?万年暗い倉庫で目ギラつかせてるだけじゃないっすか?」


「今はその皮肉に応じる余裕はねぇっ。どうやら俺達と同じくらいの時期からボゴ・タルタの連中が、この辺りに潜伏してるらしい。そっちの注意も怠るな?アイツ等、例の海賊騒ぎで、相当頭に来たらしいからな」


「ふーっ、全く次から次へと…わかりました。とにかく、トイレ長いのあれなんで行きますね」


玄人風のため息をつき、早退届を出すため、教室に戻った日向は凄い笑顔の3人に迎えられ、思わず


「ナンバーテンっすね(畜生の意)…」


と、これから敗ける事確定の兵士風に呟いた…



 「うんっ、あのさっ、さなっち!もう一回聞きたいんだけど、別に何にも変な話じゃなくてね!何ていうかさ…私達に隠してる事ある?」


妙に明るい伊務の声に、冷たい汗がゆっくりと日向の頬から滑り落ちる。それを羽交い締めにした熊上がざらついた舌で舐めとった。


午後の授業からガッチリガード(席が近いのがこうも災いするとは…)され続け、放課後、人気全くなし、旧校舎教材準備室に連行された。いや、正確には人気が無い訳ではなく…


「そっかっ、心当たりないかっ!うん!最上」


「オッケー!ゴメンねっ!先生ー」


首をブンブン横に往復日向に、明るさ抜群の伊務の負けないくらいのテンションで最上が頷き、黒板に四肢を磔にされた英語教師“ミカ先生”の、しなやかな両腕の腋窩に鳥の羽をくっつけ、ゆっくり上下に動かす。


「う%7#0おp~」


口にボールを咥えさせられた先生が呻き声を上げる。両目からは涙も放出…戯れで済まされる問題ではない。最早、拷問に近い…


「わあああ、せんせぇっー!もがさん!やめて下さい、やめてあげて下さーい!」


「フフフ、う~ん、無理かな」


「さなっち~、知ってる~?くすぐりってね、あーやって、抑えて、やり続けると、

終いには頭可笑しくなっちゃうんだよ~、昔、女性刑務所で流行ったリンチだよ~」


慄き、わめく日向を戒めるように、彼女の耳を優しく噛んだ熊上が囁く。それを、いつもと全く変わらない姿勢を崩さない伊務が口を開く。


「うん、クマの言う通りだね。じゃあさっ、さなっち、もう一度聞くから、よく考えて答えてね。何か隠してる事…」


「ない!ない…ないっすからぁっ!先生を解放してあげて下さい!後、出来れば私も(ここは小声で)」


「おっ、即答だね~、どうする?イムやん?せんせぇ、良い感じに蕩けてるけど、腋だけじゃなくて、下とか、耳とかいっちゃう?マジで逝っちゃうかもしれないけど…」


「うん!そうだね!何だか、今日のさなっち、まだ、素直になれないみたいだもんね!!」


「素直っす!めっさ素直っすよ!!てか、先生は何にも関係ないです!やるなら、私を!!」


日向の懇願に、伊務が嘲るように口を開く。


「ええっ!?何でっ?だって、さなっちは私達に何も悪い事してないよね?どうしたの?」


(それは先生もじゃね?)と返したいが、思春期の生徒を悩ましボディで嫉妬とか羨望云々と、ミカ先生にはツッコめる要素があるにはある。しかし、関係のない人まで巻き込む訳にはいかない。


「もう止めましょう!これ以上やったら、先生大変な事になっちまいますし、伊務さん達だって、停学じゃ、すまないッスよ」


「あはは、面白い事言うね、さなっち?大丈夫、私達の仲間に記憶改ざんとか出来る子いるから、あ、それもわかってるか?全く、早いもんだね。こんなにも早く、こちらの正体がバレるとは…クマ、最上、今後は注意が必要だね?」


「確かに、クマっちも僕も、油断してたね…いい友達になれると思ったんだけどな、

僕、残念だよ」


と言いながら、羽の上下運動を止めない最上…やがて、


「あ~っ、モガちゃん、先生気ぃ失ってる~」


と耳傍から聞こえる熊上の声と重なり、ガックシ首を項垂れる先生…


良かった。若干というか、色々失ったかもしれないけど、とにかく先生は助かった。日向の安心は速攻束の間…


「では、次の方!どぞ~」


と言う伊務の爽やか声に悲鳴を上げそうになる。


「ちょっと、待ってください!次、次って何すか?」


驚愕っていうか泣きそう日向に“う~ん?”って感じの伊務は面白そうに口を開く。


「まぁ、大方バレてると思うけど、私達は海の戦いに務める者、いわば軍事部門?ジャンルって言うのかな?なので、スパイとかの尋問は一通りわかってる。こーゆう時はね、何も関係ない人を嬲って、堕とすんだよ」


「いや、それ、何処の秘密警察…」


「大丈夫!記憶改ざんで全て無かった事にすっから!」


「両の目グルグル風車ぁっ!?(訳:どうしよう、イムさん、目がイッてるっす)

落ち着いて、やっぱりアンタ等、世界救済の連中は、極端っすよ!!」


「あ?やっぱり知ってる?やっぱ隠してる?」


「いやいや、最近はネットとか写真とかで、動画上がってますから!伊務さん達っぽいのそーいや見たなぁっ的なぁっ」


「あーっ!そう、じゃっ、URL教えて!確認すっから!さぁ、今すぐ!」


「ええーっと、ええっとぉ…」


「イムやん、もうめんどくさいよ、クマっちだって、新しく作った拷…いえ、お話し聞かせてセット出したがってるよ」


最上のやんわりフォローに熊上が照れ臭そうに頷き(だが、日向の拘束は緩まない)日向が、よく見えるように体を動かし、そのおかげで彼女は、お話し聞かせてセットの全容を見る事ができ、今度こそ、本当に絶叫した。


「ギャアアア、そう言えば体育のゴウキ先生が跳び箱一個紛失したって言ってたけど、こんな、三角木馬に改造されてたなんて…ひゃあっ、すいません

(と再び熊上に耳を噛まれる)」


「ちちぃ~っ、さなっち~、間違ってるよ。実際の三角木馬は暗黒時代の奴で、あんなの使ったら~死んじゃうでしょ?これは三角じゃなくて、四角い凹凸木馬、死なない安心設計!だけど辛い!すいません、痛みを快楽に変えて下さい仕様のものだから~あんしん~」


「そう、安心!安心!」


熊上の説明に呼応した最上と伊務がはしゃいだような声をあげるが、目は笑ってない。色々飛んでる感じだ。


「そして、気になる次のいけに…いえ、さなっちの代・わ・りに、これに乗るのは~?」


既に意識が飛びそうなのを何とか堪え中の日向を、完全無視して、話が進んでいく。ぐったりとしたミカ先生を端にどけ、教室の暗がりからグルグル巻きに拘束された、日向と同じくらいに転入してきた


“カルロス・今中さん(ゴツい名前だけど、何か”えっ高校生?“的豊満ボディの褐色美人、大体、ミカ先生と同じ、体型ストーンフリィィイな伊務達の憎しみの対象(多分)”


が、元跳び箱、今三角以下略の前に引き出されてくる。不味い、このままでは、異国からの留学生がとんでもJAPANの洗礼を受け、新たな怨嗟を生みかねない。


いや、そもそも自身の保身のために大切なクラスメイトを生贄に出来ない。だが、だが…しかし…


(どっちも失いたくないっすね、正直…)


自分を作ってくれた組織も、そして伊務達もだ。日向が全てを話せば、どちらか片方を失う。どっちを失っても、穏やかな日々は戻らない。戦いの到来を迎える。


(だけど、いけないっすね…それは、エゴっす)


「さなっち…?」


ふーっと大きく息を吐く。密着した熊上が呟き、身体を震わすのがわかる。

やっぱり良い友達だ。ありがとう!…


「すいません、クマっち、モガさん、そしてイムさん聞いて下さい!実は…」


決意を固めた日向の声に、全員が振り向く。いや、全員ではない。カルロス…

今中さんだけは、何か動きが…


視線に疑惑を混ぜた日向の思考は、同時に起こった閃光によって、確信へと変わる。


「まさか、コーモ簡単に、こちらの潜入がバレるとはナ、侮ったぞ、世界救済の

ムスメ達ぃ…」


そこには戒めを解き、目を赤く光らせる今中の姿があった…



 「潜入者から合図があった。行くぞ」


スマホを確認した“男”は荷台に準備する者達に短く告げる。空挺突撃銃の鈍い装填音が車内に響き渡っていく。


彼等はボゴ・タルタの特攻部隊、目的は世界救済少女のメンバーの拘束である。彼女達の活躍により、各所の支部を叩かれた組織は、敵の情報収集を開始し、その結果として、少女達の平時における生活空間を突き止め、こちらが用意した実験体を送り込んだ。


後は、潜入者の合図と同時に、敵を拘束、組織に連れ帰り、拷問に実験、尋問の予定…組織に邪魔する者は徹底的に破壊し、奪えるモノは全て奪う。それこそ磨り潰す程にだ。彼女達の能力が組織にもたらす恩恵は計り知れない。現に、今までの戦闘において、


敵から得たデータは大きい。今の部下達も、薬物投与による肉体改造を受け、死も痛みも恐れない兵士となった。


「しかし、半年か…長かったな」


男の問いに返事はない。改造されてるから、当たり前だが、

本来、答えなど気にしていない。ただ一方的な殺戮と奪取を快楽とする者達の集まり…だが、それを邪魔された。しかし、まもなく元に戻る。


残忍な笑いを浮かべた刹那、体が衝撃に吹き飛ばされる。硬質ガラスの窓を突き破り、偽装トラックの車内から放り出され、したたか地面に体をぶつけた。


「敵っ!?」


想定外の襲撃だ。海賊の一件以来、常に予測され、阻止されてきた作戦が成功するようになっていた。武器の輸出に窃盗などの小規模な事象…自分達が連中の攻撃目標から外された事を実感し、今作戦の後押しにもなったのだ。


横転する車から飛び出した部下達が銃を構え、男の周りに展開していく。だが、空気を裂く複数の音が響き、彼等の手足に赤い血の花火をいくつも上げる。


「超消音装置にセフティ・スラッグ弾か?…」


倒れる部下達を除け、低姿勢で移動しながら呟く。肉体を強化された部下達は、聴覚、視覚に加え、異常な筋肉装甲を備えており、通常弾であるフルメタルジャケット(弾頭に鉄を被せ、肉体破壊を減少させたモノ)を喰らっても平気な改造を受けている。


だが、敵が使ってるのは陸戦条約違反のセフティ・スラッグ…(ダムダム弾ともいう)制限無視の人体破壊弾と、居場所を察知されないような消音装置を用意してきた様子だ。


世界救済の連中が使う光弾やバカでかい砲撃でもない。恐らく自分達と同じ類の

連中、だったら、方法はある。腰のホルスターを中身ごと地面に放り投げ、叫ぶ。


「こっちは丸腰だ。降伏する」


数秒と経たずに、人気のない道路をこちらにゆっくり歩いてくる複数の影が現れる。

見たところ10人前後…ゆっくりのたうつ部下達の様子から、殺す意志はないと見た。


(甘いな…)


男の背中には小型の短機関銃が吊るしてあった。目の前の敵達は銃を下げている。

アンブッシュ(待ち伏せ)のセオリーから言って、両側からの攻撃はあり得ない。


「あり得るんだな。これが」


冷笑を取り戻す男の後頭部に冷たい声と銃口が押し当てられる。


「顔つきは東洋系、ボゴ・タルタのアジア方面担当と言った所か?」


「ふっ…両側配置の攻撃、狂ってる。そう言えば、昔そんな方法で戦う部隊を聞いた事があるな。俺達の所属については、想像に任せる。お前等は噂に聞くアンチ・オータだな?何故、我々を?」


「行先はこの近くの学校だろ?おたく等の狙いはウチとしても、少々困る。話をしよう。改造人間の部下達は殺してはいない」


「わかってる。だが、一つだけ聞きたい。あのガキ共を助けても、俺達には何の得もない。知ってるだろ?全て蹂躙されるぞ?あいつ等の靴を舐めろと?繊細で可憐なお御足を?」


男の皮肉に、後ろから笑いを含んだ意地の悪い囁きが返ってくる。


「告白するとな。部下達の手前もあるが…個人的には舐め回したいね?それこそケツの穴までな」


ドン引きを体現した表情の敵を見て、軍曹は満足そうに口を歪めた…



 「ヤバいっすね、これは」


旧校舎の廊下奥、机が積み上がった影に身を潜め、日向は呟く。彼女の後ろには伊務がいる。留学生の奇襲により、熊上と最上とは別々だ。


スマホは圏外、旧校舎なので、人も来ない。そして、光を発した留学生の姿は…


「何か腕は猫ちゃん、頭に耳?コスプレっぽい?目も光ってましたね?ええーっと、あれはもしかして、その、伊務さんのお知り合い?さっき言ってた。世界救済少女の?例えば敵さんとか…?」


「多分、違う。この半年で主要な敵は全部倒したし、悪の女幹部とか、女の子の戦闘員は全部捕まえて、お話し聞かせてセット使って、しもべ、いえ、お友達にしたから」


「さらっと恐ろしい話が出ましたね、じゃぁ、あれは新規の敵さんっす。対抗するには、伊務さん達の力が必要です。その、変身とかは?」


「私達は魔法少女とか変身ヒロインではないの。だから、変身デバイスは無い。装備は換装するだけ、簡易セットならロッカーにあるけど…」


困ったように俯く伊務、恐らく彼女の心中は友人をスパイとして疑った事(別の相手が出てきたおかげで、そっちがスパイだと思ってくれている)新たな戦いに友人を巻き込んだ後悔で一杯だろう。


やはり、まだ子供だ。どれだけ強大な力を使おうと、先生とかクラスメイトを

拷問しちゃおうと、その精神は年相応だ。


(だからこそ、きちんとした導き手が必要って訳か、アホ軍曹の言う事も、あながち間違ってないっすね。なら、自分の出来る事は)


「よし、決まりっす!私が時間を稼ぐので、イムさんは装備を!それで、今中さんをやっつけましょう」


「でも…さなっち」


心配そうに、こちらを見上げる伊務の頭に優しく手を乗せ、撫でる。


「ちょいちょい、正義の味方が、そんな顔しない。明るく正しく凛として!さぁ、行くっす」


「‥‥‥…わかった」


数秒の翔潤に決意を秘めた、非常に良い顔!これで安心、丁度申し合わせたように、こちらに近づく足音も聞こえてきた。伊務を隠すように、廊下の中央に立つ。勝てる自信?いや、100パー無理っしょ?戦場の余りもの素材で出来た、この体…早く人間に…


「さなっち!」


後ろからの伊務の声に、思わず振り向く自身の作りモノの唇に少女の柔らかい唇が

重ねられる。


「!?っ、イムさん(名残惜しいけど、口を離して)」


「ありがと!」


100万円くらい投げ銭したい笑顔で走り去る伊務の後ろ姿を見て、ホント、切に

人間になりたいと思う日向であった…


 

「確か、オマエはクラスメイトの佐那 日向(さな ひゅうが)まさか、オマエも

世界救済少女のメンバーナノカ?」


「いえ、明らか普通のパンピーです。3人とはお友達でして」


赤い目を光らせ、こちらに進んでくる今中の服装は他校の制服?のような、恐らく変身コスチュームに身を包んでいる。頭の耳、猫っぽい腕から察するに、獣の力を得ていると考えていい。常人じゃぁ、切り裂かれるか、身体をへし折られる。えっ?学生?って言う相手の体型から言って、そんな感じだ。


「私の組織とは違う潜入者がいるとキイタ事がある。オマエの事か?」


距離を詰めながら、手の爪を怪しく伸ばしていく今中はやる気まんまん…不味い、時間稼ぎにもなりそうもないが…辺りを確認し、破れかぶれの台詞を口にしてみる。


「お察しの通り、組織名は明かせませんが…そちらはボゴ・タルタ?実を言えば、このナリも偽装でしてね」


言葉途中で今中の目が大きく見開かれる。


「まさか、オマエもあれか?元は、こんな姿じゃなくて兵士だったノカ?」


「ああ、そうっす、そんな感じっす!」


「やつらとの戦いで負傷し、連中を倒すために、こんな極東の島国まで送り込まれた。身体をカエラレテな」


「そう、そう!正にその通り、私等人間じゃないっす!」


「人体転換機に入れられた際に、間違って、一緒に猫が入ったせいで、異能形態変身後にコンナ姿になる事も?」


「えっ?転換機?ちょっと違うな。今中さん、それはあれですよね?映画の“ザ・フライ”的な何かに巻き込まれた感じですよね?」


「ザ・フライ?」


「あっ、ザ・フライってのはですね。蠅男になっちゃう映画でして…」


「ハエ…」


「あっ、いや、それは例え話でして…」


「……‥‥もういい、よくわかった。アレだ。貴様は私の敵だ!この爪のサビにしてやる」


「わぁあ~っ、今中さん、日本語お上手~」


パチパチと手を打つ日向に、常人の3倍以上に伸びた爪を光らせ、今中が恐ろしい勢いで飛びかかってきた…



 「ボゴの捕虜は病院手配完了、こちらの損害はゼロ。常人を超えた敵との戦闘としてはまずまずの戦火かと…」


覆面を付けた兵士が敬礼と一緒に軍曹へ報告をする。他の面々も装備を車内に積み、移動の準備をしていた。覆面を目元まで上げてる奴、覆面にペイントし、覆面の意味を無くしてる奴、耳が長くて覆面を取るのに手間取る者、自身の部下もいろんな奴が集まった。


皆、大事な戦友、勿論、今現在、学校で戦ってる奴も含めてだ。


「病院側もビックリするだろうな。連中の指揮官が吐いた。日向と同じような奴が潜入しているらしい」


「はやっ、どうやって吐かした?いや、いいっす。聞きたくない。しかし、さなちゃんが心配ですね。急ぎましょう」


「勿論だ。しかし、世界救済の奴等も出張ってくるだろうから、慎重に行くぞ」


「そんな時間あるんすか!?さなちゃんがボゴの奴か、世界救済の連中に…」


「だから、それは大丈夫だ」


激昂する覆面に、軍曹は言葉を覆い被せる。これもある意味、成果を試す良い機会だ。


「言ったろ。同じような奴だって…」…



 今中の目が驚愕に見開かれる。突き出した爪は古びた学習机の下部鉄製部分に刺さっていた。抜こうとしても、木製部分の重みが邪魔して動けない。


膝を突き、目の前に立つ一般、いや、一般でない女子生徒を仰ぎ見る。


「貴様、最初から、これを狙って?」


「これで、機動性が鈍るっすね?先程のお話しも無駄ではなかったっす。おかげで机との距離を稼げました」


冷静に喋る日向が使ったのは、アメリカ原住民の格闘戦術だ。相手の注意を自分に向け、隠し持った一撃を加える戦法、コイツは出来る、だが…


「片腕くらいで、私を止められると思うナ!」


吠え声を上げ、一気に跳躍する。もう片方の手を振り上げ、振り上げ?下ろせない?そのまま宙づり状態になってしまう。


「うわぁ~、今中さんのパンツ、スッゴイ!セクシィィッ、えっ?勝負パンツ、勝ちパンっすか?」


下腹部って言うか、股下から響くノンビリ声に、顔が赤くなる。重量を持った片手を気にして、いつも以上に力を込めすぎた結果、狭い廊下の天井に突き刺さった事と下着の趣味両方にだ。


「馬鹿、見るな、ミンナ」


叫び、強力な蹴りを相手の顔に突き出すも、逆にそれ以上の力で相手に掴まれ、天井から引っこ抜かれ、床に全身をしたたかぶつける。


「夜風、気持ちよさそうっす」


冷静な台詞が響き、冷酷に窓外へ放り出された。気持ち良いくらいの浮遊感を感じる今中は笑顔で手を振る日向を捉えた。


「馬鹿メ、これで爪も抜けタ。戦いはこれからダ」


空中で反転した彼女が再度の突撃を見せようとした刹那、全身を爆発が包んだ…



 艦装に身を固めた最上と熊上が構えた巨砲をゆっくり下ろし、地面に落ちた今中へ

(ピクピクしているから、多分生きてる)近づいていく。それを窓から見下ろす日向は気張っていた肩をほぐす。


今中を見た時から、体が勝手に動いた。自分に、これだけの判断力と力が備わっていたのには正直驚く。どうやら、本当の意味で様々な素材が組み合わさった曖昧模糊な存在らしい。


だが、それも悪くない。おかげで大切な友達を救えた。多分、もう会えないけど…

熊上が、こちらに気づく。少し悲しい。同じく見上げた最上が泣きそうな顔になった。


でも……ゆっくり手を振り、そのまま駆け出す。


「ごめん、サヨナラっす」


これからは敵の関係になるかもしれない。それでもいい。人工的に生まれた自分に友達が出来た。魔法少女だって、変身ヒロインだって、伊務達のような存在が現実に存在する世界、どんな不可能も可能になる。友達じゃなくなるけど、相手の安否はわかる。だって、敵同士だもん。そう、これからは敵…


目から出た涙が頬を伝う。それを拭い、校舎の外に出る。申し合わせたように校門に停車したバンを確認した日向は、後ろを一度だけ振り返り、素早く飛び乗った…



 車内は偽装のためか暗かった。ゆっくりと走り出す車に腰を落ち着けた日向に運転席から声がかかる。


「こちらはクラウチ・エンド、そちらのコード名は?」


「了解、自分はアンダー・ザ・ドームっす。ランゴリアーズ、軍曹はどうしたんすか?」


涼し気な声は女性のものだ。組織内の女性隊員達の顔を思い出す。確認しようと首を伸ばす日向を制止するように声がかかった。


「ぐぅ?軍曹は現在、敵勢力との戦闘後の処理を行っています。相手はボゴ・タルタです。我が組織と敵対している…」


「う~ん?まぁ確かに…でも、自分等のアンチ・オータだって同じようなモンじゃないすか?彼女達に敵対しているという点では‥‥!?」


言葉途中で気が付いた。あっ、言質とられたと思った瞬間、横から素早く、そして柔らか&とても良いニオイのする誰か、いや、よく知っている人物が日向の体にしなだれかかってくる。座席に体を無理やり横たえられ、喋ろうとする唇を滑らかな唇で塞がれ、咥内を可愛く動き回る舌で貪られていく。抵抗しようしとした両の手は頭の後ろに押し込まれ、手錠で一つに拘束された。


軍曹自慢の日向の豊かな胸が張り出される形となり、お約束通りに力いっぱい揉みしだかれる。


「んっ、んっ…んーん」


思わず上げた困惑声でようやく唇が解放される。目と鼻がくっつきそうな距離に上気した顔の伊務が現れる。


「イ、 イムさん、待って話を聞い…ひゃぁっ(豊かすぎる胸がサディスティックに強くなぞられ、思わず声が出た)話を、話を聞いて下さい」


「ふふふふ~、さなっち、隠してたね。やっぱりそうだったね。どうしてこの脱出手段が?とか思ってるでしょ?ふふ~、シフト長~!」


一方的無視で日向への様々な愛撫を継続する伊務が懐かしい響きを運転席に呼びかける。むず痒いような感覚を覚える日向の脳裏に、嫌な予感が答えへと変わる瞬間を確かに感じた。


「シフト長と言う名称は訂正したいですけど、まぁ、彼女達のスケジュール管理をしている未来予知の者ですね。ハイ、日向さんにはお世話になりました。おかげで私の予知は、貴方達の企みを防ぐ事は出来ませんでした。


そうしましたら、つい先刻、伊務矢さんから、連絡を受け、貴方の未来予知のみに特化させてもらいました。おかげで、こうして先手を打てたと言う訳です。」


涼しい声だが、静かな怒りが含まれている。不味い、非常に不味い。今や、普段からのクールさは微塵もなく、日向の上で、日向の体を弄びまくってる伊務にどうにか説得を試みる。


「あの、イムさん。こーゆうのもなんですけど、私、逃げないっすから!(切実な響きで)そろそろ解放して頂けると、あっ、シャツのボタン外さないで、後、スカートの中に手ぇ入れないで」


「む~っ…ふふっ(日向のブラを上手に口で抜き取りながら)最上と熊上も本部で待ってるからね。先に1人で楽しめる事をやっておかないと。さなっち、人気あるからね。最上なんか、泣きそうな声で言ってたよ“ちゃんと、とっておいて”ってさ」


「えっ、怖っ!?私は何されるんすか?ちょっ、シフト長止めて、この見た目可愛いけど、言ってる事逝ってる私の友達を止めて」


「(え~っ、友達じゃないよ、今日からご主人様だよ~?とノンビリ声の伊務を見つめて)伊務矢さん、私の分もとっておいて下さいねぇ~」


「ひぃっ、シフト長も怖い!ホントにゴメンなさい。イムさん、隠し事反省してます。だから、怒らないで、後、ぱ、パンツ脱がさないで(超切実&貞操の危機)ふぅっ!?(言葉途中で頬を勢いよく張られる)イ…イムさん?ひっ…」


ネズミをいたぶる猫のように目を細めた伊務は、そのまま、日向の頬を2、3度張り上げ、完全に黙るのを確認してから、口を開く。


「さなっち~、ちょっとうるさ~い。これからは、そーゆうとこも躾てかなきゃね。別に怒ってないよ~。ただ、これでようやく色々、自由に出来るんだな~って、嬉しくなっちゃってぇ」


それは、どーゆう?と聞きたいが、伊務が再び、手を上げたので黙った。満足そうに頷く伊務が日向の髪を優しく撫で、言葉を続ける。


「う~ん、いいねっ、ちゃんとわかってきたね。これからは私が手を上げたら、お仕置きの前段階、だから、相応の態度で示してね?じゃないと…わかる?わかるよね??」


頷きながら、涙が流れてくる。それを蛇のようにチロつく舌で舐めとった伊務が、再び顔を近づけ、囁く。


「告白するね。さなっちの事好きだよ。とっても!もう、ペットにしたいくらい

(口角が耳まで吊り上がりそうな凄い笑顔が顔中に広がる)私達の役目は世界を守る事、だけど、その分相応の疲労?ストレス溜まるよね?皆、可笑しくなっちゃう一歩手前…


だから、それぞれ見合った解消法を探すの。お菓子いっぱい食べたり、好きな服を揃えたり、でも一番人気がある、最近ホットなのはぁっ、捕まえてきた敵を拷…あっ、お話し聞いたり、調教…じゃなくて、お友達になるレッスンとか、奴れ…下僕、お友達にしたりする事なんだ。


さなっちはとっても適任、可愛いし、出るとこ、出てるし、楽しむ要素満載、何より敵だし、そーしてぇっ、これ、とても重要!重要な事だよ。よく聞いて、こらこら~寝ちゃ駄目だぞ~(頬を軽く張られる)ニ・ン・ゲ・ンじゃないよね?


さっき、学校でキスした時、盗聴器つけたの、色々聞こえたよ~?人間じゃなきゃ、色々しても大丈夫!そうだよね。どんなに酷い事しても、治りはやそうだし“新しい玩具が2体も手に入った。今から想像しただけで、僕ワクワクするよ”って最上も今中さん拘束しながら言ってたよ。ねっ?さなっちは人間じゃない。そうだよね?ホラ、気絶しない。早く答えろ。また痛くしようか?」


「(悲しみいっぱい溜めた視線を伊務に送るが、ゆっくりと上げられた彼女の手を見て、色々諦め…)ハ…ハイ」


と頷く日向を嬉しそうに見た伊務は“よかったぁ~”と言う声と共に抱きしめてくる。

ホントに年相応の少女達…でも、心は…軍曹の言う事はマジで間違ってなかった。恐らく、それをこれから身をもって知らされるのだろう。いや、もう始まってるか…


自身の体から電子音が鳴る。伊務の表情が冷たいモノに変わった。数秒の沈黙の後、今生の別れともいうべき通信が入る。


「こちら、ランゴリアーズを変更して、クラウチ・エンド!アンダー・ザ・ドーム、いや、日向、無事か?お前の姿が校舎内に見えない。一体何処に?まさか、敵…」


通信機が衣服から取り出され、ゆっくり握り潰される。目の前で粉微塵に散らされる破片は、日向の今後を暗示しているようだ。せめて、最後に軍曹へ一言と開いた口は、


「これで、さなっちは私達のモノ、学校では友達!放課後は…わかるよね?」


と言う伊務の声にかき消され、返事も言わせてもらえず、甘く、柔らかい彼女の唇にゆっくりと覆われていった…(終)



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「放課後☆告白☆ⅮEATH UNDER COVER」 低迷アクション @0516001a

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