オンラインオフ会!④




すっかり動揺してしまった智夏は助けを求めるような目をネオに向けてきた。 正直キッパリとお断りしたかったところだが、今新年会の楽しい雰囲気に水を差すわけにはいかない。


『作り笑いで乗り切って! スルーでいいから!』


慌ててカンペを見せると、不満そうだがコクリと頷く。 メッセージには反応しないようにするのが最もいい。 その後は想定していた通りぽよぽよで遊ぶことになった。 

前もって決めていた通りネオがプレイし智夏が実況する。 だがそれ以上に気になることがあった。


―――流石にしつこすぎないか・・・?


遊んでいる最中に何度もリトからメッセージが送られてくるのだ。 どれもラブコールで男のネオにとってはただただ気持ちが悪かった。 そして三時間程が経ち、そろそろお開きという空気になってきた。


「ふぅ。 そろそろ終わりにしようかー!」


ぽよぽよのピースを綺麗に全て消したミナがそう言った。


「そうだね。 緊張したけど今日は楽しかった」

「俺も俺も!」


ルイとリトが続けて言う。


「ねぇ、またみんなで顔出しをしてお話をしようよ!」

「頻繁には無理だけど、まぁたまにはな」

「じゃあ決定! 今日はお疲れ様ー!」


リトの発言に頷くと各々落ちていった。 カメラと通話を切るとネオと智夏は安堵して息を吐く。 正直な話、ああは言ったがもうオンラインオフ会はこりごりだと思っている。


「智夏、ありがとな。 そして本当にお疲れ」

「ううん。 結構楽しかったよ! 一部はアレとして、普通にみんないい人たちだったし」

「それはよかった」


一部アレというのは当然リトのことだろう。 彼のことが頭に思い浮かんだ瞬間、そのリトからメッセージが届いた。 二人はその場で固まる。


「・・・み、見てみなよ」


智夏にそう言われメッセージを開いた。


『今日はお疲れ様。 ネオちゃんの可愛い姿も可愛い声も聞けたし、今日は幸せな一日だったよ。 よかったら今度は、プライベートで二人で会わない?』


それを見た智夏がスマホを投げ付けながら喚くように言う。


「ちょっとごんちゃん! 何とかしてよ!」

「分かっている。 智夏には迷惑をかけないから」


ネオが断りの返信を入れる。


『ごめんなさい。 プライベートで会うことはできないです』

『俺が全て奢るよ? ネオちゃんには何も負担をかけない』

『それでも無理です』


やり取りをしていると突然リトから通話が来た。 表示された名前を見て溜め息をつくと通話に出る。 当然、男のネオが出て、そしてハッキリと言った。


「もしもし? 俺はネオの彼氏だ。 迷惑だからこれ以上は誘わないでくれないか?」


変声機も使わず相手に話される前に話を切り出した。


『え、彼氏? 本当に?』

「嘘をついて何になる?」

『俺の誘いを断るために、男の人に代わってもらったんじゃないの?』


―――さっきまでオンラインオフ会していて、その傍にいた男ってどんな存在になるんだよ・・・。


チラリと智夏を見る。 智夏は首を横に振っていた。 もうここは本当のことを言うしかないのだろうか。 再び溜め息をついた。 

性別のことがバレたとしても、リトのリアルが中年のおっさんだと知っているというカードがある。 何かあれば取引すればいいと思った。


「悪かった、本当のことを言うよ。 ネオは俺だ」

『え?』

「Vチューバ―キャラの可愛い女の子の中身はこの俺!」

『・・・本当?』

「あぁ。 信じてくれるか?」


そう尋ねると沈黙の後リトは言った。


『・・・うん。 ネオちゃんの言うことなら信じるよ』

「よかった」


その言葉に安堵したが“ちゃん付け”で呼ばれたことに鳥肌が立った。


『だけどそれでも俺の気持ちは変わらないよ』

「・・・は?」


―――え、もしかして俺のことを男の娘だと思ってる!?


「違う、違うぞ! 俺の心は乙女なんかじゃない! 俺はれっきとした男だ!!」

『ネオちゃんの見た目が男でも女でもどっちでもいい』

「そ、それって、まさか・・・」

『俺は両方いけるから!!』


――――つまり、バイっていうことか・・・?


どうやら心の底からの両性愛者が仲間の中に紛れ込んでいたようだ。


―――だったら本当のことを打ち明けるんじゃなかったぁぁー!!






                             -END-



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オンラインオフ会! ゆーり。 @koigokoro

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