オンラインオフ会!③
1月5日。 ついにオフ会の時がきてしまった。 といってもいきなり顔合わせというわけではなく、まず最初はVチューバ―の姿で通話に参加する。
「みんなー! 顔出しする準備はいいー?」
ミナは相変わらず陽気だった。 ルイは緊張しているのか先程から何も喋らない。 そして仕方のないことだが、ネオの代わりとしている智夏も口数が少なかった。
変声はこの日のために調整し、ネオの声をほぼ再現している。 多少の声質の違いはマスクをしているという理由で誤魔化す予定だ。
「じゃあ、まずは誰から顔を出す?」
ウキウキした調子で尋ねてくるミナにリトが言った。
「言い出しっぺのミナからがいいんじゃないか?」
「えぇ!? どうしてアタシからなのよ! ここは男子からいってよー!」
「理不尽なッ!」
「アタシとネオは後!」
「・・・じゃあ、俺からいくよ」
そう言ったのはルイだった。 ルイが自らトップバッターを選ぶとは思ってもみなかった。 緊張から早く解放されたかったのだろう。
「お、いいねぇ! ルイ流石!」
ミナがいい感じで場を盛り上げルイがついに姿を現した。 ルイは大学生らしく普通にイケメンで、女子受けしそうな容姿をしていた。
「キャー! ルイ、めっちゃイケメンじゃん!」
「いや、そんなことは・・・」
「最初からハードル高過ぎるんだけど」
そう呟いたのはリトだ。 どうやらルイと自分を比べ自信をなくしてしまったらしい。
「ルイ、もっと自信持てばいいのに! 絶対モテるでしょ!」
「お、俺の話はいいから。 ほら、次はリトだよ」
恥ずかしいのか話題をリトへと持っていった。 リトは『行くよ!』と意気込み顔出しをする。 正直、どんな容姿だとしてもネオは何も言うことはできない。
それでもやはり智夏と顔を見合わせてしまったのは、キャラと随分ギャップがあったためだ。
「え、え、マジでリトなの!?」
ミナは口に手を当て驚いていた。 それもそのはずでショタっ子で売っていたはずのリトが、どう見ても年齢も見た目もかけ離れた小太りの中年だったからだ。
ただリトの元気キャラは普通に素の性格らしい。
「ルイ、そんなにイケメンなら先に言ってくれよ!」
嫌がってはいたが、もうそれ程引け目を感じていない様子だ。 ネオも同様にした方がよかったのかもしれないと一瞬考えたが、すぐに首を振った。 リトはリト、自分は自分。
「別に俺はナルシストじゃないから!」
「俺は完全にルイの引き立て役じゃないか!」
言い合っている二人をよそにミナは楽しそうに笑っている。
「あんなショタのVチューバ―をしていて、その容姿とかギャップが凄過ぎー! まぁ、それが現実だよねぇ。 ネットというのはそうでなきゃ!」
ミナはリアルとキャラが違うことくらい想像していたようだ。 そうなると、ミナももしかしたら性別を偽っていることもあるのかもしれないとネオは考えた。
だが言い出したのはミナからのため、その場合は中々の肝っ玉だ。
「全然フォローになっていないんだけど」
「別にフォローしているつもりはないよ? 素直な感想を言っただけ」
「ふーん・・・。 じゃあ、次はミナがいけよ」
「おっけー!」
ミナはあっさりと顔出しをした。 ドキドキしながら見ていたが、ミナはイメージ通りのギャルで現役女子高生らしい。 周りの反応も思った通りだった。
「ミナは全然変わらないね」
「でしょ? アタシのキャラクターは友達がアタシに似せて描いてくれたものなの」
「通りで」
ミナの見た目も悪くない。 リトはふてくされて完全に黙り込んでいた。
「おーい、リトー?」
「・・・俺のことは放っておいてくれ」
「何よそれー。 リトのこと、悪く言っていないじゃん。 ほら、最後はネオだよ!」
ついにネオの番が来た。 ネオに視線を一度合わせると意を決して智夏は顔を出す。
「キャー! ネオ、めっちゃ可愛い!」
「そ、そうかなぁ?」
「それ素のキャラなの!? ふんわりしていて、萌え系もそのままじゃん!」
「へへ、ありがと・・・」
何故か男子二人は戸惑うように視線をそらしていた。 あまりの智夏の可愛さに見惚れたのかもしれない。 そこから普通に新年会はスタートした。 みんなの態度はいつもと変わらず楽しく過ごせていた。
智夏も話に付いていけるように必死に耳を傾け相槌を打っている。 普段と違うのは気恥ずかしさということにした。
ネオはカメラに写らないところで智夏のことをずっと見守っていて、カンペを出しているような状況だ。 当然それに専念していたはずなのだが、突然一通のメッセージが届く。
―――何だ?
LIMEはスマートフォンとパソコンで同期している。 ミナもメッセージに気付いていた。 そして、その相手が今会話しているリトからのものだということも分かった。
新年会の最中に何事かと思い内容を確認してみる。
『ネオちゃん。 ずっと前から思っていたんだけど、やっぱり可愛いね』
それを開いた瞬間、智夏の表情も明らかに引きつった。 相手がイメージしていたショタッ子キャラのリトからなら何も思わなかっただろう。
非常に悪いとは思うが小太りの中年からの粘っこい賞賛。 何とか笑顔を保っていられたのは一応誉め言葉だったからだろう。
しかし、続けて届いたメッセージを見た瞬間、背筋が引きつるような感覚を味わうことになる。
『ネオちゃん、愛してるよ』
あまりにも突然の愛の告白だった。
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