第19話 終幕——萩市立地球防衛軍は健在なり
ここは萩市笠山。
その地下にある地球防衛軍本部の指令室である。
防衛軍の制服に身を包んだミサキと、青い顔をした青年が対峙していた。ミサキの、はち切れんばかりの胸元を見つめる男の口元が緩む。
「何の用かしら?」
「とぼけないでください。私のプレゼント、気に入ってもらえたのでしょう?」
「ああ。長門級戦艦ね。あれは嬉しかったわ」
「オイ車やチヌを所有する貴方ですからね。きっと長門は気に入ってもらえると思っておりました」
「そうそう。あの、桂浜に来たゲテモノロボットも私たちが接収します」
「どうぞご自由に」
「ところで、どうしてこんな真似をしでかしたのかしら。ロンズ皇太子」
「はあ。貴方様も人が悪い。私の気持ちはとうに打ち明けたはずですよ。ミサキ皇女殿下」
「私の気持ちもお伝えした筈ですけれども」
「それは社交辞令であると思っておりました。貴方様の祖国であるアルマ帝国と我がド・サ・ガ王国は正式な国交がない。そんな国の者からの、たとえ王族であっても婚姻の申し込みは断るものです」
「そうかしら。大切なのは本人の意思ではなくて」
「個人の場合においてはそうでしょう。しかし、国を代表する立場の者であればそうはいかない。少なくとも、私の王国ではそうです。この日本でもそうではないですか?」
「そうかもしれませんね。それで私が滞在している日本を混乱させた」
「その通り。地方独立で国家の基盤を揺るがし、武力で脅迫すれば貴方を奪えると考えたのですが、私の考えが甘かったようです。日本にあの、
「情報収集は大切ですよ。そして、女性の口説き方も」
「痛感しております」
「貴方、見た目はイケメンさんなのに残念ね」
「恐縮です」
「褒めていませんよ」
「あれ? 日本語は難しいですね」
「そうね。最初は誰もが戸惑うわ」
会話が続かなくなった二人はしばし黙り込む。
意を決したロンズ皇太子が口を開いた。
「私のこの想い。受け止めてもらえませんか?」
「残念ですが、お断りします」
「もう一度伺います。私の愛を受けていただけませんか」
「固くお断りします」
「……」
「もう二度と私の目の前に現れないで。次に出会ったら、本気で殺しますよ」
「……わかりました。貴方の事は諦めます。では」
「さようなら」
「……」
一礼してからロンズ皇太子が部屋を出て行った。
入れ替わりに二本のおさげを揺らしながら入室して来たのは、佳乃
「ねえねえ。今の人、泣きながら出て行ったよ」
「仕方ないわね。こっぴどく振っちゃったから」
「ちょっと可哀そうかも」
「同情の余地なし。告白するためにこんな大掛かりな計略立てるなんて、超々幻滅しました」
「そうか。見た目はデ〇ラー総統みたいでカッコいいのにね」
「そうなのよね。見た目だけはカッコいいのよ。あの皇太子」
ミサキ皇女と翠の女子トークは続く。
その後、ゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人の侵攻は停止し、その主力部隊は撤退した。日本国内で独立を宣言した県はその宣言を取り消し、日本は元の状態へと戻った。
戦艦長門は萩市立地球防衛軍の一員として指揮下に入ったのだが、萩市の予算不足が祟り、その後、出撃する事は無かった。また、桂浜に上陸した恐竜型ロボットは、一旦萩市が接収したものの、桂浜周辺を火の海にされた高知市からの苦情により、その籍は高知市へと譲渡された。そして歌舞坂と湯薄は萩市立地球防衛軍に志願し、見事に合格したらしい。
萩市立地球防衛軍 暗黒星雲 @darknebula
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