魔法少女最終大戦

@HasumiChouji

魔法少女最終大戦

「ぐ……ぐへっ……」

 「神智学」の「魔法少女」であるヘレンは……今の所、最強の「魔法少女」が操る、その木偶でくに、あっさり首をヘシ折られた。

 これで……「神智学」は現実に影響を及ぼせる「知の体系」ではなく、単なる迷信と化した。

「天空を統治しろしめすシャンゴよ‼」

 だが、アフリカから来た「魔法少女」がそう叫ぶ。

 雷霆が木偶を撃つが……効いていない。

 木偶は掌の穴より炎を出し……。

 ナイジェリアのヨルバ人の神話体系の「雷と嵐の神」の雨も、その炎を消す事はかなわなかった。

「うわあああっ……っ‼」

 かくして、その「魔法少女」が無惨な死を遂げた瞬間、ヨルバ人の神話の神々は実在している超越者から単なる架空の存在と化した。


 いつ、誰が作り出したシステムかは判らない。

 生き残りの中で、有力な説は2つだ。

 1つは……このシステムを作り出した者が属する宗教・魔法・呪術・オカルトの体系は……既に単なる「迷信」か「伝説」になっている。だが、ならば、何故、システムだけが機能しているかが判らない……。

 もう1つは……他の「魔法少女」を虐殺し続けている「ヤツ」が属する「魔法の体系」の連中が作り上げた、と云うモノ。しかし、「ヤツ」が属する「魔法の体系」は……他の「魔法の体系」の裏をかくのは得意だが……この手の「現実改変」系の魔法は基本的に使えない筈だ。

 いや……我々だって「現実改変」系の魔法は……この後に及んでも、まず使えないほど多大なリソースの消費を引き換えにした上で、大きな危険性も伴うが、「ヤツ」が属する「魔法の体系」では理論上使えない筈だ。

 更に、「ヤツ」が属する「魔法の体系」は、いわば「新参者」なので、「いつ作られたかも判らない」システムを生み出した、と云う推測には無理が有る。

 ともかく、いつの頃からか、各「宗教」「魔法」「呪術」「オカルト」の流派・体系を代表する「魔法少女」同士が殺し合い……そして「魔法少女」が死んだ流派・体系は、現実に影響を及ぼせない「迷信」「伝説」と化す……。そのように現実そのものが作り変えられるのだ。


「東アジアで生き残ってるのは?」

「あたしら2人だけみたい……」

「陰陽道のアキちゃんは?」

「死んだ……。1週間前に……」

 あたしは……中国南部の少数民族の伝統宗教の「魔法少女」にそう言った。

 日本唯一の生き残りである、あたしは、日本の四国に伝わるマイナーな呪術の「魔法少女」だ。

 もう……日本人に馴染み深い神様・仏様は……ほぼ全部「実在しない伝説上の存在」と化した。

 この「魔法少女殺し合いシステム」を世界各地の「魔法使い」が同時多発的に発見した時……誰もが、まず考えたのは……仲の悪い流派を消し去るのに使う事だった……。

 そして……一世代後には、地球上から「魔法の体系」の半分以上が消えていた。

 続いて……ヤツらが現われた……。まるで、他の「魔法の体系」の裏をかくのに特化したかのような「魔法の体系」が、いつの間にか誕生していたのだ。

 熱・雷撃・その他メジャーな攻撃を無効化し、水で消せない炎や知られていない毒気や疫病を撒き散らす能力を持ち、何故か「魔法解除」「魔法無効化」系の魔法が一切効かない「木偶」を操る謎の「魔法少女」が……。


 この後に及んで、ようやく、生き残りの「魔法少女」は団結する事になった。

「ここまで……生き残ってたなんて……」

「まぁ、マイナーな流派ばっかりだけどね……」

 百人には満たないが五十人以上。

「あの木偶は……大概の魔法は効かないけど……固いモノをブチ壊せるような攻撃なら……何とか……一度だけ……片腕だけだけど……傷付けた事は有る。修理は出来るが……その場での再生は無理みたいだ」

 有力な情報だった。

「固いモノって?」

「これぐらいの厚さの鉄板をブチ抜ける攻撃なら……」

「難しそうだね……」

「でも……何人かで力を合わせれ……あれ、何?」

 空に見た事もない使い魔が何匹も飛んでいた。

「まずい……私達の居場所を……嘘……」

 続いて、見た事も無い、巨大な乗り物がいくつも現われ……。

「う……うそ……」

「一匹じゃなかったの?」

 あたし達の数の何倍もの……あの「木偶」が、その乗り物から降りる。

「に……逃げる?」

「無理だ……取り囲まれてる」

 ……最早……全てが終ったようだ……。

 この世界には……たった1つの魔法の体系しか残らず……他の全ての魔法の体系は最初から単なる迷信だった、と云う新しい歴史が作られるだろう……。

 最後の勝者となるのがほぼ確実な魔法の体系「」の産物である「木偶」達は「」と呼ばれる武器を、あたし達に向けた。

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