10章の登場人物+α(レイダン・ミミットの約束編)(2)

「幕間:レイダン・ミミットの約束(4)~(10)」まで。


・マテウス・グロヴァッツ …… 52歳。名家グロヴァッツ伯爵家の現当主。子供の頃から優秀な人物であり、当主になるまでにさほどの障害はなかった。

去年の夏、グロヴァッツは賊の襲撃に遭い、多大な利益を得るはずだった商談が台無しになった。賊ははじめから馬と車輪だけを狙ったかのようにすぐに逃げ、不可解な襲撃だった。この一件以来、ヤリシュヌという子爵がグロヴァッツが獲得する予定だった売買ルートを得て躍進した。彼の身辺調査をしたところ、当時ヤリシュヌの屋敷に鴉が出入りしていた事実をあぶり出すことができた。しかし物証に出来る証拠は掴めなかった。そんな折にナドルニ総督司教から持ちかけられた話が、アラニス派をはじめとする腐敗した司祭たちの粛清と諜報組織の新生だった。元財閥家であった友人のニコデムがゼロをしのぐダークエルフの暗殺者を雇ったことを聞くと、グロヴァッツは反鴉の組織――白い眼の鳶の結成を決意し、動き出すことにした。

■白い眼の鳶 …… グロヴァッツが主導する組織。活動内容は白い嘴の鴉の監査および監視からの脱却。ただしこれは表の活動内容であり、水面下では白い嘴の鴉の解体および新生を画策していた。これにはクリスティアン、ナドルニ統括司祭らが関わっている。レイダンを通してバウナーを処断する名分を得られたのを契機に、賽は投げられた。

・ニコデム …… 54歳。有数の財閥であった元リットビン伯爵。3か月前に、詐欺と偽造通貨を生業としていたとある犯罪組織との関与と娘との近親相姦の罪を問われ、伯爵位を剥奪された上、実家のランドフスカ家からも追放された。ニコデムはまったくの事実無根だった。ただ、友人と旧交を温めながら、金を貸していただけだ。

残った隠し財産を使い、ニコデムはダークエルフの凄腕の隠密2人を雇った。王城を探らせた末、分かったのは、自分を陥れたのは財産目当てであること、密謀にはどうやらアラニス派が主導し、鴉と半ば結託していたこと、アラニス司祭その人はうわさ通りの黒い人物であり、くわえてメリヤス長官も本意ではないながらも加担していることなどが分かった。ニコデムが静かに暗殺計画を実行するか迷っている時に、グロヴァッツから文があった。ひどく同情され、励まされもした友人との話のあと、ニコデムは大義名分を得られたことにひどく安堵した自分に気付いた。

・ロイドLV50 …… 70歳ほど。ニコデムに雇われているダークエルフ。フリドランを取りまとめる<沈黙の五家>が傍に置きたくなるほど実力のある密偵&暗殺者。雇用額に破格の額を提示しているが、雇った者たちがみな満足する実力の持ち主。ジョーラのことも知っているが、他国に仕官するつもりはない。ニコデムからはゼロのことも聞いているが、資料集めは滞りなくできたこともあり、問題なく対処できると踏んでいる。黒竜の魔鉱石を混ぜた短剣、アプカルル製のスティレット、傷口の治りが悪く、威力上昇と魔力の消耗を抑止する魔法武器ヒタムを所持している。ジアストでレイダンと共闘していたが、ダークエルフとの戦い方を知るアインハードに破れ、敗走した。

・カンデルLV44 …… 70歳ほど。ニコデムに雇われているダークエルフ。ロイドとコンビを組み、様々な裏の仕事をしてきた。

・コストカLV41 …… 魔導士。グロヴァッツの私兵。傭兵と攻略者をする傍ら、代理決闘や魔法決闘でも稼いでいた男。とある貴族に雇われ、ミンスキー城内の魔法決闘に出場したが、鴉の情報収集により敗北。貴族から散々痛めつけられた末、幸い去勢はされなかったが不能になり、恨みを抱いた。そんな折にグロヴァッツがコストカを拾った。貴族を粛清してくれたこともあり、伯爵に忠実な部下となる。

・ヴィット …… 27歳。白竜教神父。儀典官の叔父ナルトヴィチ(48歳)が鴉によって粛清されたことにより、ナルトヴィチ家は母娘を残し離散。娘とは恋人だったこともあり、ヴィットはかつてないほど傷心した。母親はそんな彼を見かね、秘密裏に大義を遂行するすべてを忘れるひと時を与えた。周囲には隠しているが、実はグロヴァッツとナドルニの息子。


・マルトハス・メッド・イル・ドラクルLv28 …… 62歳。バウナーの叔父。ドラクル公爵家の当主であり、パトリック王の治世では「メイデンの三翼」として執政ならびに軍師として活躍していた。近頃はバウナーの地位の不安定さを懸念して、白い嘴の鴉の仕事を手伝うように指示した。この近年のバウナーへのあからさま扱いの変化に伴い、ドラクル公は感情的になることが多くなり、精神的に不安定に。この間、セリーナをたびたび呼び出すように。セティシア戦ではオルフェの山賊と手を組み、奸計を企てた。計画は成功したが、このことがバウナーと公の運命を分かつことになる。

・ユレック・レヒラーLV46 …… ドラクル公の従騎士。レヒラ―家はドラクル家の忠臣であり、セリーナは妹にあたる。盲信するドラクル公や敬意を隠さない妹とは違い、ユレックはバウナーその人に関しては市井感情と同様、複雑なものがある。

■英雄セルギウス …… アマリア神話の英雄の1人。清貧の勇士というあだ名があり、英雄譚はあっても己の名誉は拒んだ人物。ドラクルは謙遜するバウナーをまるで彼のようだと評した。

■セルトハーレス山 …… アマリアとオルフェを隔てるゲラルト山脈にある山。魔物が再現なく出現する魔物降誕区域リスポーン・エリアの1つ。山の南部はオルフェ、北部はアマリアが下山してくる魔物の討伐を適宜行っている。オルフェの魔物討伐の風景は6章参照。

■山の剣 …… ゲラルト山脈に根城を構える山賊団。オルフェの山賊団だが、アマリアの兵士も何名か所属している。ドラクル公がバウナーを戦いの立役者にするために利用した。彼らとの戦いは本編7章にて。

※セリーナ・レヒラーLV41 …… 30歳。従騎士ユレックの妹であり、ドラクル守護団の副団長。ドラクル公とは愛人関係。現在は妊娠中につき、団を離れ、ドラクル公の屋敷の1つで妊活をしながらときどき団の訓練を見ている。


※イレナ・モルドゥカラ・イル・メイデン …… アマリアの第二王女。<白銀衆>という私兵を持っている。最近メンバーが交代した。好奇心が強く、鍛錬にも興味があり、バウナーとの狩猟や訓練も率先して参加した。その際、同伴することの多かった副党首のレイダンを気にかけるようになり、党首になった暁には恋愛相手の候補に入れてもいいと嬉々として話をした。

※カリデン・ラウデュラ …… 56歳。白竜教の司祭。ナドルニ総督司教から信頼を置かれている「ナドルニ衆」の1人。混乱を避けるためナドルニ衆が反バウナー派であるとは周囲に明言していないが、鳶はダークエルフを用いて知っていた。

・イウォマ・ナドルニ …… 58歳。白竜教の総督司教。グロヴァッツとの間に隠し子がいる。昨今の腐敗した信徒たちを改心させたい思惑があり、その代表であるアラニス派の追放および改心もしくは司祭の地位を剥奪したいと考えている。バウナーについても先の王の寵愛や数々の武功により表面上は黙認しているが、「禁忌人」であることにより要人ではないという評価があり、地位を辞去し、王城を去ってくれればよいと考える。クリスティアンのことは相手にしていないが、のろまであるという評価を下していた前王と違って行動が早いことは評価している。


・ゾフィア・ヴイチックLV63 …… 28歳。黒髪で、切れ長の黒目の冷徹そうな女性。「黒の黎明」の党首。アマリアの武家ヴイチック家の三女で槍使い。果敢かつ苛烈な女傑として恐れられている。双子の男娼を抱え、子供の頃に魔物の襲撃で父親を亡くした過去がある。

・ジスロ・モスコウィッツLV61 …… <緑の黎明>の党首。弁舌鋭く、皮肉屋の男性。レイピアを使わせたら右に出る者はいない。有数の魔法剣の使い手でもあり、根本的なレイピアの威力不足はジスロに関しては当てはまらない。また、聖浄魔法も扱える。

・リシテア・ムロズLV62 …… <銀の黎明>の党首。稀代の火魔導士だが、弓も扱え、メイスでの近接戦闘も一流。

※カン・オルリックLV20 …… 王室の教師の1人。主に歴史を扱う。父親は先王パトリックたちの教師をしていたため、親子二代に渡り王室の教師役を賜ることになった。

・ノストロ・レッサーラLV62 …… <青の黎明>の党首。黒髪を撫でつけた凛然とした男性。代々王城守備をしてきたレッサーラ家の当主でもあり、ノストロの代でも同様の役割を担っている。

・マリシア・ノヴァークLV60 …… 40歳。<白の黎明>の党首。灰色の目に金髪。編んだ髪にウィンプル(白頭巾)を被った女性。聖浄魔法と神聖魔法の達人。《邪を討つ聖矛アイオレイサル》を使え、《払暁の鋭剣ドーン・レイピア》を使える光剣使いでもある。

※アリーゴド …… 35歳。バウナーの元従者で現在は馬番。愛称ゴドー。ジャガイモのような丸顔をしている。貧民街で殺されかかっていたのをバウナーが助けた。バウナーが七騎士になってからは従者ではなくなったが、バウナー付きの馬番として忠実に仕える。レイダンたちは執行から逃れたバウナーがあてにする一人として彼の小屋に行ったが、宝剣と武具があり、馬がおらず、既に逃亡した後だった。アリーゴドらしき人物が王都を出るのを目撃したが、レイダンは確認しなかった。


■ニルハナン …… アマリアの都市の1つ。セティシアでの戦いの後、レイダンたちが駐在していた都市。

■ジアスト …… アマリアのしがない村の1つ。ウィプサニアとガラヤたちが一時的に逗留していた。

・ガラヤLV42 …… 58歳。ウィプサニアのお付き。レイズナーという偽名でレイダン宛の文を出している。冷静沈着で実力者でもあるが、ウィプサニアのお転婆とわがままに日々振り回されながらも世話を焼いている。剣の達人で革職人としても腕があり、なによりエルフよりも移り気な人族に反してウィプサニアのことを長年一心に想ってくれているため、レイダンのことは認めている。

・ウィプサニア・ファブリツィウスLV23 …… 42歳。エルフ国フリドランは<沈黙の五家>ファブリツィウス家の娘。緑がかった金髪に、緑目。恋人に人族であるレイダンがいて、近年はこの恋の成就のためにわがままを押し通している。その成果は出て、レイダンが捕らえられるという事態には見舞われたが、辛くも乗り切った。レイダンとはヴァーヴェルで出会った。

※ニールスレイ・ファブリツィウスLV45 …… 62歳。<沈黙の五家>ファブリツィウス家分家の当主。年の離れた妹ウィプサニアが人族の男に夢中になっていると聞き、最悪追放も見当していた。が、革職人の家の出であるのにくわえて<金の黎明>副党首であり、国を捨て婿入りも考えているという話を聞くと彼の決意と熱意、そして人間性を試すことを検討しだした。

※マンダインLV40 …… マンダイン一派の首領。フーゴ・デュパロンナおよび大剣闘士付きの私兵。山賊出身の荒くれ者で、猛省しているのを見、山賊にはもったいない実力の持ち主だったため登用することにしたが、フーゴは素行の改善に苦労した。やがてフーゴの安心、アインハードの安堵とは裏腹にジアストに尖兵として出された際には軍から離れた開放感とともに久々の強奪(強奪はするなと言われた)だとして浮かれて暴れた末、レイダンたちに粛清された。

■ラウレアトス家 …… 分家ファブリツィウス旗下の忠臣の1つ。セティシアでの戦いにおいて、「過去にレイダン・ミミットから恩を受けたことがあり、返礼をする」という名目で、助勢した。ラウレアストス家は忠臣家の中では忠臣となった家の中ではもっとも新しくかつもっとも小さな家であり、アマリアはよく知らぬだろうということでセティシアでの助勢において名が使われた。

※エリシオン・デンツヴェンティLV41 …… 若いエルフ将軍。分家ファブリツィウス家旗下の家の息子。長い間、呪いにより虚弱体質だったが、解呪されると戦士としての頭角を露わにした。要因として、女王バシリスクの肉とシェリヴスの熊胆の劇薬を飲んで生命を維持していたことによる心身の強化であるとガラヤの口から語られた。

・グスタフ・イル・アイブリンガーLV45 …… 大剣闘士の副官兼参謀。旧家アインブリンガー家の次男坊。ジアストでの戦いではレイダンとロイドにより死の淵に立たされたが、ゼリンダによって回復した。

・フーゴ・デュパロンナLV68 …… <七星の大剣>は大剣闘士ウォーリアーの隊長。大柄でこげ茶の短髪に灰目。ガウスの村出身で、アインハードとは幼馴染。がさつだが頼れる大将系の大男。大剣使い。

・アインハード・イル・ジギスムントLV67 …… <七星の大剣>は剣聖セイバーの隊長。暗い茶髪の少し流した髪に褐色目。真面目な好青年風で、フーゴと同じくガウスの村出身であり幼馴染でもある。また、教養がなかなか板につかないフーゴとは違い、養子入りしたジギスムント家の上流貴族としての教育の成果がしっかり出ている1人でもあり、平民出だとして蔑む貴族は少ない。

・ザロモ・イェーガーLV66 …… 30歳。<七影魔導連>は魔聖マギの隊長。茶髪に暗褐色目。口が悪く、平民の集まりである七星をこき下ろしているが、なんだかんだ面倒を見ていることがある。イェーガー伯爵の息子。魔法は四大属性を幅広く扱え、魔導賢人ソーサレスのウルスラと双璧を為すオルフェを代表する魔導士とされる。

・ゼリンダ・ハイドンLV60 …… <七影魔導連>は聖職官セイントの隊長。補助魔法、結界魔法の達人。基本的に支援にまわるが、《邪を討つ聖矛》と《払暁の鋭剣》も扱えるため近接戦闘および遊撃に転じることもできる。親戚にダークエルフと結婚した男がいる。

※ニクソン …… 8年前のトルスクでの戦いにより討ち死にした剣聖の副官。

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ホムンクルス異世界竜統記録 ~異世界にホムンクルスとして転生したけど人間として生きてます @uoi0505

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