【KAC202110】 ラビリンスアタック!!
海星めりい
ラビリンスアタック!!
「どうしよう、完全に迷った……」
私――
私が今居る場所は広大な地下迷宮と呼ぶのにふさわしい場所――ダンジョンと言っても良いかもしれません。
準備もしていたし、油断したつもりもなかったのですが、私はこのダンジョンをどこかで軽んじていたのかもしれません。
(いや、頑張るんだ、私! 自分の力だけで絶対に突破できるはず!)
弱気になりそうになる心に自ら活を入れて再び歩き出します。
そう意気込んでこの迷宮を進んでいくところまではよかったのですが――
(ここさっきも来たよね……?)
私は同じ場所に戻ってきてしまいました。
今居るこの場所には特徴的な壁に見覚えがあるので間違いありません。
ただ、このダンジョンは基本的に同じような柱や壁が幾重にも並んでいるので、視覚的に惑わされやすいのです。
現に私も〝キチンと歩いていたつもりだった〟のにこうして戻ってきています。
悔しいやら、情けないやらで、すぐにでもこの場から離れたい感情に駆られますが、焦ってもいいことはありません。ここはステイです。
ひとまず、深呼吸をしました。肩の力も抜いてリラックスを意識します。
ふう、こんなものでしょうか。
一旦、落ち着いたところでマップを見ましょう。
現在位置は――おそらくこのあたりのはずです。
マップと今居る場所を確認し、目的地も確認します。
ふむふむ……ルートも頭にたたき込みました。
いざ、行かん! と意気込んで歩き続けたのですが、
(あれー!? またここー!?)
十数分後、私は見たことのある場所に戻ってきてしまいました。
途中で方向を変えたときに目印を見失ったのが痛かったようです。
うーん、ここまで迷うとさすがにつらくなってきました。
「こうなれば、最終手段を使うべきなのでしょうか……?」
一応、最終手段はあるにはあるのですが、それは私としては使いたくない手段です。
もっとピンチならば使うのもやぶさかではないのですが……現状、死の危険はありません。
ならば、もう少し自分の力だけで進んでみるのもいいはずです。
迷ったことを含め、こういうのが糧となり、良い経験になるのだと思います。
(自身のレベルアップ、スキルアップ目指をして!!)
そう、心に誓ってさらに歩いて行くこと十数分。
ここに来て景色が変わります。
いえ、今までと似通った場所ではあるのですが、初めての道、初めての空間と言っていいでしょう。
(おお? これはいけてるんじゃないですか?)
私がそう思いながら足早に進んでいくとどうやら目的地付近にたどり着けたようです。
そのまま、あたりを見回します。
すると、目的地の近くに佇む
「いたー!?」
**************************
「いたー!?」
「『いたー!?』じゃないわよ!? アンタどんだけ遅刻してんのよ!? 三十分以上過ぎてるじゃない!?」
「だってー、こんなに広いと思ってなかったんだもん……」
「だから言ったじゃない。
と、ここまで言ったところで、楓の友人で待ち合わせ相手だった
いかに大阪・梅田駅地下(周辺)が広く、複雑といってもここは公共の施設だ。
つまり、
「案内板があったはずでしょ? 見なかったの? それに駅員さんに聞いてもよかったじゃない」
「き、聞くのは恥ずかしかったんだもん。それにダンジョンはね、自分の力でゴールしてこそ意味があるんだよ!」
「いや、ダンジョンじゃないし。ここ駅だし、それで待たされたの私だし」
「………………」
目をキョロキョロさせつつ無言になる楓を見て、舞以はため息を一つ吐くとこれ以上の追求を止めた。
「まあ、もういいわ。いつまでも怒っていてもしょうがないし、行きましょうか」
「うん! じゃ行こう!」
と、楓が元気よく歩き出したのだが――
「そっちじゃない!? この方向音痴――また迷う気か!」
「あれー? おっかしなー?」
【KAC202110】 ラビリンスアタック!! 海星めりい @raiki
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