第39話 覚悟
手紙。どんな手紙なのか、まずいい事ではないだろう。だが開かなければ何も進まない。そう思い手紙に手をかけ、開いた。
『君のところのエルフは預かった。返してほしければ、王国の城へ30日後に来い。それまでに来なければエルフはこの世にいないだろう』
「──────何故」
最初に表れたのは困惑でもない怒りだった。きっと過去の浮気された自分と合わせてしまっているからだろう。
まるでその時、いやそれ以上に怒りが収まらなかった。頭へ血流が昇るのが意識的にわかってしまう。
そして同時に黒い感情が身体全体を覆っていく。
何故連れて行かれたのか、何故場所がわかったのか、そんなことはどうでもよかった。
「シャルロット、お前の運命は決まった」
それから時間が経つごとに怒りが冷酷に変わっていく。もう景色は暗くなっていた。そんな中、俺はシャルロット王国へと足を動かした。
今から城へ乗り込むわけではない。情報を集めるためだ。この戦いは内部をしらなくてはいけない。
そういうとある場所に向かった。ある場所というのは飲み屋街だ。飲み屋街はあるゆる情報が埋もれている。観光目的や愚痴、お酒による影響で様々な話が聞けるだろう。
ちなみに異世界は15歳からお酒が飲め、夜遅くまで歩いていてもなんの問題もなく、規制は緩い。
そして俺は店に入った。
「いらっしゃい」
そう言われるとカウンター席へと足を運ぶ。カウンター席座ると同時に新たな客が現れ、俺の隣に座った。
「君も一人なのね、こんなお姉さんと隣であなたも嬉しいでしょ」
さっきまで飲んでいたのだろうか?顔は整っている女性であるが酒のにおいを感じた。
「ははっ。まぁそうですね」
本当は店員に話しかけようとも思ったのだが、この女性の方が国の情報を持っているかもしれない。
「ここらの飲み屋街に普段から居られるのですか?」
「毎日いるわよ、じゃないと仕事のリフレッシュできないわ。愚痴を言ったり、聞いたりするのが最高なのよぉ」
「一人でいつも?」
「知らない人と話すのは新鮮なのよ。色んな考えが聞けるしねぇ」
「それはわざわざ。俺と話したところで何も得られないですよ」
「今回は状況が違うわよ。色んな人見に来たからわかるけど、何か最近あったわね」
女性は見透かした様子で喋った。
この女性もシャルロット王と似た部分があるように感じる。きっとこの人は想像できない人生を送っているのだろう。
「大したことはないですよ」
「まぁうーん。話したくないならいいのだけど」
そう言うと女性は酒を一気に飲み干す。
「聞きたいことがあるんですがいいですか?」
「あら。しょうがないわねぇ」
「オランジェット王国の内部事情について知りたいんです。オランジェットの王には側近は何人いるのか、その実力はどの程度なのかなど……」
具体的にいいすぎただろうか。
もう少し良い話の進め方はあっただろうが、この女性は勘が鋭いから結局的にバレるだろう。
「何故そんなこと聞きたいのと言いたいけど今回はやめておきましょう。変に聞くのもまずそうだわ。まぁ結論から言うとそのような話は飲み屋街だと聞かないわね」
「……そうですか」
「貴族なら知ってる人も多いでしょうね。王国も貴族の兵士を借りることも多いことだし」
「……わかりました、ありがとうございます。逆に悩ましてることとかありますか?相談にのりますよ」
「あら。小さいぼうやに聞いて欲しいことなんてないけど特別に聞いてもらおうかしら?」
女性は少し笑みを浮かべながら話し始めた。
このまま話し続ければ他の様々な情報が得られるのかもしれない。
「ここから少し離れた辺境の地に住んでいたのだけど、そこの領主が酷くてね。税金は増やす、労働量が酷いなど批判が激しかったんだよ。最近、ようやく領主が変わったって聞いてね。まぁその領主がどんなやつなんかわかんないんだけど、そしてその地域の社交界が行われるらしいのさ」
「その社交界となんの関係が?」
「まぁ私の仕事柄でね。案内役をするのさ。その際にどんなやつなのか確認しようと思ってるの」
──社交界、使えるかもしれないな
「浮気されたのか?」と浮気現場をみて嘆く俺の成り上がり〜信用していた彼女に裏切られた俺は異世界と現実世界を行き来し最強に至る〜 雪のふむ @yukinofuru
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