第38話 覚醒の予兆
アリーヌ視点
旅館で一息つき、今日一日のことについて考え込んだ。
部屋は別部屋である。
私は結局何がしたいのだろうか。
オランジェット調査のために出向いているが、これは表向きの話だ。
村長は遠野を倒せ、命令に応じなければ村から追い出すと私に命じた。本当は調査よりもこっちが目的なのだと思う。
だけど何故、助けてくれた人間に対して倒す必要があるのだろうか、私はずっと考えていた。
これはエルフの村を襲う人間達に怒りを覚えたからなんだろうとずっと思っていた。
だけど、同じ人間でもエルフ達を助けてくれた恩人に対してそこまでする必要があるのだろうか。
もしかしたら他に理由があるのではないかと考えていた。
しかし、いくら考えたとしても考察にすぎない。
結果的に遠野さんを倒さなければ、村には帰れない。
「私はどうすれば……」
そう言い窓から空を見上げると星が多数に広がっており、その景色は私の現状との対を表しているように感じた。
「空の景色なんて、まじまじと見たの久しぶりだ……」
遠野さんと出会い私は少し変わったんだと思う。
移動中の最初は村のことしか考えていなかった。だけど遠野さんと話す中で少し気持ちが楽になった部分があった。
しかしそろそろ私は決断しなければいけないときが迫っている。
「……外でも出て出ようかな」
本当は現実逃避をしたいだけ、そう心の奥ではわかっていた。
決断から逃げる、外に出るというのもそのきっかけを探しているだけだ。
でもそれは言わない、いや言えないのだろう。
そして、旅館から出て、景色が一望できる場所まで歩いていると───
突然、体に力が入らなくなり、意識が遠のいていく。
これはなんだ……?
「少し眠っていてもらうぜ」
そう声が聴こえ理解した。
ああ……そうか。
オランジェット王国の手下か……。
私はついてないな──────────いやお似合いか
◇
朝、俺はようやくその事件に気づいた。
───アリーヌがいないことに
最初はただ出かけているだけなんだとそう思っていた。しかし時が過ぎていくごとにその考えが否定されていく。
そしてしばらく経ち、ようやく進展が現れた。
シャルロット王に呼ばれて聞かされた。
──アリーヌが連れていかれたことを
その後もう一つ手紙をシャルロット王から渡された。
それはオランジェット王から俺に向けての手紙だったと言う。
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