第37話
「少し怪しかった……。何が怪しかったんでしょうか?」
「ユグドラシルは結局空想にしかすぎない。それを大事な会談のときにするでしょうか? 今思えば、変にユグドラシルに執着をもっていた気がします」
ユグドラシルに執着、エルフへの襲撃……。
エルフへの襲撃はユグドラシルに関係がある、そうシャルロット王は言いたいのだろうか。
だがなんのために、そこまでする何かがあったとしか。
その瞬間、電撃を走るように脳裏に浮かんだ。
いや───まさか──
「オランジェット王はユグドラシルがまだ現代に存在している……そう考えたのかもしれない……」
「……遠野さん賢いですね。私もそう結びつきました」
そう言うとアリーヌは口を開いた。
「そんなこと……。いやあり得ない……ユグドラシルはおとぎ話だと言うのが通説のはず。それにユグドラシルがあるとするなら、とうに見つかっているでしょう?」
ユグドラシルは空も通るほどの巨大樹。
それが存在するとなれば見つからないはずもない。
「確かに通説はそうです。でも可能性はあると思います」
あと1ピースハマれば──わかるかもしれない。
◇オランジェット王視点
「エルフへの襲撃が失敗しました。約20人が帰還したとのことです。約70名が二人に、残りの10人はいきなり表れたシャルロット王の部下によってやられました」
「二人に70人? 何をやっているんだ……ふざけているんじゃないのか?」
「すみません。そしてそのうちの一人は無名な人間だったそうです。そして途中からほとんどその男によってやられました」
「……人間だと? 本当にいっているのか?」
そこまでの実力者で無名。
そんなことはあり得ない、実力者は基本的に知られているはずだ。
それに無名な実力者がたまたまエルフ村の近くにいるなど出来すぎた話である。
無名な実力者の裏切り……計画を知っていたのか?
いやバレるはずがない。
なら何故……。
その瞬間、頭の中で一つのワードがひらめいた。
「……勇者。勇者ならあり得ない話でもない」
古代からある周期で出現し続けているとされている伝説の人間。
たしか前回の出現が約100年前だったはず。
勇者の周期は約100年から200年、今舞い降りたとしてもおかしい話ではない。
実力的に考えれば、出現してまだ多少しか経過していないか……。
考えていく中で勇者、そうとしか考えられなくなっていった。
勇者だろうが、なんだろうが計画の邪魔はさせない。
勇者なら計画が崩れる可能性もあるだろう。
そのため勇者だと仮定して考えていく。
相手が勇者だった場合、勇者の剣がキーとなる。
勇者の剣。
勇者が現れれば必然的に現れるとされている勇者の剣、しかしその勇者の剣がある場所を知るものはいない。
ならどうするか?
基本的にわれら王国が探す、または勇者が冒険をする最中に見つけ出すかの二択だ。
勇者の剣はあまりにも強い。勇者の剣は勇者特有の魔法を引き出し、勇者をサポートするとされている。
これを阻止しなければならない。
これに関していえば余裕だ。
われら王国が先に探しだす。そうすれば間違いなく見つかるだろう。
100人部下に探すように命令すれば必ず見つけ出す。
そしてもう一つの問題点が勇者の成長速度だ。
だがこれに関しても余裕だ。
「部下に伝えよ。極秘任務だ。」
そういうと命令を伝えた。
「あ、それと一時的に税金の量も増やせ」
「これ以上、税金を増やせば国民の怒りがさらに加速することに──」
「わかっている。だからこそ一時的なのだよ」
◇
あれからシャルロット王国との会談が終わり、帰る最中。
「もう少し話したい話があったんだが、変にかわされてしまった」
「しかし、だいぶ話が進んで話せて正解でしたね」
「そうですね。とりあえず近くの旅館で一泊しますか?」
「そうしましょう」
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