第36話
「昨日ぶりですね」
まるでここに来るとわかっていたような顔で喋る女性は昨日、助けてくれた兎族である。
淡々と門で出会いアリーヌも驚いていた。
とは言え、ここは獣族の国であるから昨日とは違って、いたとしても不思議なことではない。
「昨日はありがとうございました。それとは別に聞きたいのですが、出会ったのは偶然なのでしょうか? それとも何らかしらの理由が……」
アリーヌは偶然と思うよりも何か理由がある、そうふんでいる様子である。
そして俺も偶然ではないだろうと思っている。
「やはりそう思っていらっしゃいましたか、その通り。まぁ理由はまず王と会ってからでいいでしょうか?」
「……王とですか?」
思わず声が出てしまう。
「そうでしょう。あってみれば色々と解決すると思います」
王と会えばわかる、そういうことだろうか?
昨日言った言葉の中にも王と言っていた。
やはり昨日と関係した話だろうか。
「いきなりすぎて────」
「私達の国ではいきなりなことだらけでごさいます、行きましょう。シャルロット王がお待ちです」
そう言うと背中を向けて歩きだした。
ついてこいという意味だろうな。
そう思った俺は一つだけ口を開いた。
「話は変わりますが、あなたのお名前を聞いてもいいですか?」
「アンヌ・ ド ・オリヴィエよ」
◇
「王様、連れてきました。望み通りに」
「アンヌ、良くやりました」
そう言うとこちらを向き、口を開いた。
獣族の王。
そう言われた時、どんな人なのだろうか?
力が強い人、それが脳裏に浮かんだが実際は違っていた。
肌は白く、顔立ちも良く、尻尾もふわふわしているその姿は予想とは違っていた。
「色々とあなた達も聞きたいことがあるでしょうけど、それは理解してるつもり。まぁまずは名前を聞かせていただいてもいいかしら?」
笑みを浮かべながら王としての気品を感じる言葉遣い。
そして感じる威圧。今まであったきた誰よりも強い、そう深く思いながら口を開いた。
「僕は遠野尊です」
そして、少し間を置いて──
「私はアリーヌです」
「遠野尊さんとアリーヌさんね。わかったわ、私の名前はシャルロット・シュヴァリエよ。しかし遠野尊……珍しい名前」
一瞬、僕の名前がこの世界では少しかわっている名前だからだろうか、シャルロット王の顔が変わったような気もしたが気のせいだろう。
「まぁ本題に入りましょうか、あなた達がこちらに来た理由はオランジェット王国とシャルロット王国を繋ぐ門を使いたかったからでしょう?」
「はい、そうです……。何故わかったんですか?」
何故だろうか?
この人に嘘は通じない──そう感じるぐらい見抜かせられた、雰囲気が漂う。
まぁ嘘はつかないし、つくメリットもないけど。
「アンヌから聞いた話で推測したのよ。あなた達が近くのオランジェット王国の門を通りたかった。けど兵士の邪魔が入ったから、もしかしたら近くの門では警戒されているかもしれない。そう思ったからこちらにやってきた、そうでしょ」
「驚きました、何故そこまでわかっていらっしゃるのに私達との話し合いを希望したのですか?」
「エルフとオランジェット王国の関係性についてよ。国民は一部を除いて気づいていないでしょうが、悪化している現状は私の耳に入ってきている」
王だからこそ情報元が多いのだろう。
逆に言うとシャルロット王でも全てはわかっておられないということはオランジェット王国がどれだけ隠そうとしているか手にとってわかる。
「どのような状況なのか、いつ頃なのか。知る必要はあると思ってね」
「わかりました、私からお話させてもらいます」
そう言うとアリーヌは全てを話した。
◇
「なるほど……。完全に潰しにきているといった感じね」
全てを話したアリーヌはどこか寂しい顔をしていた。
「やはりあなたたちと今、交流したことは間違いではなかったようです」
何故か納得した様子のシャルロット王。
「それはどういう意味でしょうか?」
そう言うと、シャルロット王は喋りだした
「2ヶ月に一回、各国の王が集まって会談をするときがあるの」
各国の王が話し合うという。
ちなみにオランジェット王が王になったのは最近の話だ。
「オランジェット王はそこで少し違和感を感じることを言ってきたんです。その内容はユグドラシルについてだった」
ユグドラシル……この話は移動中にアリーヌから聞いたことがあるな
ユグドラシルは巨大樹のことである。
考えられないほど高く、雲を通り抜けるほどの木だ。
そしてその巨大樹はある伝説があり、ユグドラシルで一定期間生活すれば何らかしらの能力が得られるという。
エルフの長寿、老けない理由、魔法も、もともとあった話ではなくユグドラシルの効力で手に入ったものだとされている。
これはエルフでは有名な話で知らない人はいないんだそうだ。
しかしこれらの話はおとぎ話だとされているのが通説だ。
「その時はなんとも思っていなかったわ……でも今思えば、少し怪しかった」
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