終章 コメディになるのは、未熟であるからこそ
謎は謎である事が、美味しさの秘訣
――副会長の好きな相手は誰だったんだ?
と言うような疑問が越谷高校に揺蕩ったのも当然の流れだろう。
学祭直後は、
「結局、副会長はフラれたって事か?」
「違う違う。古門と、文芸部部長がくっつくためにお膳立てを整えた……ということなんじゃないのか?」
「じゃあ、あの青田ってのは?」
「あれも……協力者だったんだろうな。副会長と組んで」
「結局、学祭に向けてのイベントだろ」
という意見が体勢を占めていた。
学祭が終わってすぐに始まる生徒会選挙。それにつれて引退する現・生徒会を惜しむ声。そういった話題も綯い交ぜになって、結局は「副会長の想い人」については、あやふやなまま、消えて行く――
そうなるかに思われたのだが……
「どうもね。今回ばかりは
と、御瑠川天奈と親しいとされているテニス部部長・鈴木律子が、そんな風に話し始めたらしい。
「連絡会の“あれ”は、私の早とちりかも知れないんだけどね。今回は、私も状況がよくわかってないのさ。それだけに早とちりって事は、今度ばかりは無いと思うよ」
では、彼女は何を知ったのか?
「御瑠川な。どうも“可愛い”なんて言われたらしいんだよ。直接は聞いてないよ。そういうことがあったらしい……ああ、そうだね。言われ慣れてはいるんだろうさ。『美人』ならね。ただ“可愛い”っていうのは――私から言うのもなんだけど、可愛くは無いよね。これは山形とかに聞いて貰っても良いけど。トータルでどうか? っていう話なんだ」
そこまで話したところで律子は結論づけた。
「とにかく、御瑠川は今まで経験したことが無い扱われ方したんじゃないのかって話だよ。それが恋だの愛だのに結びつくかは……何せ御瑠川のことだからね。とにかく、何かに夢中と言うか――こだわってるのは確かな話だよ」
こうして、そんな風に“こだわられた”男の災厄はこれより始まった。
それは果たしてラブロマンスなのか。傍から見れば、やはりコメディでしかないのか。
とにかく誰も「副会長の想い人」を探ろうとはしなくなったことは確かだ。
その謎を探っても何ら得るところはないし、下手をすると、ただただ脱力するだけの惚気を聞かせられるだけ。
つまり――
――謎は謎である事が、美味しさの秘訣なのである。
終わり
副会長を射止めたのは誰だ? 司弐紘 @gnoinori
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