近世文明レベルのファンタジーの世界観を舞台に、婚約破棄された伯爵令嬢スイーレが王国の内部で起こっている動乱とそれを引き起こしている黒幕を探っていきます。
しかし特徴的なのは主人公のスイーレが現場に出向くのではなく、彼女自身が趣味で運営している推理小説出版社の作家たちから断片的な情報を集めることで状況を見定めて、解決に導いていく、いわゆる安楽椅子探偵のようなスタイルで話が進んでいくことでしょうか。
彼女のもとに個性的な作家たちが現れて、彼らの情報をもとに不自然な点を分析し、裏で起こっている出来事を理論立てて推測していく様は、「机上の空論」ですが事態を動かす力を発揮して、展開を転がしていきます。
それはやがて王国内の戦争につながっていき……。
政治と戦争が絡んだスケールの大きなミステリとして楽しむことができると思います。
伯爵令嬢のラナススイーレ(スイーレ)は推理小説好きが高じてとうとう自分で推理小説専門レーベル「ラティオ」を主宰し、成功を収めています。スイーレの好む推理小説は、話の整合性がとれていることが第一条件。ところでスイーレは貴族の後嗣のクーガーと婚約させられていますが、その婚約が突然王家により破棄されてしまいました。クーガーが浮気したわけではなく、スイーレのせいでもない。なのになぜ王家が婚約を破棄させたのか?こんな整合性のない話があっていいものかと、スイーレは作家の伝手を使ってこの謎の解明に乗り出します。果たして王家の思惑は、そして国内外で何が起こっているのか、徐々に全貌が見えてくることでしょう。