信じるもの(拓真side)
その次の日。土曜日。俺は布団の中から出なかった。
体調が悪いわけじゃない。
昨日彩花に振られたこと。そして、光星に告られたこと。まさか1日に振られ、告られるということを考えたことはない。その2つのことについて、頭を悩ませていた。
好きな人が他の人とキスしてるのを見るのも精神的にキツかったし、男子の親友からキスされたことも心の中で気持ちの整理がつかなかった。
「どういうことだよ……?」
俺が子供なのだろうか。世の中ではこういうことが普通なのか?
光星のことはもちろん友達として好きだ。だが、恋愛対象にはもちろん入らない、はず……。
同性の俺を好きになるって、どういうことだ?
なぁ、分からないことが多すぎて。
だれか、助けてくれよ。
彩花に振られて、精神ズタボロなのに、
この状況を俺だけで解決しなければならないのか?
あ、あいつに聞けば……!
「もしもし」
「拓真ぁ?なにぃ……?」
「小村さん……?なんか、キャラ違わない?」
「んー?休日はこんなもんよ〜?」
「あ、そ」
最近LINEを交換した小村さんに連絡してみた。ほんとは嫌だったんだけど。
嫌いな訳ではない。ただ、前に好かれていた事があった。本人はバレていることに気づいていないだろう。だが、結構バレバレで、よく友達に絡まれた。
『よぉ〜、お前のこと、小村さんが好きだってよぉ?』
『ただの噂だろ?』
いつもそう言って切り抜けては来た。だって、ここで何かいったら小村さんが傷つくな、とは思っていたから。
でも、彼女こそが彩花を奪った、いや、彩花が好きになった人だ。
好きな人が好きになった人だ。応援はしたい。だが、昨日からやはりその辺の気持ちの切り替えが出来ない。
その間沈黙していたようで、小村さんがしびれを切らしたように尋ねてきた。
「ん?……おーい、拓真ぁ?どしたのー?」
「いや、あのさ……もし、意外な人から、意外なこと言われたらどうする……?小村さんだったら……?」
1番聞きたかったことを聞く。
「なにそれ?意外なことってなに?」
「自分にとって、意外なこと……?」
「んー、ん?」
やっぱり急にこんなこと言われても分かんねぇか。そう思い、電話を切ることにした。
「やっぱごめ」
「それが」
すると、間髪入れずに返答が帰ってきた。
「その、意外な人が、信じられる人なら、その意外なことも信じてみればいいんじゃないの?」
さっきののほほんとした彼女の雰囲気がガラッと真逆に変わる。
あぁ、彼女のこういうところ、好きだな。
「信じる、か……」
電話を切った後、1人呟いた言葉に、思わず嘲笑した。
大嫌いな元好きな人の元カノにコクられました のか @LIPLIPYuziroFan
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