☆番外編☆

元カノに振られ、告白される(拓真side)

「矢萩さんと付き合えたの?……おめでと」


 光星は、俺の親友。幼馴染みではないけど、入学式で、佐藤、鈴木と隣同士で座ったとき仲良くなった。趣味も、性格も馬が合う、今では竹馬の友だ。あのときも、俺と彩花が両思いになって喜んでくれた。


 でも、今は。好きな人が目の前で、他の人とキスしてやがる。


「………好き」


小村さんが、彩花と、キスしてる。俺が奪ったと思われた彩花の唇は、あっという間に上書きされてしまった。


「……くそ、」


小さく呟き、小村さんと彩花、2人で泣いている教室を去った。


 俺も、泣きじゃくっていた。







 トイレに駆け込み、個室に乱暴に入る。閉めたドアに背をつくと、大人げなくわんわん泣いた。目の前で好きな人をとられ、キスされ、俺の気持ちを、踏みにじられた。でも、彩花が、小村さんという大切な、大好きな人と幸せなゴールを手に入れた瞬間というのは、嬉しさもあった。


 本当は、おめでとうと言わなきゃいけなかったのに。言えない。今は。少し、この想いに浸らせてくれ……。


 暗いトイレで1人泣いてたら寂しくなってきた。でも、この泣き腫れた顔を晒して廊下を歩くのも嫌。だれも見てやいないだろうけど。


 不意に、ポケットに入っていたスマホを手に取る。本当は学校内では起動しちゃダメなんだけど、誰に連絡するでもなく、画面を見つめる。


「……あ」


 こういう時は、あいつに、会いたい、かな。


 LINEを開いて、文面を打つ。









「おーい、来たよ?」


トイレのドアをドンドン叩いてくる、親友。急いで駆けつけてくれたみたいで、少し息が上がっているのが聞こえる。


 ガチャ……


 ドアを開ける。泣き疲れ、赤く染まった俺の頬を見て、少し撫でてくる光星。そんな彼も、顔を赤らめている。


「お、れ……フラれた……」


やっと安心できて、枯渇したはずの涙が溢れてくる。


「……そっか」


光星は理由を聞かずに、俺を抱き締めてくれた。俺より背が高くて、筋肉質な体。


「う……ぅ、おれ、苦し……」


「うん」


「あやか、が……すき、おれ」


「知ってるよ」


自分でもなに言ってるのか、分からなくなってくるけど。光星は何もかも知っているかのように、頭をなでてくれる。


 かと思ったら、急に俺の肩を抱いて、壁に詰め寄る。壁に俺の背中が付き、顔をあげると、真剣な眼差しをする光星が俺を見下ろす。手首を上で掴まれ、身動きが取れない。


「こ、こうせい?」


「……やっと俺のこと見てくれた」


「え?」


そして、くしゃっと目を細めて微笑む光星。


「俺のになってよ」


「……は?」


「拓真は、ずっと矢萩さんのことばっか見てた。俺が拓真を見ているのは知ってた?」


「え、え?」


「ずっと、好きだったよ……」


「こうせ……んむっ!」


そして、唇を奪われた。









 あ、食われる……










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