料理も洗濯も
それからというもの、僕は料理を自分ですることを学んだ。いろいろなサイトを見てレシピを頭に叩き込み、電気圧力鍋を買った。今は二代目の鍋と楽しい夕食の時間を過ごしている。これがまたなんでもできるのでとても便利で健康状態も良い。
40歳を過ぎても新入社員には椎名さんは30歳で部長補佐なんてすごいですねとか言われてしまう。いやいや、僕は40歳なんだけどと内心思いながらも苦笑いをしている。それほどまでに頼りないように見えてしまうのだろうか。
仕事が終わり、買い物をしてマンションへ戻ると洗濯機の中から乾燥が終了している。掃除ロボットはいつもの場所にあってフロアもきれいなものだ。
だがどこまでいっても、一人の部屋はどこか物悲しく僕を包括する。
この部屋で一人で50歳になり、いつもと同じように会社へ行くのだろう。便利な電化製品に囲まれて女なしの人生を終えることが僕の生きる道なのかもしれないと思うと遠いところを見てしまう。
一人で焼いて食べるステーキをマロに切り分ける。
しかし、いつもなら喜んで食べるはずのマロは今日も食べてくれない。
甘えて膝の上に座っているが食欲はないように見える。今週土曜には病院へ行こうなと話しかけて一人でステーキを食べる。肉屋では薄いステーキを三枚買って二千円払った。残りの肉は冷凍した。
「なあ、マロ。次は一緒に食べような」
僕はなぜだか涙声になっていて肉の味はよくわからない。
了
ソロ男子 樹 亜希 (いつき あき) @takoyan
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