探し物 探す理由
仲仁へび(旧:離久)
第1話
教室の窓を覗き込む。
すると視線の先で、一人の女子生徒が教室の中をうろうろしていた。
彼女とは、昼間に喧嘩したばっかりだから声をかけずらい。
さっきから行ったり来たりしている彼女は、どうやら大切なお守りをなくしたらしい。
それで、授業が終わったのに一時間以上も自分の教室で探しまわってる。
いいかげん諦めればいいのに。
でも、そんな彼女を一時間も見守ってた私も結構どうなんだろう。
無駄の極みだよね。
最初は、すぐに声をかけようと思ったんだよ。
でも、喋ろうと思った時に運悪く校内放送がかかちゃってさ。
こういうのって一度挫けると、後が大変じゃない。
それで、ずるずるこんな感じ。
はぁ、困ったな。
手伝う事も、帰る事もできずにその場で石造の様になっていた私に、彼女の呟きが届いた。
今まで無言だったのに、さすがに疲れたのかもしれない。
「いい加減、見つかってってば」
イライラしてるようだ。
はい、話しかけるきっかけ一つ消滅。
「まったく。今日は嫌な事ばっか起こるんだから」
つづいてのコンボ。
きっかけまたしても消滅。
現実が私に厳しい。
声に出さずため息をついていると、ちょっとしょげた感じの声が聞こえてくる。
「大事なお守りなのにな。二人でおそろいにしたやつなのに」
その時、私は「あっ」といいかけて慌てて口をふさいだ。
それって、心当たりがある。
初詣、彼女と一緒に行ったときお揃いの買ったんだ。
ううん、そうだとは限らない。別の人と一緒に買ったやつなのかも。
けど「これじゃあ、仲直りしずらいじゃん。喧嘩してお守り失くした人が頭下げたって説得力ないじゃん」とか言ってる。
ああもう。
ほんっとうに私ってバカ。
大きく息を吸って、吐き出す。
簡単な事なのにね。
たった一言、一緒に探すよって言うだけなのに。
何やってたんだろう。
そして――。
意を決した私は、教室の扉を開けた。
探し物 探す理由 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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