第4話 さようなら

失うということは誰の人生にもあるのだろう。

二度と戻らない永遠の別れ。

わかってはいるけれど、思い出の中に漂い生きるしかない時もある。


私は1つ1つ、薄れさせていく。時間をかけて薄めていく。

忘れられない事は薄めていくしかないんじゃないかなと思う。


だけど、薄れていく寂しさもある。

木漏れ日の中に見つけた萩の花みたいに。

光に揺れる可愛らしい花を遠くから見守るように。

忘れたくなくて目をつぶり、息を止める。

まぶたの向こうの暖かい光を感じながら。


……………。

寂しくて 苦しい。

…………。

今も未だ和の全てが愛おしい。


閉じたまぶたの隙間から涙が溢れようと出口を探す。



人はどうやって乗り越えるのだろう。この喪失という暗い海をどう泳いでどこにたどり着くのだろう。


深く吸った息を一度止めて、ハーっと吐き出す。

ほんとうだ。深呼吸は確かに落ち着く。




夏が来るな。


ふと未来を思った。




夏が来る前にここを去ろう。

私もここから出て行こう。


和との思い出のポストカードを壁からペリっとはがした。

 さようなら

と書いて、ポストに投函する。


私は私に告げる。

終わりがあるということを。


終わりがあるという幸せもあるのだろう。



誰にも知らせず。

終わりを告げよう。

時が過ぎて、

ただ暖かな思い出となりますように。

 〔さようなら〕




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モノクローム モリナガ チヨコ @furari-b

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