純白の疾駆者
心動柊
1LAP 出会い
僕は今から自殺しに行く。
生きることに疲れたんだ、両親は僕が小さいころに離婚していて母親に引き取られたがその母親が男を作り、家庭から逃げていった。
母親から月に一度、仕送りが来るが生活費にしては足りないので必死にバイトして補っている。そうした生活を続けているから、友達や仲のいい人が作れないから孤独で辛い生活を送ってきた。
そしてとうとう耐えきれなくなった僕は自殺する事にした。
首を吊るための縄を持ち、夜に家を出て、近くの山へと向かう。
夜中なので周りは静かで特に何かあるわけではなかった、山に入るまでは。
山に入っていくと車のエンジン音やスキール音などの大きな音が聞こえてくる、実は意外とこうゆう音は嫌いじゃない。
急な坂道を登り、一つずつカーブを抜けていく。
大分上まで登ったとき僕はある光景に目を奪われる。
灰色の車が爆音と煙をあげながら車体を斜めに傾けカーブに入っていき、かなりの迫力で駆け抜けていった。
「これがドリフトか…。」
自分が思ってたよりかなり迫力があった。昔、車にはまってた頃があって、バイトの休憩時間や空いてる時間にそういう動画を見ていた。
もう少し上へと昇っていくと、どんどん車の台数が増えていく。そして登るのに意外と体力使ったので駐車場で休むことにした。
その間ずっと走り屋達や車を見ていた、みんな好きなことをやっていて少し羨ましく思う。
ただひたすら夢中に走り屋たちを見ていたら後ろから聞き覚えのある声がした。
「あれ?
後ろを振り向くと一人の女性が立っていた。…誰だ?
見たことはあるがどうも思い出せない。
少し悩んでいると彼女が名乗った。
「えー覚えてないの?私だよ!
ああ、思い出した。昔、たまに遊びに誘ってきたやつだ。まぁ、忙しかったから断ってたんだけど。
相変わらず外見のスペックが高いな、顔もスタイルも。
僕とは真逆かな…
「あ、こんにちわ」
「いや今はこんばんだよ」
「ここで何してるの?」と聞かれた。
「それはこっちが聞きたい」
「それもそうだね、てか峠にいて何してるのはないか」
僕は聞いた。
「走り屋なの?」
「ここは走り屋しかいないよ、走りに来たんじゃないの?」
「元々別の…、いやなんでもない」
さすがにクラスメイトに自殺しに来たなんて言えない。
「ああー、自殺しに来たんでしょ~」
ギクッ、思わず同様した。てかなぜばれたし。
「なんで…」
「手に縄を持ってるし、何より目が死んでるように見える、なんとなく分かるよ。」
少し間が入って彼女はこう言った。
「君がつらいのは、全部じゃないけど知ってる。よく働いてるの見るもん、君のこと調べてみたけど生活が苦しんだよね?」
「うん…まぁそうだよ」
「…少し私と話をしよ?そこから自殺するか決めて欲しいんだ」
「…わかった」
この時はまだ自分の自殺する決意は揺らぐことはない、そう思っていた。
正直言って話すこと自体無駄だと思っていたけど、この人となら話してもいいかなってなぜかそう思えた。
「あそこの自販機のそばで休もうか」
「うん」
自販機の近くのベンチに座り、ゆっくりと腰を降ろす。
「こういうとこにいるの、意外でしょう?」
「意外だな、君がそうゆうところにいるのは」
「たまに言われるよ、でもここはガラの悪い奴とかはあまり来ないから。」
「ナンパとか、されないの?」
「え?ああ、たまにバカがするけど地元の人やこの業界の人はしないよ」
「…?それってどうゆう…」
「あ!ちょっときて!」
そう言うと僕の腕を引っ張りガードレールのそばに来た。
「どうした、いきなり…」
「もうすぐ来るよ。」
何が来るのか聞こうとした時、甲高いスキール音とブローオフバルブが響いてくる。
だんだんその音が近づいて来たと思ったその時、今まで登って来たのとは迫力もスピードも桁違いのドリフトで青い車がカーブに突っ込んで来た、ほかのギャラリーたちが一斉に大声をあげる。
僕は声をあげることはなかったが、ビリビリと体が
隣にいる
ていうかこの子よく見るとかわいいな、タイプ。
そしてその青い車が過ぎていったあとに続々と車が来る、その中にはさっき登ってる途中に見た灰色の車もいた。その集団は明らかに他の走り屋とは違う雰囲気だった。
そして僕の中に何故か「走りたい」という気持ちが少しずつ覚醒する。
そして病のような希死観念が徐々に消えゆく…
「すごい…な……」
「すごいでしょ、あれうちのチームなの」
「え!?」
本日二回目のびっくりだ。
「
「僕の心を覗いたような的を射た発言だな」
「だいたい分かるよ、こういう時はね」
「僕もああいう走りをしてみたいよ」
何故か間を入れてこう言った。
「じゃあさ、二つの条件付きで叶えてあげる」
「うん、どんな条件でも飲むよ」
「一つはうちのチームに住み込みで働く事」
個人的にありがたい、家賃とかギリギリだったから。
「うん」
「もう一つは…」
また間を入れて言った。
「私と付き合って」
想像してたのとは全く違うの出てきた、。
そしてその告白に対し、僕は
「いいよ。けど条件としてじゃなくて、普通に付き合おう。僕も君のことが好きだから」
少し、いやかなり恥ずかしかったが条件上付き合う形になるのは嫌なんで言った。
「ありがとう。好きになってくれて」
僕は「これからもよろしくね」と言った。
こうして僕の
純白の疾駆者 心動柊 @Another13
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