ゴッドノーズ

硝子先生

第1話 明日まであと何時?

 夜、夕飯を食べて、風呂に入って、歯を磨いて、床に就く

ベッドの隣の小机には時計があって秒針がうるさく僕を追いかける

静かな部屋の中では、時計の刻む小さな音が耳元で飛び回る虫の羽音のように聞こえる。それが、今日に限っては特別五月蠅く感じた。そのせいでどれだけ待っても

この体は、瞳は眠ろうとしない。むしろ高校に初登校する前日の夜のように心臓が心の不安と、高揚感を全身の隅々まで伝えている。血の巡りが、耳の感覚でわかる

目を閉じると、俺の体の中の血の流れがわかるどんどん早くなる。それが早くなるにつれて、耳がどんどん敏感になってゆく、時計の秒針の音がどんどん大きくなって俺の鼓膜を襲う、音が大きくなって、頭が痛い心臓がパンクするほど血液の流れが速い

加速する、俺の体が。そして発熱する。

「うるさい!」

俺が、喉を振るわせても何も変わらない世界のすべてが俺の言の葉を聞き入れない

目を開けると時計は歪んでいた

「今何時だよ」

息が浅く、うまく発音できなかったが

その、自らの声が頭の中で反響してボリュームを増す。

それが、耐え難い騒音で俺は耳をふさいで布団に隠れたそれでも鳴りやまず

頭が、もう何がうるさくて自分が何に追い詰められているのかもわからなくなって

それでも、その酷い状況が悪化していくのだけはわかってこれからも悪化していくのが見えて。そして、それが無限に続く気がして全身が痛くて暑くて苦しくてうるさくて、何も考えられなくなった時気づいた

「おかしい」

当たり前のことを、発音したが確かにおかしくさっきまで聞こえたものが聞こえない

さっきまで感じていたものが何も感じられない


身体が、急に風にさらされて寝巻ではどうにも寒いらしく体が縮んだ

目を開けると、そこに小机も時計も俺の部屋もない

仰向けになると、俺の部屋とは全く違う景色が広がっていた

「どこだよ、ここ」

鳥の声が聞こえて、薄霧がみえてたくさんの木が怪しい影を作っていた。

明らかに見たこともない、生物が暮らすそんな風景が広がっていた。

体の不調はどうにか治ったらしく。立ち上がると体が不調でもないのに動かない

脳が、指示を出して居らす体は指示待ちのまま停止していた

立ち上がって大きな倒木の上に立つ者の姿が異常であったからである。

全身が白く青白いオーラをまとった俺の知る言葉で表すなら神獣 白虎である。

俺は、そいつの背中を見て口からこぼれ出た言葉に驚愕した。

「怖いな、」

そう呟いて、俺は見知らぬ世界の中心に立つ森の奥から俺を異世界に出迎えるような心地よくそれでいて危険をはらんだ風が俺のほほをかすめた

「俺は異世界に転生したんだ」


「皆さんどうもこんにちは、この物語は僕のわがままで異世界に転生させたこの男、風間 慎也君の物語である。」

頭が悪くなりそうなほど、一面、花で覆われた空間。そこにある一つの古びた小屋に

閉じ込められてしまった男はその寝室の小汚い椅子に堂々と腰掛けながらシミのついた天井に話しかかる。

「なになに、いろいろと質問はあるだろうがなぜ彼を異世界に転生させたか 

それについては、簡単だ僕をここから解き放ってほしいのさ。いろいろとやりすぎてしまって。というかほとんど僕のせいなんだけど、とりあえず僕が見た未来では

今のこの世界の可能性では僕がここから出られる可能性がどう転んでもゼロだ

だから、異世界人の可能性に欠けてみようと思った。」

男の身なりは、この空間ではとても異質で部屋の汚さと彼の身なりは天と地ほどの差があった。

男は、最上級の魔法のローブを纏っていたその髪は白髪だが光の当たり具合やよく目なんかを凝らすと細かく虹色に光って見えたりもする。肌は青白いが不思議と死にそうという男には見えない。そも、死んでいるのか生きているのかあやふやなそんな存在だ。

「それと、何故彼を選んだか話せば長くなるが最善を尽くした結果のテキトウと思ってほしい。力を制限された僕では一苦労だったのだから感謝してほしい。えっ!?どうしてかって?じぶんのためだろ?だっていやいや感謝すべきだよ。僕のおかげで

楽しい、異世界冒険譚が見れるんだから。」

男は、窓の外を悲しそうな目で眺めた男の目にはつまらないほどきれいで美しい

命の花々が咲き誇っていた。


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ゴッドノーズ 硝子先生 @072600

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