私は殺人鬼を育てます
kaNoka
序章
灯もついていない部屋で、彼は窓の外を見つめながら立っていた。
白く清潔そうなシャツは汚れ、女性と見間違うような綺麗な顔には表情がない。
青白い光が彼を照らしている姿は、息を呑むほどに美しかったのを今も覚えている。
「…すごい」
口から出た言葉は、あまりにもこの場には不釣り合いの言葉だった。
私の言葉に彼は驚くことなく、ゆっくりと振り返り口元を緩ませた。
「いらっしゃい、先生」
黒く艶のある髪を耳にかけながらベッドへ腰を下ろす姿はどこか妖艶で、私よりも10歳ほど違う少年にゾクッとしてしまった。
私は今まで生きてきて、これほど美しいと思った瞬間はなかった。
美しい少年、床に転がる男女2人、赤く染まった白いシャツ。
私は一目で落ちてしまった。
こちらを見て微笑む彼に、私はゆっくりと手を伸ばす。
彼は差し出された手を見つめるだけで握り返すことも、振り解くこともしない。
ただじっと見つめるだけ。
差し出した手前、下げることもできない手に冷たい何かが触れた。
その瞬間、チクッとした痛みが走った。
見ると、刃渡り12㎝ほどのナイフが手のひらに当てられていた。
私を見つめる彼の表情は先程とは全く違い、笑顔などないとても冷たいものだった。
私はこの瞬間を忘れることはできないだろう。
きっと何があっても抜け出せない、そう感じた。
私は殺人鬼を育てます kaNoka @kanoka591
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