孤独の都市伝説【KAC20219】
ひより那
孤独の都市伝説
ブーン──
パソコンのファンの音だろうか、いつまで経っても慣れない音が気持ち悪い。時折聞こえる道路を走る車の音、近所の人が家の前で喋る声が聞こえてくる。
目線はディスプレイ。無機質な蒼い壁紙を設定した32インチの横長の画面。開かれたブラウザにはカクヨムのサイトが映り、文字が羅列されている。
「うーん……。今度のテーマは『ソロ◯◯』かぁ」と冷めた珈琲を一口すする。いつしからブラックが美味しいと感じるようになったのか、伝わってくる苦味が心地よい。
この小説の主人公である
テントを張ってノートパソコンを広げると夜風に当たりながら小説を書く。月のほんのりとした光が体を照らし、ノートパソコンの画面が発する光が顔を照らす。
一息ついて空を見上げれば真っ黒な空に多くの星空が煌めき、いつのまにか魅入られて小説を書く手も止まる。
「うーん、ソロ◯◯でソロキャンなんてありきたりだよなぁ」
冷凍庫からメロンパン形のアイスクリームを頬張りブラックコーヒーを一口飲む。脳に糖分が補給され冷たい口当たりが頭をしゃっきりさせる。
さぁて……リビングから泣き叫ぶ小型犬。秋穂が飼っているマルチーズなのだが兎に角吠える。人が通るたびに吠えるのだ。そんな犬をなだめに席を立つ。
「はいはい、大丈夫ですよ」……あまりにもしつこく吠える姿に「いい加減にしなさい」と声を荒げおやつを与えて静かにさせる。
一息ついて、ディスプレイの前に座ると動画投稿サイトのアイコンをクリック。最近ハマっている
「さーて、小説の続きを書いちゃわないと。ソロ◯◯、ソロ◯◯。何が良いかなぁ」
天井を見上げてそのままベッドに倒れ込む。「何に……」……zzz
「はぁ! もうこんな時間」。慌ててウォーキングウェアに身を包み家の回りをあるき始める。一本の大銀杏を見上げては「この銀杏をモデルに小説を書いたなぁ」と懐古しモチベーションを上げて「よし」っと家に戻るのが秋穂の日課。
「ソロ◯◯……って、そろそろ夕飯作らないと」
冷蔵庫から豆腐とわかめを取り出し、冷凍庫からは鶏もも肉を取り出す。キャベツに玉ねぎに人参に……「今日の夕食は唐揚げ定食にしよう」と意気込んで作り始める。
唐揚げはお気に入りのノンフライヤーで油分をカット。いつかは誰かに食べさせてあげたいなぁなんて妄想をしながらキャベツをカットするのだ。
『いい加減に小説を書きなさいー。書き終えちゃえば土日はゆっくり出来るわよー』
秋穂の耳に幻聴か神のお告げか声が聞こえた。「そうだ!」と意気揚々にパソコンの前に座り直すが、今日の映画は何がやるのかなーとテレビの電源をつけるとなにやら怪しい都市伝説。
こんな一日を過ごすソロノベリスト。
信じるか信じないかはあなた次第!
孤独の都市伝説【KAC20219】 ひより那 @irohas1116
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