KAC20219 2作目のソロ◯◯
霧野
ソロモン同盟
孤独を愛し、
これはソロ活動を極めんとする乙女たちの、魂の復活の物語である。
「……って感じでさ。ソロモン同盟、組まない?」
「意味わかんない。ハルカ、あんたまた思いつきだけで物言ってるでしょ」
「うん」
「いや抗えよ。もうちょっと言い訳しようよ」
「えー、だって。ソロモンって言葉を思いついちゃったんだもん」
「ナツ、いいじゃん。ソロモン同盟」
「っていうか、同盟組んじゃったら、それもうソロじゃないじゃん」
「オウ! 痛烈な盲点デース」
「エセ外人やめろ。そのしたり顔もなんかイラっとするわ」
「アハ〜ン?」
「キーボードに爆破ボタン付いてねえかな」
「まあまあ、ナツキ。じゃあ、こうしたら? 普段どおり各々でソロ活動して、その様子を発表しあうの」
「ソロ活動を発表?」
「そう。ほら、一人焼肉とか、一人カラオケとか、よく言うじゃん? ソロキャンプとかさ……」
「ほうほう。さすがはアキ、思いつきだけのハルカとはひと味違うな」
「それの面白さがわからん」
「………」
「ハルカ、あんた………それはないわー。さすがのアキも怒るって」
「……うん。ちょっと画面を殴りそうになった」
「わあ、ごめーん」
モニターの向こうで、ハルカが手を合わせて頭を下げた。画面から見切れている。
「もういいよ。ハルカだもん、しょうがない」
画面に戻ってきたハルカは、顔が真っ赤だ。おそらく頭を下げている間、息も止めていたのだろう。
ナツキは毒舌、冷静なアキ、そしてハルカはちょっとアホの子だ。
「えっと、そうだな…… 今でこそ単独行動も当たり前になりつつあるけどさ、まだ世間には「ぼっち」とかってバカにしたり一人を哀れんだりする風潮も残ってるじゃない?」
「だね。いまだに肩身狭いときある。あたし、会社とかで言わないようにしてるもん。なんか、同情されたりするし」
「あたしも結構言われるかな〜。彼氏は? とか、はやく結婚しろとかさ」
「『えー、すごおい。私、そういうのムリー』とかってマウントとられたりね」
「え、あれってマウントだったの? あたし、普通に『えへへ、すごいでしょ〜』って思ってた」
「あんたはそれでいい」
「ハルカのそういうとこ、けっこう好きだわ」
「あざーっす」
「でさ、そういうのムリーって言った後に、得意げに彼氏の話とかしだすんだよね」
「そうそう」
「あー、なるほど。心当たりあるわ……」
「そんでやたらと彼氏の友達とか紹介したがらない? 合コンとかさぁ」
「善意なのかもしれないけど、ねえ……」
「あの、人を憐れむような目がイラッとくんだよね。カレシ欲しけりゃ自分で狩りにいくっつーの」
ナツキの鼻息が荒い。きっと何かあったのだろう。
「もし彼氏がいたって、ソロ活動はするしね」
「そうそう。それとこれとは別って話よ。ソロ活動を認めてくれない男なんて、こっちがムリだわ」
「ま、カレシなんてずっと居ないんですけどね」
「ハハハハハ……」
乾いた笑いが響く。
「……だからね、『私は好きでやってます、これが楽しいんです』って、胸張って言いたくない? こんな人生の楽しみ方もあるんです、って」
「でもそういうのって、今でもみんなやってない?SNSとかにあげたりとか」
「うん。そこで『ソロモン同盟』よ。さっきハルカが言ったじゃん? 『ソロ活動を極めんとする乙女たちの、魂の復活』って」
「思いつきでな」
「はい」
「個々で発表もいいけど、発信力としてちょっと弱い。数で勝負よ。徒党を組んでソロ活動の認識を変え、ソロ活動者への偏見や迫害を無くすのよ。ソロモンに自由を! ソロ活動の権利を! 我々は一人だが、一人じゃない!」
「ほえ〜」
ハルカがパチパチと拍手をしているが、多分よくわかってないんだろうな。あの顔は………と、ナツキは思った。そして、アキの企画力に感心した。ハルカのアホ発言から一瞬にしてあんな内容を思いつくなんて、すごい。後付け力というか、こじつけ力というか……
「まずは、『独り
「どこまでも名前ありきか」
「ソロモン同盟って響きがいいからね」
「え、それって、思いついたあたしが天才ってこと?」
「それは違う」
「我々はソロ活動を充実させるために、あえて同盟する。そして、ソロ活動を広く推進するのだー!」
こうしてぐだぐだで始まったソロモン同盟だったが、同じように感じていたソロモンは案外多かったらしく、あっという間にその数を増やし巨大組織へと発展してゆくことを彼女たちはまだ知らない。
そしてそう遠くない未来、彼女たちはそのメンバーの中からそれぞれ生涯の伴侶を得るのだが……それもまた、別の話。
ソロモン乙女たちの活躍は、これからである。
KAC20219 2作目のソロ◯◯ 霧野 @kirino
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