10年間の片思い

龍川嵐

10年間ずっと想っていた恋

10年前の私が公園で転んでいて、膝に怪我をしてしまった。


号泣で泣いていた。


その時、たまたま通っていた彼が心配そうに見た。


彼が速やかにポケットの中から絆創膏を取り出して、怪我をしている膝に貼っていた。


グスンと泣いていた私がありがとうと言った。


またポケットからハンカチを取り出して、頬に濡れていた涙を拭いた。


彼にハンカチで拭いてくれた私が


『あなたってドラえもんなの?』


『いやいや笑。まあ困っている人のために一応用意しておくと母に言われたからね!』


と言いながら優しく涙を拭いてあげた。


向こうから大きな声で母に呼ばれた。


『母に呼ばれたので行くね。ハンカチは返さなくてもいいよ。』


と言い残してここから去って行った。


『あ…』


言いそびれたまま彼からもらったハンカチをギューと握った。


助けてもらった彼に恋を落としてしまった。


助けてもらった以来、彼と会っていない。


~10年後~


私は高校生になった。


いつも通りに朝電車に乗った。


今日も相変わらずに渋滞している。


ギューギューと後ろに押されて、電車のドアの側に立っていた。


この日常は慣れているので平気だった。


いつものようにスマホを持って、InstangramやLINEなど確認した。


次の駅に到着した。


止まった電車から雪崩のように乗客が降りていく。


今日はギラギラと太陽が照らして、もわあと水蒸気が上がって暑い。


暑すぎて汗が出ていたので、ポケットからハンカチを取ろうと思ったら、後ろにぶつかられて、ハンカチを落としてしまった。


落としたハンカチを拾いたいが、雪崩に巻き込まれて、後ろへ戻るのが大変だった。


後ろから歩いてくる乗客を避けながら必死にハンカチを拾おうとした。


そしたら、知らない男性高校生がハンカチを拾ってくれた。


共にようやく雪崩が収まった。


拾ってくれた彼のところに行ってお礼を言った。


『拾ってくれてありがとうございます。』


『このハンカチはどこか見覚えがあるけど…』


『このハンカチは10年前、名前の知らない彼からもらったのよ。』


私の言った言葉にピクっと反応した。


『このハンカチは俺のだ。』


『え?もしかしたら助けてもらったのはあなた?』


『ああそうだ。10年前に転んで怪我をしてる彼女を助けたよ。』


想像もしなかった出会いになった。


この出会いができたのは運命なのだろう?


ドキドキと鼓動している胸に手で撫でて、ふーと深呼吸してから彼に伝えた。


『あのね。10年前に助けてもらってありがとう。名前は何?かと聞きたかったけど、向こうに行ってしまった。あの時からずっと彼のことを忘れなかった。』


『マジか。俺もあなたのことをずっと覚えている。また会いたいと思ったが、親の都合で引っ越してしまったので会えなくてごめん…。』


私は顔を横に振って


『ううん、大丈夫よ。あのね…あなたのこと好き!』


彼は照れを隠して、鼻の頭を掻きながら


『実は俺もだ!』


『本当!?』


嬉しくて彼を抱きしめた。朝から甘酸っぱいになってる。


他のサラリーマンがそれを見て、自分もラブラブしたくて嫉妬をしてる。


二人は手を繋いで岐路のところまで歩いて行った。

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10年間の片思い 龍川嵐 @takaccti

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