浮気症の私を許して

第17話

　その後も基本的に初カレ様は塩対応です。

　初カレ様には事故の後遺症の話や、それに伴い私には結婚願望が無い事を伝えてあります。

「私、こうやってまたＴさんの彼女になれただけで本当に生きててよかったって思うんです。

　離婚とか事故とか色々あったけれども、全部こうしてまたＴさんの彼女になれる為だったんだなって思うとなんでもどうでも良くなるんです。

　重いかもしれないけれども、

『どうせいつ死ぬかもわからないから、いつ死んでもいいや』から『Ｔさんに会いたいから明日も目が覚めますように』って思うようになれたんです。

　だけど、こんな身体だからずっと一緒にいるとした絶対迷惑かけちゃうし、子供を授かっても子供にさみしい思いをさせちゃうと思うんです。

　Ｔさんのお母さんだって健康で普通の女の子と結婚して欲しいって思うと思います。

　私は、Ｔさんの彼女にまたなれたってだけで本当にしあわせなので、もし他に好きな人が出来たり、結婚とか子供の事で悩んだりしたらハッキリ言って下さいね。」

　しかし、初カレ様は「そんな事言うなよ。」と、その時だけは真剣に本気で目を見て答えてくれました。

　でも相変わらず素っ気なくて塩対応。

　LINEもあまりしてくれないし。

　名前も読んでくれないし。

　しかも異動すれば女性から連絡先渡されたりしてるし。本人も「まあ、俺モテるからね。」と、シレッと言ってくるし。

　本当に公私ともに認めるモテるイケメンだし。

　それでも、ソファで寝てしまった時は、お姫様抱っこでベッドまで運んでくれたり。　　

　「明日お仕事だからそろそろ帰りたい」と、伝えると　

「え？帰さないよ？社長さんに連絡してよ。

『明日仕事休みます』むしろ『会社辞めます』って。」

「……Ｔさん。それは困ります。Ｔさんとまたこうやって会うための交通費の為に私は働くのです。」

「……わかったよ。」

と、渋々送ってくれました。

　やはり浮気症は根本的なものらしく、塩対応や放置が続くと、たまに今もさみしくて、一瞬心がグラつく事もあります。

　会えない恋人より、会える恋人。

　冷たい恋人より、優しくしてくれる相手。

　浮気はもちろんした方が悪いかもしれませんが、何かしら他に目を向けたりしなければならない事もあると思うんです。　

　百パーセント悪い事って、ないと思うんです。

　でも私は、お恥ずかしい話ですが、自分で右手の薬指の指輪を自分用に買いました。

　初カレ様はお仕事上、恐らくペアリング等は付けられないでしょうし、彼氏がいるとした公言しててもやはり寄ってくる人は寄ってくるのです。

　なので、煙のないところに火は立たないので、一ミクロンレベルでもフラグを立てないように自ら貞操帯ではありませんが、指輪を買いました。

　そして不思議な事に、初カレ様とは以前よりも逢う頻度も減ったし、初カレ様は相変わらず塩対応なのに、むしろどんどん初カレ様の事が大好きなってきてます。

　どんどん『大好き』が、更新されてゆくのです。

「Ｔさん。困りました。Ｔさんの事、冷めるどころか、どんどん大好きが更新されてきてます。

　もういつもＴさんの事で、頭がいっぱいなんです。」

「……俺の事で頭がいっぱいなの？」

「はい。頭、いっぱいです。」

「ふーん。じゃあ、そのままいっぱいにしときな。」

　……塩なの？デレなの？どっちなの？

　また、そうやってイケメンに胸キュンさせてきて！本当に大好き過ぎてズルい！

【浮気症の処方箋】

　いつも塩対応だけど、言葉じゃなくて行動でちゃんと愛を伝えてくれる事。

♡♡♡Fin♡♡♡