最強?違う、最強になりたい男だ。

@ho_6309

第1話

 生まれてからの数年間はなんて幸せだっただろうか。両親は俺を見てくれていたし、周りも俺に期待をしていた。


「この子のこの真っ赤な瞳。きっと多い魔力を持っていますよ!!将来が楽しみですね!!」


目の色が濃ければ濃いほど多いとされる魔力。俺の瞳は誰よりも赤かった。

それだけに周りからの期待も半端ではなかった。


5歳の頃、弟が生まれた。初めて会った時は驚いた。弟の瞳は王族に生まれたというのに消えそうなほど薄い群青色だった。


「貴方‥。」

瞳を見るなり悲しそうな憐れむものを見るような目をするお母さん。


「この子は我が家の恥だ。生まれなかったことにして、地下で育てなさい。」

赤い瞳を暗くさせてお父さんは可哀想な弟を召使いに渡した。


可哀想な弟。

きっとこれからも王族としては扱われずに、平民以下の魔力量を蔑まれながら生きていくんだろう。



ーーーーーーーーーーー

僕が10才になったある日、何処からか叱責の声が飛んできた。誰が叱られているんだろうか。


新しく来た新人が何かやらかした?

それとも庭師の息子が悪戯して怒られたのかな?


どうやらその声は地下から聞こえてきているようで、初めて降りる湿った階段を踏みしめながらゆっくり降りていった。


「お前は何故こうなることを分かっていながら毎度逃げようとするのだ!いい加減自分の立場を理解しろ!」


お前は外に出ればもっと酷い目に合う!

断言したようにそう叫ぶしわがれた男の声とムチの音が空間いっぱいに響き渡る。


男がこちらに歩いて来るのを感じて物陰に隠れると男は僕に気づかず地下の扉に鍵をかけてしまった。


さあ、どうしようか。扉に鍵をかけられてしまっては外に出れない。


まあ何をしてもあまり怒られたことはないからと地下を探索することにした。


突き当たりの扉を開くと中には弱々しく体を壁に預けている子どもがいた。


地下、子ども。

この2つでようやく分かった。

あの子は僕の弟かもしれない。


近寄ると幼い弱肌にムチが赤い糸を引いていた。

唇は沢山切れて血が出ていた。きっと泣き声をあげたら怒られるのだろう。


「ねえ、大丈夫?」

「、ぁ。だっ。ぃじょ。」


久々に使ったガサガサの声帯で何かを伝えようとしている。


「あ、あぁぁあう。」

なるほど、言葉を教わっていないのか幼児のような声を出して地べたを這いずりながらこちらに近寄ってくる。


可哀想な弟。まだ5歳だと言うのに痛めつけられ言葉も知らぬほど誰からも愛されなかったのだろう。


「愛してる。」

今までもこれからも誰からも言われないであろう言葉を吐き落として扉があくまで隣に座って一方的に喋り続けた。



扉が開けられたのは深夜の2時頃。

突然姿を消した僕を探し回って城内は大騒ぎだったらしい。


「もう二度と、あれに近づいてはならん。」

険しい顔をしたお父さんと、やっぱり悲しそうな顔をしたお母さん。


「でも、僕以外に誰があの子を愛してあげるの。二人はあの日以来、あの子に会いに行った?」


二人とも顔を見合わせると静かに近づいてきて僕を抱き締めた。


「お母さんもお父さんも貴方が心配だから言ってるのよ。」

「なんで、心配なの?」

「愛してるからよ。」

「優しいお前は弟を見捨てることはなかなか出来ないだろう。しかし、あの子を世に出すと家族みながつらい思いをするのだ。」


ー何故なら色の弱い瞳を持つ子は忌み子だからー






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