フラグデストロイヤーというパンチラインに釣られて読みました。
いやぁ、この手の(ヲタク系主人公の)物語って「虚構よりも現実が大事」とか、「虚構を一緒に愛してくれるパートナーを見つけよう」とか、結局は三次元の誰かと結ばれることを結末とするものがほとんどな印象なのですが、主人公が最後まで二次元に突っ走ってくれて爽快でした。そうそう、こういうのが読みたかったんです。
誰でもいい誰かと、何だっていい何かをしようという誘いには、男たちの桃野への「推し」が感じられませんね。推しっていうのは、そういうレベルの好意じゃないんですよ。
推しっていうのは、人生を削って、その色に染まって、供物を捧げて、その存在の前に平伏させていただくこと自体が「目的」であって、娯楽的生殖行為の「手段」じゃないんだああああ!!!(レビュー中に、殺る気スイッチが入ってしまいました。大変申し訳ございません。)
リア充どもよ、桃野の推し様を見よ。
会社員の主人公は、あるゲームキャラの大ファンだった。化粧もそのキャラのイメージカラーで、満員電車の中ではキャラの絵を見る。会社ではキャラの二次元小説のおかげでタイプが早いと評判で、お弁当のふりかけもキャラのもの。テニスに誘われても、飲みに誘われても、一人でキャラを堪能するために帰宅する。
しかし、満員電車の中でも、上司も、テニスに誘ってくれた相手も、飲みに誘ってきた相手も、まるで乙女ゲームの攻略対象並みで……。
ゲームのキャラに恋する主人公が、実は現実では――。
いつもの作者様の世界観とは違いますが、世界観や全体の構成や構造の面白さや、巧みさは、流石だと思いました。
面白かったです。
是非、御一読下さい。