今日も今日とて推しが尊い
伊崎夢玖
第1話
推し―それは一番愛しているモノ
推し―それは唯一のモノ
推しーそれは命の活力そのもの
私は日々推し事に勤しんでいる。
一日の出来事は大体次の通りである。
朝、六時起床。
それと共に私の推し事が始まる。
パソコンの電源を入れ、SNSを確認する。
自分が寝ている間に推しが何か発信しているかもしれないから。
推しの一言一句を見逃すことは許されない。
この確認作業だけで軽く三十分は費やされる。
しかし、朝は戦争である。
なぜなら、現実世界のお仕事に行かなければならない。
本当はゆっくり推し事をしていたいところだが、のんびりする時間は一切ない。
でも、推しの発信していることはチェックしたい。
動画も見たい。
ゲームもしたい。
全部やりたい。
なら、どうするか…。
”ながら”作業でこなしていくしかない。
もちろん、優先順位が高いのは推しの発信チェック。
その次に動画やゲームがやってくる。
そんなこんなしていると、あっという間に出勤の時間が来て、仕事へと向かう。
仕事の休憩になると、最初にやることは朝と変わらない。
でも、朝ほど時間はかからない。
なぜなら、推しも仕事をしていて、あまり発信していないから。
『あぁ…今頃仕事してるんだろうなぁ…』などと妄想するのも楽しい推し活の一つである。
仕事を終えて帰ってくると、まずパソコンを立ち上げる。
その間に、手洗いうがいと着替えを済ませる。
さすがに夜ばかりは少しだけ自分の時間を作る。
そうでないと、さすがにパンクしてしまいそうになるからだ。
ひと休みしてから、ご飯とお風呂も手早く済ませる。
のんびりしていると、推しからの発信がある。
『今から帰る』だったり、『今日のご飯は、コレ!』だったり…。
とるに足らないような短い言葉だが、それが嬉しい。
せっかくなので、自分からも返事を書く。
『気を付けて帰ってね』だったり、『おいしそうだなぁ』だったり…。
そんな短い言葉でも推しが不快に感じないか、ほかの推し活をしている人に迷惑をかけないような言葉になっているか、など様々なことを考える。
こんなこと、推し活を始めていなければ考えなかったようなことだ。
このほかにもある。
少しでも推し活に時間を割くために、やることに対して効率化を図るようになった。
前まではダラダラと適当にやっていたことも、今ではサクサクこなす努力をする。
少しでも効率よくできないと、自己嫌悪に陥るほどに…。
以前までの自分が見たら、正直驚くレベルである。
それほどに、推し活が私を大きく変えた。
推しは私のエネルギーだ。
推しがいなくなったら、きっと私は生きていけない。
そう思えることに、推しには感謝している。
そんな推しは普段甘い言葉を言ったりしない。
たまに感謝を言うことはあっても、甘い言葉は言わない。
ツン九割:デレ一割くらい。
デレ期の時に見せる甘さと言ったらたまらない。
『みんな大好き』
たった六文字。
このたった六文字に私たち推し活をしている面々は心を撃ち抜かれるのである。
はぁ…。
今日も推しが尊い。
それだけが私たちの生きる糧なのだ。
『推しよ、今日もありがとう』
そう感謝を心の中で言って、夢につく。
今日も今日とて推しが尊い 伊崎夢玖 @mkmk_69
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