生きる、ということは難しい。
それは人間を生かす本質でありながらも、人間を縛る呪い。
それがなければ生きていけないと感じながらも、どこかそこに囚われる自分を疎ましく思ってしまう。
だからこそ人間はより甘く優しい道へと歩を進め、いつの間にか本当に大切なものを手放してしまっている。自分のアイデンティティのために身を委ねた神も、今は牙をむき自らの亡骸を貪っている。
そんな世界に生まれ落ちた呪い。
彼らには「命」がない。人間の本質を失った者たち。
何にも囚われない彼らは、何者にでもなることができた。しかし彼らはその命なき姿を持って、どこまでも「人」であろうとする。
「命」の鼓動無き者の胸にも、確かに「心」という生きる証が刻まれている。
その姿を見た時、私たちが感じるのは人が持つ美しさ、そして力強さ。
これは彼らの胸で輝く「心」の物語。
美しい言葉の渦、その渦に飲まれれば、瞬く間に広がる息を呑む様な情景。特に戦闘描写は凄まじく、緊迫した雰囲気が読み手のこちらまで伝わってきます。
没頭の余り、物語の中の登場人物が息をつくと同時に私も息をついてしまう程でした。
また、物語が進むにつれ明らかになっていく真実がこれまた過酷な物で、それを知る度に心がキュッと痛くなりました。ですが、その真実を受け入れ、乗り越えていこうとする登場人物達の姿は本当に勇ましく、心も身体も傷だらけになりながらも立ち上がる彼らに賞賛を贈る他ありませんでした。
人間の『思い込み』という力について今一度考える事が出来るこの作品、どうぞ皆様も御一読下さいませ!