第6話 君との朝

「おはよう。」


その日から僕の朝は変わった。


僕は海に抱かれ揺られながら、オレンジの香りを聴き、1日を始める。


空港へ向かうタクシーの中で、運転手が


「鹿児島はどうでした?」


と聞いてきた。


「えぇ、不思議なことがありまして…」


「え?」


「普通のことのようで、普通ではないことが始まったんです。不思議です」


それ以上は何と言っていいのかわからなかった。


「そう、鹿児島はね、不思議なパワーを持っているんですよ。お兄さんはそのパワーをもらったんですな。桜島があるでしょ、あそこには…」


とりなすように続ける運転手の話を聞きながら、僕は桜島のやさしくつよい姿を見て、そうかもしれない、と本気で考えていた。


そして、今もどこかであの桜島を見ているであろう、君のことを想った。


今朝も君の


「おはよう。」


に陽が昇る。


君は僕の


「おはよう。」


に何を感じるのだろうか。

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君とオレンジ @Inady07

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