21回目の告白

足袋旅

カクヨムコン 7題目 21回

「好きです。僕と付き合ってもらえませんか」


 同学年他クラスの女子であるかえでさんを放課後に校舎裏へと呼び出し、想いを伝えた。

 イエスかノーか。彼女がなんと発するかを期待と願いを込めて祈りながら待つことしばし。

 

「なんで私なの?」


 返って来たのは答ではなく質問であり、彼女の声音には告白に対する戸惑いではなく、苛立ちが含まれているように感じた。


「…好きに、なったからだけど」


 なんと答えたものか考え、出てきたのは簡潔で当たり前の事。

 好きだから。彼女になって欲しくて。だから告白した。

 普通というか、彼氏彼女の関係になってる人たちは皆そうだろう。どうしてそんな当たり前を聞いてくるのか。


「本当に?」


「本当に」


「あのさぁ、秋人あきひと君。2学期に入ってから告白した人数って、私で何人目になるの」


 問いに対し、告白した人たちを思い出しながら指折り数え、「21人目だね」と答えた。

 多分合ってるはず。ちょっと多いからもっと増えたら間違えそう。

 そうなる前に彼女が出来たらいいんだけど、楓さんがなってくれないものか。


「私が知ってるより多かったのね」


「そうなんだ」


「そうなんだじゃないでしょ。秋人君が次々別の人に告白してるって噂になってるからね」


「えっマジで。それは恥ずかしいな」


「恥ずかしいって感情はあるんだ」


「あるよ、そりゃ。楓さんは僕をなんだと思ってるのさ」


「厚顔無恥なド腐れ野郎」


「酷い!それはあまりにも酷いよ」


「酷くないわよ。事実でしょ。まさか私も告白の対象にされるなんて想定外だったわ。本当に誰でもいいからって感じで告白してるのね」


「誤解だよ。僕はちゃんと好きになった相手に対して告白してるってば。楓さんのことだって本気で」


「本気?誰がそんなこと言われて信じるのよ。絶対嘘じゃない」


「信じてよ。僕はちゃんと楓さんのことが好きだって」


「じゃあ私のどこが好きか言ってみなさいよ」


「綺麗な顔は勿論の事、さっぱりとした性格で誰に対しても分け隔てなく接するところでしょ。あと頼られると文句を言いながらも手伝ってあげる姉御肌っぽいところとか、行事の実行委員に選ばれて活躍してる場面も格好いいなって思ったし、帰宅部だけど運動は好きで体育の授業で張り切ってるところとか、虫とおばけが怖くて案外可愛らしいところがあるっていうギャップも好きかな」


「あ、ありがと。自分で聞いといて恥ずかしくなるわね」


「信じてくれた?」


「えぇ、誰でもいいからじゃないっていうのは伝わったわ」


「当然だよ。じゃなきゃ告白なんてしないんだからさ」


「疑ったのは悪かったわよ。だけど流石に短い間隔で21回告白してるって聞いたら誰だって疑うでしょ」


「そういうものかな」


「そうよ。だって自分よりも好きな子に告白して断られたから、次点で気になる子に告白してるって思うじゃない」


「告白した順番はあっても、好きな順番なんてないよ。告白の順にしたって、ただ先に好きになった子がいたってだけでさ」


「それはそれでどうなのかしらね。普通は1人の人を長く想うものでしょう?」


「そうかもしれない。だけどさ、いつまでも執着してるって怖くない?」


「執着って言い方をされたらそれは嫌よ。だけど恋って、特に叶わぬ恋ってそういうものじゃない」


「叶わぬ恋より、叶う恋を探した方が僕は良いと思うんだけどな。だって魅力的な女子が多いんだもん」


「秋人君の考えはそうなのね。だけどね、女子のほとんどが秋人君は考え無しで無節操、とりあえず彼女が欲しいだけの猿って印象を持ってるけど、それに関してはどう思うかしら」


「うわー、聞きたくなかったよ、それ」


「これを機に自分の行動を見直しなさいよ。じゃあね、私もう帰るわ」


「ちょっと待って。まだ告白の答えを聞いてない」


「あんたね、今の流れで告白が成功するわけないでしょ。私は私だけを好きになってくれる人が好みだから」


「あっ、はい」


 立ち去る楓さんの後ろ姿を見送る。

 今回も駄目だった。

 21回目の失恋。

 でも悲しみやら心の痛みはない。もう慣れたものだ。

 家路へ着くためにバスの停留所へ向かう。

 その停留所で、僕は22回目の新たな恋を見つけた。

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21回目の告白 足袋旅 @nisannko

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