10年後のあなたへ

 あれから私はもうWEB サイトを見ることはなかなかできないでいる。

 岸谷祐三として、三年前にある文学賞の三次審査にまで残ったことから出版の決意をしてからは自費で出版した作品が本屋大賞にノミネートされた。

 当然そこでは大賞などとることはできなかったけれど、私は出版社から数年に一度ほど作品を書く依頼が来ることになった。だが、それも本業を凌駕するほどの収入があるわけではないので、予備校での仕事をやめはしない。

 私は37歳になった。

 けれど、書くことをやめてはいないし作家の先生でもない。

 モナコもこの世を去った。

 周りにいたへーちゃんさんなどの友達、仲間ももう、サイトにはいなくなってしまった。みんなどうしているのだろうか? まだ書いているのだろうかと思うが、自分から尋ねることはできないのでどうすることもできない。


 だが、Amazonの新刊のレビューには知っている名前があった。

 ちゃんと読んでくれているんだ。まだ私の作品を手に取る人がいると思うと心が熱くなった。ありがとう、みんな。筆友さんよ、永遠に。ありがとう。

 私は待っている、あなたたちの作品を今度は私が読む日が来ることを。皆さんの作品を読めるということが楽しみでならない。

 10年先も、20年先も本を読むことをやめはしない、たとえ仕事を変わることがあったとしても。本を読まない自分は自分ではないし、書かないという選択肢もない。



              了

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声がきこえる 樹 亜希 (いつき あき) @takoyan

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