カクヨム文芸倶楽部

来冬 邦子

四年間の感謝をこめて

 2017年 1月。生まれて初めて書いた長編小説を某新人賞コンテストに応募して華々しく散ったわたしは、その直後カクヨムに登録しました。三年もかけて夜ごとパソコンに向かい、ときに奇声を発しながら延々と書いてきた小説を、このままお蔵入りさせるに忍びず、なんとかして運の悪い誰かに読ませたい! あわよくば褒めて貰いたい! という無謀にして迷惑この上ない願望を胸に秘め、わたしはカクヨムの門を叩いたのでした。


 カクヨムはちょうどコンテストの真っ最中でした。恥ずかしげもなくエントリーしたのは言うまでもありません。当然はじめは絶海の孤島状態でした。通り過ぎる船の帆影さえ見えません。ところが、そのうちに奇特にも読んでくださる方がちらほらと現れ、少しずつ評価も頂きました。それはもう嬉しくて有り難くて夢のようで、もう入賞なんか頭から吹っ飛びました。一行でも読んで貰えたら感激で踊り出し、コメントまで頂いたら幸せで目がくらむ思いでした。


 やがてカクヨムのシステムが分かってきたところで他の方の作品を読ませていただくようになり、またまたビックリしました。世の中にはこんなに文才のある人たちが溢れていたのか。私のささやかな自信はたちまち風に散りました。ちょっとでも入賞するかもなんて自惚れていた自分が恥ずかしくなりました。たくさんの素晴らしい作品に触れることで自分のほんとうの実力を見極められたのは大きな収穫でした。


 それまでは小説を書いているなんて、自己顕示欲の暴走特急みたいで、恥ずかしくて誰にも言えず、自分は哀しい変わり者なんだと一人寂しく月を眺めてる日々でしたが、カクヨムに来てみたら、書くことを日常にしている変わり者たちが大勢でワッショイワッショイ小説を書いているではありませんか。カクヨムにいれば、わたしは変じゃない。いつでも「書くこと」を普通に話題に出来る。なんて楽しい場所なんだ!


 ここには「カクヨム文芸倶楽部クラブ」とでも呼びたいような和やかな雰囲気があります。


 カクヨムでは毎日のように出会いがありました。いただいたコメントが小説を書く励みとも、孤独感を癒やす支えともなりました。コメントのやりとりで友情を育む日々は、わたしにとって新しい世界でした。


 ですから、わたしの小説を読んでくださった方を「読者」なんて軽々しくお呼びしたくないのです。なんの得にもならないのに、貴重な時間と労力を費やしておそろしく拙い作品を読んでくださる方を「恩人」としか表現できません。謙遜とかじゃなく、ほんとうに心から有り難いんです。感謝しかありません。ほんとうにありがとうございます。心から尊敬しています。大好きです。


 そうした恩人の皆さんを、仲間なんて、なれなれしく呼んでいいのかなあ。

 何度かコメントでやり取りさせて頂いただけで、まるで対等みたいに仲間とか友だちとか(心の中では、マイファミリーと呼んでいたとしても)呼ばせていただくのはちょっと気後れするわたしです。友だちだと思っていたら知人に分類されてたりすることもあるじゃないですか。というのは冗談ですけれど、みんなが大好きだから仲間に入れてくださいませ。


 四年前のあの日、カクヨムに来て良かったと、いま心から思います。


 大好きとコメントに書く猫の恋


                        < 了 >

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