廃嫡王子!

白猫なお

第1話 廃嫡王子!

 俺、王子、廃嫡されました。


 事の起こりは王家主催の夜会の席だった。


 弟である母親違いの第二王子、ガブリエルが突然俺を断罪してきた。


「兄上! いや、チャックウイル・アンダーソン王子、貴方はペネロープ・ウラギリヤス侯爵令嬢という婚約者がありながら浮気をしましたね! それも他国の間者と! 貴方は売国奴だ!」


 はっ? 浮気? 間者? 売国奴?


 そう、俺には全く身に覚えがなかった。



 弟であるガブリエルの話を詳しく聞いてみると、学園にいたリリアン・ヒッカケラ男爵令嬢という女子生徒がどうやら他国の間者だったようだ。

 そして俺の記憶の中にあるその女子生徒は、とにかくドジっ娘、そう良く怪我をする子だった。


 階段から落ちたので、自宅まで馬車で送ってあげたり。

 図書室でタラップから落ちそうになったので助けたり。

 池に落ちたので新しいドレスをプレゼントして着替えさせたり。

 教科書を忘れたと言うので貸して上げたりと……


 とにかく手の掛かる女の子という印象だったリリアンは、見た目とは裏腹に敵国のスパイだった様だ。マジで?! 本当か?!


 あんなドジっ娘を間者って、思いっ切り人選ミスじゃないのか? とも思ったが、もし俺に近付くためだったとしたのなら、まあ成功なのかもしれない。


 でも俺は浮気なんてして居ない。それにこの国の事も別に話していない、そんな事をしたら袋叩きになることぐらいは俺だって知っているしねー。

 でも特定の異性と密室で二人きりになっただけでも浮気になるのだそうだ……貴族社会こえー。


 てなわけで、俺、廃嫡。売国奴。イエーイ。



 廃嫡王子って、聞いただけでも頭の悪いクソ王子って印象だけど、実は俺は喜んでいる。


 だってさ、知ってる? 王子って本当クソ大変なんだよ!


 自由な時間は全く無いしさ、お風呂やトイレまで誰かが必ず付いてくるんだぜ。安心してう〇こも出来ねー。信じられるか?


 それに俺は何を隠そう元々庶民の出なんだ。

 親父である王が結婚前に俺の母ちゃんにほれ込んで押し倒しちまって俺が出来ちまった。だから俺は母ちゃんが死んだ五歳の時にこの城に連れられて来た。

 それから王子としての地獄の日々。ここ迄よく頑張ったって自分で自分を褒めて上げたいぐらいだ。本当始めの頃は泣きたくなったぜ。ホームシックじゃなくって便秘でな。人に見られてう〇こが出来るかっての! 王子って最悪だよな……同情してくれるだろう?


 だから廃嫡了解。どっちかって言うとサンキューベリマッチョってこっちがお礼言いたいぐらいだ。これから俺には自由な生活が待っている。何をやろうかと考えるだけでワクワクしてるんだ。




 

 城を出て行く前日、親父に呼ばれた。

 もう俺は王子じゃなくなるから親父と会えるのも今日が最後だろう。

 実はさー、王様……あんまり自分の父親だって気がしないんだよねー。まあ、見た目はそっくりなんだけどさ、何てゆーか、親父は母ちゃん似の女の子が良かったみたいなんだよねー。


 だから母ちゃんが死んだ時、親父が俺を迎えに来たんだけどさ、あの時のガッカリした親父の顔、今でも忘れられねーぜ。自分に似た王子。嫌だったらしい……めんご、めんご。


 まあ、王子になってからも父親である王とは殆ど会う機会がなかった。それだけ俺も親父も忙しかったって事さ。本当王族って大変なんだよ。過労死するかと思ったぜ。俺の苦労分かってくれた? 本当に辛かったんだぜ。




 ってことで親父に呼ばれたので謁見の間にやって来た。

 部屋には親父の他に、秘書官やら事務官までズラリと揃っていた。物々しい部屋の様子に首を傾げたが、まあ殺される事もないだろうと指定の席へと着いた。


「チャックウィル、何故あんな事をした。第一王子として敵国に国の情報を売るなど、お前は恥ずかしくないのか!」


 俺は何もやって無いけど、まあ言い訳はしなかった。だって廃嫡されたいからねー。


 それにさ、証拠も何も無いのに一方的に売国奴って決めつけられちゃったんだぜ。俺が何か言った所でどうせ罪は変わらないだろう。そもそも庶民出の王子って事で、この城の人達は前から俺の事を気に入らなかったみたいだからなー。




 その後も親父は何だかんだと罵詈雑言を俺に向けてきた。

 周りのやつらは何が面白いのかニヤニヤしてそれを見ていた。まあもう二度と会う事も無いだろうし黙って話は聞いていたけどさ、キチンと調べないで罪を決定するコイツらに、ちょっとだけこの国の未来が心配になったよ。まあ廃嫡される俺にはもう関係ないんだけどなー。


「お前にやれる土地はサイハッテ村だ。危険な森の傍にある小さな村だ、そこで今後お前は庶民として暮らしていくことになる!」


 な、なーんと! 

 廃嫡なのに土地が貰えるって! それも森の近く! 俺には最高のオアシスだ!

 魔獣狩りも出来るし、ウッドハウスも作れる。木の実取りや、もしかしたら聖獣やドラゴンなんかにも会えたりして?! 


 親父のくれたご褒美に俺は口元が緩まないように我慢するのが辛かった。


(親父すまねー! あんたは良い父親だ、俺今まで誤解してたよ。まさかそんな優良物件を貰えるとは……本当は俺が罪なんか犯していないって事に気が付いてたんだな! 見直したぜ親父!)


「それから、これが今後の生活費だ……これ以上はお前にやれるものはない!」


 ウッヒョー! 何じゃこれ!

 親父が俺に出してきた金は、な、なーんと、巾着袋にいっぱいに入った金貨だった。

 庶民なら三年は遊んで暮らせる額だぜ! 普通にしてても十年は生活出来るだろう。廃嫡王子にどんだけ甘いんだよ! 親父どんだけー?!


 そうか! 今気がついた! この場にいる奴らがさっきからニヤニヤしてるのは、俺が余りにも恵まれすぎていて羨ましかったんだな。


 廃嫡されるのにすまん! どうやら親父の愛が重い様だ。


 そう言えば俺、王子の間一度も小遣いなんか貰った事無かったなー。

 まさか生まれて初めて貰う小遣いが、巾着に金貨山盛り一杯って、この国どんだけ甘いんだ?


 俺罪人なんだよな? もしかして、俺が王子辞めたいの知っててみんな気を回してくれたのか?


 そう思ったら何だか涙が出そうになって来た。


(みんなー、俺誤解してたよ。庶民出だからって馬鹿にしてたんじゃなかったんだな。なんとか理由付けて成人したら庶民に戻してやろうって、そう思ってくれてたんだな!)


 ううう、みんな優し-! ヒャッホー! 感涙しちまうじゃねーかっ!


「チャックウイル、そなたはもう王子と名乗ることは出来ない、そして我を父と呼ぶことも禁止だ。何か我に最後に言い残すことはあるか?」


 グッ、お、親父……

 なんて息子思いなんだ。それってもう王子としての仕事しなくっていいって事だよな?

 俺が庶民に戻りたいって知ってるからって、みんなが納得するような条件付けてくれるなんて……


 俺は感動した。親父の愛を今日この場で生まれて初めて感じた。ちゃんと息子だと思われてたんだな……親父……サンキュー。


 きっと俺は人生で一番最高の笑顔をこの場に居るみんなに見せたことだろう。それがせめてもの恩返しだ。


 俺は笑顔でみんなにこう言った――


「俺、最高に幸せです! 父上、皆さま、有難うございます!!」


 ポカンとしている親父やみんなに頭を下げて俺は部屋を出た。


 今日まで北の塔に幽閉されてたから、実は旅行……いや旅立ちの荷造りがまだ済んでないんだよね。


 さあ、明日出発だ。部屋に行って大急ぎで荷物をまとめなきゃなっ!


 ってスキップしながら自室に向かってたら、何故か弟のガブリエルが立ちふさがった。

 俺の元側近たちと一緒だ。どうしたんだ? あ、もしかして――


「兄上、いや、チャックウイル……元第一王子」


 ガブリエルと側近たちはクスクスと楽しそうに笑いだした。

 そうかやっぱり……


 俺を見送りに来てくれたんだな!

 別れの挨拶は笑顔で! うんうん、ちょっと笑顔が下手だけど、まあ貴族は人前で感情を出しちゃいけないって言われてるから仕方が無いよな。次に会う事は……まあ、無いだろうがそれまで自然に笑えるように頑張れよ、弟よ!


「チャックウイル、貴方は私が仕込んだハニトラにまんまと引っ掛かってくれたねー」


 ハニトラ? なんだそりゃ? 新しいパンツの名前か? 

 トランクス、ブリーフ、ハニトラ、オウ、イエーイ。


「貴方の婚約者だったペネロープ・ウラギリヤス侯爵令嬢は私の婚約者になった……ハハッ、どうだい悲しいかい?」


 うんにゃ、全く。

 ペネロープは見た目はまあ……美人だけど……まったく話が合わなかったしねー。


「ハハハッ、兄上、いや、チャックウイル、言葉も出ない程ショックかい? 信じていた私のせいで廃嫡になったんだからねー、ハハハッ、それもそうだろう」


 アハハハハッと大きな声で笑いだしたガブリエルの言葉に俺は驚いた。

 まさか……俺が廃嫡になったのって……


「ガブリエル! 有難う! お前のお陰だったんだな!」

「えっ?」

「いやー、本当王子の生活って俺に合わなくってさー、ずっと辞めたかったんだよねー」

「はっ?」

「それにペネロープ・ウラギリヤス侯爵令嬢、あの子ずっと苦手だったんだよなー、実はさー、あの子何回注意してもメイドとか虐めんだよ、付き合いきれなくってさー」

「へっ?」

「それに滅茶苦茶香水臭いしさー、話すことと言えばどこのドレスが欲しいとか、どっかの宝石店が良いとかそんなもんばっかしで、全然会話が続かなかったんだよねー」


 そうなんだよ、ペネロープ・ウラギリヤス侯爵令嬢って本当性格悪くってさー。

 自分が間違えてないって思ってんのか、メイドにも使用人にも鞭打ちとか平気ですんだよ。遠回しに何度も注意したけど変わらなかったしさー、俺小遣いなんかないのに婚約者なんだからってプレゼントよこせとか平気で言ってくるしさー。

 本当、ペネロープとの婚約が嬉しいなんてガブリエルが悪趣味で助かったぜ。それに兄思いの優しい弟で良かったよ。


「そ、そんな……だって兄上はペネロープ嬢と仲が良かったじゃないか!」

「そりゃあ、一応婚約者だったからなー、王子として必要最低限の事はしてたよ、まあ、臭かったけどなー」

「あ、兄上は王子としての仕事だって精力的に動いていたじゃないかっ!」

「だって俺達国民の税金で生活してんだぜ、嫌なんて言えないだろうー」

「そ、そんな……廃嫡になるのに……」

「そう! それそれ! ガブリエル! ほんっと有難うなっ! お前は最高の弟だぜ! じゃあ、後は頼んだぞ! 俺荷造りあるし、あ、ハニパン? だっけ? そのパンツ良さそうだったら俺にも分けてくれよなー」


 俺はもう一度最後にガブリエルをギュッと抱きしめた。

 弟は兄思いの本当に良い奴だった。腹違いとか気にしていた俺が小さな男だって良く分かったぜ。

 

 俺が別れを告げると、ガブリエルと側近たちはその場に崩れ落ちた。

 まさかそれ程別れを惜しんでくれるとはな……


 俺は涙を呑んで自室に戻ったよ。

 さらば弟よ。






 そして旅立ちの日の朝を迎えた。

 自分の荷物は母ちゃんが残してくれた魔法袋にポポイッと入れちまったので準備は簡単だった。

 なんか王都の端まで馬車で送ってくれるっていうスッゲー好待遇らしいので、俺は城の出口まで向かった。

 もう今日城を出た瞬間に王子じゃなくなるので、向かうは従業員用の出入り口だ。


 するとそこには馬車ではなく、一人の逞しい男が黒馬を連れて待っていた。


「師匠!」


 そう、なんとそこには俺の師匠であるアンドリュー騎士団長が、俺の愛馬だったティアを連れて待っていてくれたんだ。見送りだ! そう気づいた瞬間、俺は嬉しくって思いっ切りその逞しい体に抱き着いた。


 うっひゃー、流石師匠! 俺が飛びついてもびくともしねー! カッケー!


 実は師匠は俺の剣術と武術の先生だ。

 王である父親よりずっと俺の父親っぽくって、強くって、その上優しい、スッゲー尊敬してる人だ。

 

「師匠なんで?! それにティアも……」


 そうティアは城の馬だ。

 ずっと俺の愛馬だったけど廃嫡されるから、残念だけどもう俺の馬とは呼ぶことは出来ない。

 庶民になるのは超嬉しかったんだけど、師匠とティアに会えなくなるのだけは正直寂しかったんだ。


「チャックウイル王子、見送りに参りました。それとティアは私から、貴方への旅立ちのはなむけです。どうか受け取って下さい」

「師匠……」


 ティアは軍馬でもある。決して安くはない。

 それなのに俺の為にこうして準備してくれたことがスッゲー嬉しかった。マジ涙が出そうだった。たぶん貴族としての勉強をしてなかったら泣いていただろう……それ位嬉しかったんだ。


 師匠漢だ! 男の中の男だぜ! カッケー!


「それにティアは貴方以外乗せたがりませんからね、王に上手く話して安く買い取らせて頂きましたよ」

「師匠……いえ、アンドリュー騎士団長ありがとうございます。ティアの事は俺が一生大切にします。ティア、廃嫡王子の俺だけどついて来てくれるか?」

「ヒヒィーン」


 可愛く鳴いて返事をするティアの事を目じりを下げながら撫でていると、三人組の騎士が俺達の方へとやって来た。その顔には嫌な笑みが浮かんでいた。


 だけど、俺はこの笑みを知っていた……


 そう! アンドリュー騎士団長は男にモテる。

 歴戦の英雄、この国を代表する騎士団長。そして何よりもイケメンだ。


 だから弟子の俺は今まで騎士団の奴らに散々ライバル視されて来ていた。だがこんなでも一応王子っていう事で直接何かしてくる奴は居なかった。例え所詮庶民出の王子と心の中で思っていてもだ。


 だけど今は違う、俺は廃嫡王子。

 こいつらはアンドリュー騎士団長の愛を掴むためにきっと俺に挑んでくるのだろう。


 オウ、衆道。オウ、BL。愛に性別は関係ないさー。君たちにも奇跡のワンチャンあるかも知れない。頑張れ若者たちよ。俺は応援するぜ。愛は不滅だ!



「これはこれは、噂の廃嫡王子では無いですか」


 三人組の騎士は俺を馬鹿にしたように笑って居る。

 うんうん、分かるよ、俺を恋のライバルだと思ってんだよねー。

 俺悪役令嬢? んで、あっちがヒロイン? いや、セリフ的には逆だなー。


 うん、お前ら既に失敗だ。


「お前たち、何しに来た。今は訓練の時間だろう」


 恋する相手であるアンドリュー騎士団長に咎められて三人は一瞬躊躇した。

 おお、これは俺が間に入らないとダメだろう。

 師匠……こいつら焼きもち焼いてるだけなんだ、どうかその恋心に気付いてやってくれ。


「師匠、あのさ、俺は大丈夫だから――」

「お前! もう平民だろう! 騎士団長を気軽に呼ぶな!」

「ああ、うん、そうだね、めんごめんご」


 やっべー、益々焼きもち焼かせちまったぜ! 師匠にソフトタッチしたからだよな? すまん、すまん、俺にはその気は無いんだ。気付いてくれよ。


 だけど三人は顔を赤くして益々怒りだした。何がいけなかった? 謝り方か? 


「廃嫡王子のくせに騎士団長に馬をせびるなんて、噂以上の本当に馬鹿王子だな、サッサと出て行け! この廃嫡王子!」

「ああ、うんうん、もちのろんだよ、今すぐに――」


 そうだそうだと三馬鹿……じゃねーや、三人組の騎士が騒いでいると、アンドリュー騎士団長……いや、俺の師匠の雰囲気が変わった。

 なんだか滅茶苦茶怒ってる。そりゃあそうだろう、こいつら訓練サボって俺の見送りに来てんだ。師匠が怒るのも無理はない。


 だけど、師匠、こいつら恋を拗らせてんだ、許してやってくれ。中二病。いや、拗らせ男子? それに自分が一番だと勘違いしてるまだお子様なんだ。まあ……どう見ても俺より年上っぽいけどな……


「お前達……何を言って居るのか分かっているのか……」


 アンドリュー騎士団長の底冷えする程の低い怒りの声に、息がっていた三馬鹿……いや、三人組の騎士は青い顔になった。流石にやばいと気が付いたらしい。

 うん、焼きもちも大概にした方が良いと気が付いたみたいだな。少し成長したな、うん、いい子だ、いい子だ。


「師匠、あー……いや、アンドリュー騎士団長、私は気にしておりませんので、彼らの言う事は本当の事ですから……」

「チャックウイル王子……」

「あー、さんば……いや、騎士の皆さんお見送り有難う……これからもこの国を守って行ってくれ、それと弟を宜しく頼む……」


 俺が三人に頭を下げると誰かがポツリと「腰抜け……」と呟いた。



 これに怒りマックスになったのがアンドリュー騎士団長だ。

 気付けば俺と三人は手合わせをすることになってしまった……


 そう、師匠の怒りが収まらなかったからだ。弟子を馬鹿にされたんだもんな……例え恋のせいだとしても怒りは分かる。

 なので両方を立てるために、俺は仕方がなくティアを連れたまま訓練場へと向かった。




 そして大勢の騎士が見守る中、俺対三馬鹿(三人組の騎士)の試合は始まった。


「チャックウイル王子手加減は要りませんからね!」


 師匠であるアンドリュー騎士団長にそう言われてしまうと手は抜けない。

 本当は負けて三馬鹿の恋を応援してやりたかったが、三馬鹿が負けた方がアンドリュー騎士団長に個別で鍛えて貰えるだろう。その方がきっと三馬鹿も喜ぶだろうと、俺は手加減せずに戦う事に決めた。


 手刀で三馬鹿を倒すうちに、こいつらの本当の目的が分かった。


 そうなんだ……こいつらわざと俺に勝たせて城から出て行く花道を持たせたかったんだな!

 じゃなきゃ騎士がこんなにも弱いはずがないもんな。


 俺は男同士の友情に目頭が熱くなった。


(ヘイ、三馬鹿、俺はお前達を今日から心の友って呼ぶぜーーーー!)


 一瞬で俺に倒されてしまった三馬鹿は、アンドリュー騎士団長から騎士見習いからやり直すように命令を受けていた。良かったなこれでお前達の希望は叶っただろう? アンドリュー騎士団長はお前達の顔も覚えたし、きっと恋心にも気付いてくれたよ……


 俺って最後に男同士の友情に応えることが出来たんじゃねーか? どや?


 ニッコリ笑って三馬鹿に握手を求めれば震えながら握手を受けてくれた。

 ハハハッ、アンドリュー騎士団長の前だからってお前ら緊張しすぎだぜ。

 こいつら絶対に童○だなっ。


 師匠とも最後の握手を交わすと、師匠は三馬鹿に話しかけた。

 三人ともその色気にやられたのか真っ赤な顔だ。

 恋の病……かなりの重症だな……可哀想に……


「いいかお前達、チャックウイル王子が廃嫡王子と騎士団で噂されていたのは、ハイスペックチャックウイル王子を略していただけだ。今の戦いで良く分かっただろう! 二度と王子を馬鹿にするんじゃないぞ!」

「「「は、はい! 申し訳ございませんでした!!」」」


 マジかっ?! えっ? 俺って実はずっと前からハイチャック王子だったの?!

 ハイチャック王子が二つ名って、何じゃそれ!


 最高じゃーんっ!!





「えーと、じゃあ、ししょ……いえ、アンドリュー騎士団長。私はそろそろ出かけます……いや、旅立ちます」

「ええ、チャックウイル王子どうかお気を付けて……」

「ティア行こう!」

「ヒヒィーン」


 俺はこうして城を旅立ち、自由を手に入れた。

 家族にも、友人にも、そして側近たちにも恵まれた俺は、王子として幸せだったと思う。


 これからはハイチャック王子の名に恥じない様全力で人生を楽しむ予定だ。


「よし、ティア、サイハッテ村に向かって出発だー!」


 こうして廃嫡王子の冒険は始まったのだった。


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