口にするより。

有馬悠人

口にするより。

私には、お付き合いしてからもう2年ぐらい経つ人がいる。




そんな彼はクラスの端っこにいるような人で、基本的に話さない。




わかるのは意外に豊かな表情と、たまに発する言葉だけ。




少しは話して欲しいと思ったことはあるけど、押し付ける事も違うかなと思った。




そんな彼が告白なんてできるわけなく、もちろん私から告白した。






そんな彼のことが好きになったのは彼の作品を読んだから。




彼は物書きをしていて、その作品を読んだ私は彼に恋をした。




売れっ子というわけではない。




ただ、彼の描く世界に恋したのかもしれない。




たまにわからなくなる。




彼が好きなのか、彼の描く世界が好きなのか。




でも、彼の表情を見ると毎回思う。




私は両方好きなんだって。






ある日の朝。




彼より先に起きた私はテーブルの上に置いてあった、野ざらしの便箋に目を向けた。




手紙を読み終えると、私は彼の元に向かった。




さっきまで寝ていた彼は、寝癖を立てながら急いで着替えのだろうボタンをかけちがいたスーツを着ていた。




その手には、一輪の真っ赤なチューリップと指輪が。




彼は一言だけ、はっきりと言ってくれた。






口にするより。

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