読者を沼にいざなう小説
中村 天人
沼が無いなら作ればいいじゃない
みなさんはどんな小説を書いている、もしくは読んでいますか?
物語の好みは、好きな料理の味くらい人によって千差万別。
小説、漫画、ドラマ、映画。
この概念はどんなジャンルにも当てはまると思っています。
パズルのピースのように、ぴたっと自分好みの作品に出逢った時、沼にはまるがごとく夢中になってしまう。
その幸福を味わうべく、私はいつも沼を探しに旅に出ておりました。
しかし、沼の遭遇率はすこぶる低く、滅多に出会わない。
発見は奇跡に近いんです。
誤解の無いように補足しますと、面白くて好きな作品は沢山あるんですよ。
それでも満足なんですが、私の運命の恋人は少々特殊なのです。ストライクゾーンが狭いので、恋に落ちるように感情が高ぶるような作品は数年に一度しかやってこない。
しかし去年、やっと沼を見つけたんです。
どっぷりその世界に漬かれる幸せ。
あまりにハマりすぎて、すぐに完結まで読んでしまいました。
その喪失感たるや。
あの時の感情は、遠距離恋愛の恋人を想う気持ちに似ている。
文字だけで繰り広げられる小説の世界は、読者が自分好みに想像しながら物語が進んでいくため沼が深い。
新たな沼を探してKindleや図書館の本を読み漁っても、喪失感が埋められる作品には出逢わず、日に日に募ってゆく悲しみ。ミヒャエル・エンデの果てしない物語をこよなく愛する私は、図書館で続編を見つけて「これだ!」と思ったんですが、残念ながらこれじゃありませんでした。
そして、恋人と会えない切なさに追い詰められた私は、ついに解決策を見つけ出すことに。
「沼が無いなら作ればいいじゃない!」
いつ見つかるか分からないものを闇雲に探し続けるより、自分で沼を掘ってしまった方が手っ取り早い。
そう思ってしまったのが、私のアマチュア小説家人生の始まりです。
物語を書いたことは無くても、自分の好みに関して言えばプロの読者なので、誰よりも好きなものを知っている。そして、その好きを詰め合わせて物語を書き始めたのですが、それはただの物語ではなくなりました。
それは人生。
小説を書くと言う行為は、ただキャラクターを動かせば成り立つものではなく、キャラクターの人生を書き綴らなくてはいけなかった。(過去形で書いてるけど、まだまだ連載中です)
書き慣れている方は、自分とキャラクターを分離できるみたいですが、私はまだその域におりません。
その時なにを考えて行動し、どう感情が動いたのか。登場人物一人ひとりの人格を自分の中で形成し、場面ごとに作者が世界を体感して文字にしていく。
これがまた、自分の中にある感情と感覚しか言葉にならない。
小説は、作者の人生を映す鏡。
自分の中に蓄積されたものがアウトプットされていく。
この自己表現は、音楽の演奏にも似ています。
そして、執筆作業を続けるうちに、読むのと書くのとでは、楽しみ方が少し違うことに気が付きました。
始めは自己表現の一つとして物語を書いていたので、「PV0でもいいか」と楽観的に考えていましたが(今日も0)、何カ月か自分の沼を掘るために書き続けるうちに増えていった、自分以外の読者、作家仲間。
コミュニケーションツールとして素敵な仲間に出会わせてくれた小説は、交流という新たな楽しみを見つけてくれました。
上手く文章が書けなくて困っていた時、自分の小説が面白くないんじゃないかと悩んで落ち込んでいた時。
心に染み渡る言葉を下さったり、イラストを描いてくださったり、何度背中を押してもらったか分かりません。
今では、好きな作品を読むことと同じくらい、もしくはそれ以上に、コメントのやり取りで幸せを感じています。
PV0でもいいか、と思っていた孤独な私が、こうして沢山の方との出会いに支えていただけるなんて考えてもいませんでした。
いただいたコメントやレビューは、スクショして大切に保存し、つまづいたときの元気の源にさせてもらっています。
私の世界を広げてくれた小説。
いつか私以外にも、私の作品で沼にはまってくれる人があらわれること、そしてそんな作品が書けることを願いつつ、これからも執筆や交流を楽しみながら書き続けたいと思います。
いつも本当にありがとうございます!
仲間と思ってるのが自分だけだったらどうしよう!笑
読者を沼にいざなう小説 中村 天人 @nakamuratenjin
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