訪来者

目を覚ますと、そこには見慣れない天井があった。

昨夜、ベッドに横たわり、そのまま寝入ってしまったことを思い出し、バスルームへと向かう。

少し熱めのシャワーが、心地良く体に染み渡る。

と、同時に、昨日の出来事が夢では無かったのだと顔がほころんだ。

身支度を整え、ふと外を見やると、もう随分と陽が高くなっている。

かなりぐっすり寝入ってしまった様だ。

もうホクト達はオフィスで仕事をしている時間だろうか?

階段を降り、オフィスへと足を運ぶ。

オフィスのドアを律儀にノックして中へ入ると、ソファー一杯に服を広げ、鼻歌交じりに服を選別しているホクトがいた。

「おはようございます」

そう挨拶すると、服から目を離さぬままホクトが挨拶を返す。

「あ、おはよ。ね、これどう?」

中の一枚を体にあてがいながらホクトが訊ねてくる。

どうやら服の事で頭が一杯らしい。

「とてもお似合いだと思います。あ、でもそっちの色も映えそう」

やはりミモザも年頃の少女である。

つい可愛らしい服に目が向いてしまう。

「そうね、この色合いは中々良いカンジよね」

二人でああでもない、こうでもないと、少女らしいおしゃれ談議に花を咲かせていると、ドアが開き、アルがオフィスへと入ってきた。

「あ、おはようございます」

アルに気付き、挨拶するミモザに挨拶もそこそこに、呆れた声を出す。

「一体何の有様ですか?これは」

相変わらず、アルの小言など気にする様子もなく、ホクトは飄々としたものである。

「昨夜注文したのにもう届いたのよー、さすが一流ドコロは違うわよねぇ」

「まさか!」

ホクトの言葉にアルが顔色を無くす。

「前金全て服につぎ込んだんじゃ無いでしょうね?!」

「えっ!!」

アルの言葉に今度はミモザがぎょっとし、服とホクトを交互に見やる。

そんな二人の戸惑いを意にも介さず、鼻歌交じりに服を吟味し続ける。

「よし、今日はこれに決ーーーめた」

言うが早いか、その場で着ていた服をバサバサと脱ぐと、選び出した服を着け、くるくる回りながら満足そうに微笑む。

文句をつけようと口を開いたアルだったが、何を言ったところで馬の耳に念仏、暖簾に腕押しなのが解り切っているので余計な体力を使うのを止めた。

かわりに深い溜息をひとついて脱力する。

「とにかく!他の物は片付けて下さい。ここはオフィスなんですから」

左手でこめかみを挟み、右手で物を払う様な仕草をする。

「あの、大丈夫ですか?」

あまりにも力無いアルの様子に、ミモザが心配そうに声を掛ける。

「ああ、お見苦しい所をお見せしてしまって申し訳ありません」

一応はアルの言う事を素直に聞き入れ、散らばった服をダンボールに詰め込むと、ディスクの脇へ押しやり、そのままディスクにつく。

「で、調べはついたの?」

「調査内容についてはPCの方に転送してあります」

アルの言葉を受け、PCを操作する。

調査内容だからであろうか、いつも透明スクリーンに設定してあるモニターを周りから見えない様に不透明に切り替えているので、ミモザからは内容を見る事は出来ない。

「なーるほどね」

相手の事が何か判ったのであろうか?相手の事であればミモザも知りたかったが、もしかしたら別の依頼の事かも知れないので、黙って様子を見守る。

「かなりの名家ねぇ、これならば5万ギルもポケットマネーだわねぇ」

ホクトの口から出た意外な言葉に、一瞬呆気にとられる。

「調査って…わたしの事だったんですか?」

自分の事を調べられた、という事実にいささか不快感を抱く。

「そりゃそうよ、あんたの生い立ちに何かヒントがあるかも知れないしね」

なるほど、そう言われれば理解も出来る所はある。

だが、それならば直接自分に聞いてくれれば良い事ではないか。

黙って勝手に自分の事を色々調べられるというのは気分の良いものではない。

そんなミモザの心を見透かした様に、ホクトが言葉を続ける。

「本人が話すまでもないと、言わなかった事柄に重要な見落としがある事もあるのよ。あたしらはプロなの。自分達で確かめた事しか信じちゃいけないのよ」

そう言われては返す言葉はない。

あくまでホクト達とはビジネスの付き合いなのだ。

当たり前の事なのに、何故か少し胸が痛んだ。

「で、もう一つの方はどうなの?」

この短い時間で、他にも何か調べていたのだろうか?

少々とぼけた所もあるが、やはりプロなのだと感心してしまう。

「まったく、人をこき使っておいて、その間準備を整えていると思えばギャラを使い込んで遊んでいるとは」

思わず愚痴が出てしまうアルに同情すると共に、つい一緒になってはしゃいでいた自分が恥ずかしくなってしまった。

そんなミモザに対し、当のホクトは反省どころか、さも当然の様に言い返す。

「だーかーらーこそ!こうして入念に戦闘服を選んでたんじゃないの!服や化粧でモチベーションを上げるのは一流の戦士には常識でしょ」

モチと屁理屈はどこにでも付く。

とはいえ、ホクトの選んだ服は、レースのたっぷりあしらわれたブラウスに、パニエを幾重にも使ったジャンパースカートで、戦闘服と言う言葉とは程遠い代物である。

第一、戦闘とはどういう事であろうか?

「そちらも成果は上々の様です。もう間もなくでしょう」

「そう」

アルの言葉に、ホクトがニヤリと口角を上げる。

おもむろにディスクから立ち上がると、ミモザを手招きした。

「ミモザ、こっちへおいで」

慌ててホクトに近寄ると、ホクトとアルがミモザを守る様に囲む。

「昨日、アルがあんたにしたのは、あんたの気を吸い取ったんだ。それも奴等が好む陰気をね。もっとも例の文様の術ですぐに弾かれてしまったけどね」

昨日の一連の出来事を思い出す。

僅かばかりでもアルが陰気を吸い取ってくれたおかげで、昨夜はぐっすりと眠れたのかもしれない。

「で、そのあんたの気とアルの気配を混ぜて街中に振り撒いて来たのさ。相手は自分の獲物にちょっかいを出したアルを許さないだろうからね。ここまでわざわざ撒餌をしたってワケ。思った通り食い付いてくれたわ」

自分の奸計が上手く行った事に満足気に笑みを浮かべるホクト。

だが、その言葉通りだとしたら──

「おいでなすった様だよ」

ホクトの言葉と同時に、オフィス中央の空間がぐにゃりと歪み、真っ黒な闇の珠が現れた。

周りの光を吸い取ったかの様な闇の粒子が次々に集まり、暗黒が広がる。

部屋の温度がいきなり数度下がったかの様な感覚に襲われ、ミモザがブルッと身震いする。

人間ほどの大きさになった闇の中から、青白い手がぬっと現れた。

「きゃあ!」

余りの不気味さに、思わず悲鳴を上げるミモザ。

だが、現れ出たのは、ミモザの予想に反し、おどろおどろしい化け物では無かった。

一見、人間と何ら変わりない、まるで中年紳士の様な出で立ちである。

目だけを動かし、オフィスの中を見回すと、凍てつく様な視線でミモザを捉えた。

「我が花嫁に、不埒にも手を出しおった痴れ者はどいつだ?」

地の底から響く様な低い声に、ミモザが怖気上がる。

ミモザとホクトを背で守る様に、アルが数歩歩み出る。

「貴様か、覚悟は出来ているのであろうな?」

「はんっ、なぁにが我が花嫁よ。お前はただ喰らいたいだけだろう」

相手に怯むどころか、挑発する様にホクトが声を上げる。

だが、その言葉に楽しそうに唇を歪め答える。

「我が愛しき花嫁と永遠にひとつになる手段だよ。それが我が愛なのだ」

両手を広げ、誇らしげに語る姿と言葉に、言い知れぬ恐怖を抱くミモザに冷たい眼差しが突き刺さる。

「さぁ、花嫁を我が元へ!そして貴様らは」

ギッとアルとホクトを睨む。

「死ぬが良い」

そう言い放つと同時に、その手がアルを引き裂く。

しかし、手応えはなかった。

アルの体がまるで霧の様に変化し、振り降ろされた手は空を切った。

「貴様は、霧魔か」

ふん、と鼻を鳴らしアルに視線を送る。

「霧魔如き下等な魔物が、ようもこのブリード様の物に手を出したものだ」

アルが魔物?

昨日確かめるのを憚られた答えが明らかになる。

アルが魔物であるのなら、ホクトは?ホクトももしや?

僅かな動揺を見せたミモザであったが、二人が魔物であったとしても、敵ではないのだという確信の方が強かった。

「クククク…」

ブリードと名乗る魔物から、くぐもった笑いが漏れた。

と、同時にその表情が一変する。

先程までの紳士然とした顔から、目を吊り上げ、怒りの形相を露わにしたブリードは、正に魔物の禍々しさを発していた。

「我に逆らった事を後悔するのだな」

ブリードから凄まじい熱波が発せられる。

「きゃっ!」

あまりの熱に悲鳴を上げるミモザを庇う様にアルが前に立ちはだかる。

不思議な事に、ミモザの周りを霧の膜の様なものが取り巻き、熱波からミモザを守った。

その光景に一番驚きを見せたのはブリードであった。

「なんだと?!たかが霧魔ふぜいに何故その様な真似が…」

少なからず動揺を見せるブリードの隙をつくように、ブリードの死角から攻撃が飛んできた。

素早く身を翻し、致命傷を避けたブリードであったが、肩の部分をざっくりと抉り取られた。

「くっ…」

攻撃を受けた恥辱に顔を歪める。

その陰から現れたのは、不敵な笑みを浮かべたホクトだった。

ブリードの肩を切り裂いたであろう指先をペロリと舐め上げる。

「ブリード…ね。狙ったエモノとその周辺に不幸と苦痛を振り撒き、じっくりと時間を掛けてエモノが極上に育つまでその心を破壊し続ける。魔物の中でも特にいけ好かないクソ野郎」

ホクトの言葉に、ニヤリと口角を上げる。

「ミモザはまだ育て始めたばかりってワケか。でも素材としては超一級、これから更に過酷な不幸を与えておいしく育てようって矢先に横取りされるワケにはいかないものねぇ?」

「はっ、そこまで理解しわかっていながら手を出すとは、よほど死にたいと見える」

傷を負った事に一切怯む様子もなく、益々邪悪さを増すブリードの様相は、正に魔物そのものであった。

「いつまでその余裕を保てるのかしら?もうその左腕は使えないでしょう?」

肩を抉られ、ぶらんと力無く垂れ下がる左腕を顎で指して冷笑を浮かべるホクトに、ブリードが嘲笑の声を上げる。

「まさかこの程度の傷を負わせたくらいでいい気になっておるのか?こんなものは…」

何かを念じる様に、瞳を閉じ、気を集中させるブリードだったが、次の瞬間顔色が変わった。

「どういう事だ…一体…」

今まで多少の動揺を見せる事もあったが、終始余裕の態度を崩す事の無かったブリードが、明らかに狼狽していた。

ブリードをはじめ、ある程度の力を持つ上級魔物は肉体が多少損失しても問題はなかった。

魔力を使い、損失箇所を復元する事は容易いからだ。

そのため、例え四肢が千切れようとも致命傷たりえない。

魔力がある限り、物理的に上級魔物を倒す事は極めて困難なのである。

ブリードも当然、肉体の再生を試みた。

が、意に反して再生させる事が出来なかったのだ。

『どういう事だ…何故…』

焦る気持ちを抑えて、冷静さを取り戻す事に専念する。

出来るだけ冷静に、現状を把握すべく、傷口を分析した。

『これは…肉体だけではない、魔力も失われている?!』

ようやく自分の状況を理解したブリードの様子を見て、ホクトが相好を崩す。

「だから、その左腕はもう使えないと言ったでしょう?」

その言葉に、ギッと刺す様な視線を送るブリード。

並の魔物や、ましてや人間にこの様な真似ができるはずはない。

「貴様まさか…漠喰バクかっ!!」

『ば…く…?』

グリードの叫びに、ミモザの記憶の片隅にあった物語が思い起こされた。

通常、魔物を退ける能力者は、魔物を『祓う』事しか出来ないが、漠喰と呼ばれる特殊な存在だけが、魔物を喰らい、消滅させる事が出来るのだという。

しかしそれは、遠い昔のお伽話でしかなく、本当に存在していると信じる者は誰もいなかった。

『まさか、この小娘が漠喰だと…』

左腕の魔力は単に失われただけではない。

それならば他の場所の魔力を巡らせ、補えば良いだけの事だ。

しかし、抉られた部分が魔力共々ぽっかりと穴が開き、別次元に飛ばされた様に干渉する事が出来ないのだ。

『これが漠喰の能力なのかっ』

人間とは比べるべくもない長い時間を生きてきたブリードであったが、最早伝説でしか語られない存在である漠喰に相まみえたのは初めての事であった。

悠久の時を生き抜き、強い魔力を手に入れ、敵となる存在も無くなって久しく、それ故慢心し、隙を作った為に手傷を負う事になったブリードであったが、それでも狡猾に生き伸びてきた上級魔物である。

既にホクトを侮る事を辞め、敵として全力をもって排除する事に集中する。

対してホクトは、ブリードに一撃を加えたことで優位に立ち、ブリードを蔑視している様子が伺える。

そこに今度はブリードが付け入る隙が生まれていた。

「そこだ!」

全ての力とスピードを込めて、斜に構えたホクトの死角を突くようにブリードの渾身の一撃がホクトを襲う。

だがその刹那、ホクトの姿は掻き消え、体制を崩したブリードの背後からアルがブリードの傷口目掛けて魔力を放った。

「ぐあぁああぁ」

魔力のガードが欠落している傷口から、アルの攻撃がダイレクトにブリードを襲う。

致命傷とは成り得なかったが、身体が痺れて言う事が聞かない。

「こーんな誘いの隙にハマるなんて、あんたもまだまだ甘いわね」

どこからかブリードの前に姿を現したホクトが、言いながらブリードの左腕を取ると、捩じり上げ、引き千切った。

「ぐっ…」

千切られた左腕はホクトの手の中で分解され、黒い塵となり、ホクトに吸収される。

「ん、んーーーっ。流石に上級魔物は味がイイわぁ」

まるで上質なステーキを口にした時の様な表情を浮かべる。

「もう暫くはマトモに体を動かせないわよ。その状態であたし達に勝てるかしら?」

体の自由が利かず、膝をついたままのブリードを見下ろすホクトの横に、寄り添うようにアルが立つ。

── 腑に落ちない ──

先程も感じた違和感。

ホクトが漠喰だというならホクトの強さには納得がいく。

しかし、アルは霧魔という高の知れた低級魔物の筈。

そのアルが、なぜこれ程までの力を使えるのか。

アルに受けた攻撃のダメージを癒すために魔力を集中する。

その時、身体に残るアルの魔力の波動に気付いた。

「この魔力波動は…まさか!!」

大きく目を見開き、、信じられない面持ちでホクトとアルを見比べる。

ホクトの肩に手を置いたアルから、今までより更に大きな魔力が漲っている。

「あら、気付いたみたいね」

「漠喰とはそんな事まで出来ると言うのか?!」

初めて相まみえる底知れない恐怖にブリードが慄く。

「漠喰だから出来るんじゃないわ、あたしとアルだから出来るのよ」

再び戦闘態勢をとるホクト。

反射的にこの場から逃げようとしたブリードであったが、現れた時の様に空間を曲げ、別空間に繋げようとするも、アルから発せられてる霧がいつの間にか部屋全体を包み、空間への干渉を許さなかった。

「せっかくのエモノ、そう簡単に逃がすワケないでしょ」

ホクトの爪がブリードを切り裂き、今度は脇腹を抉り取った。

脇腹の肉と魔力も黒い塵となり、ホクトに吸収される。

「ぐぬぅ…」

脇腹を押さえ、壁に背を預けてなんとか堪える。

災い転じ、壁を背にした事で、前方からの攻撃に集中できる。

そう考えたブリードだったが、アルの姿が見えない事に気付く。

ホクトを警戒しながら、アルの姿を探すブリードの背後、壁の中からアルが現れたかと思うと、魔力攻撃を放つ。

咄嗟に避けたブリードだったが、完全には避けきれず、アルの攻撃がこめかみを掠めた。

「くそっ」

ブリードもアルに向けて魔力攻撃を放つが、アルの体は再び霧の様に掻き消え姿を消した。

『莫迦なっ、我が、この我がこんな所で負けると、死ぬと言うのか?!』

今まで考えたこともなかった、その死の可能性に驚愕するブリードの心を読んだように、ホクトが口を開く。

「どう?恐怖を植え付けられ、逃れられない絶望に追われる気持ちは?」

そう、それはブリードが今までエモノ達に与えてきたものだった。

「今まであんたが喰らってきた者達の痛みを、その身に刻み込んであたしに喰われな。それがあんたの報いだよ」

その言葉と同時に、ホクトが閃光の様にブリードを襲う。

その対角線から姿を現したアルもまた、ブリードに連撃を浴びせる。

なんとか反撃を試みるブリードだったが、二人の息もつかせぬコンビネーションに太刀打ちする事は叶わず、一握りの闇の塊と成り果てた。

「あ~~~~ん」

ホクトが大きく口を開けると、最後のブリードだったモノを吸い込む。

「ごちそーーーさまでしたっ」

両手を胸の前で合わせると、小さく一礼。

「ふふっ」

その変に礼儀正しい振る舞いに、先程までの激しい戦いに声を出す事も出来ず、部屋の隅でただ見守るしかなかったミモザが思わず笑いを漏らした。

「あ、ごめんなさい」

つい笑ってしまった事を謝るミモザにホクトが近づく。

そっと手をミモザの両頬に当てると、勢いよく引っ張った。

「きゃーーっ」

突然の衝撃に悲鳴を上げるミモザ。

「な、何するんですかぁ」

頬をさすりながら恨めしそうにホクトを見る。

「謝ったりするからでしょ」

「え?」

あまりに意外なホクトの返事に戸惑う。

そのミモザの鼻の頭に人差し指をちょん、と当て、

「あんたが笑う為にあいつを倒したんだ。もっとどんどん笑いなさいよ」

ホクトの言葉に笑みと涙が溢れる。

「はい!」

とびきりの笑顔で返事をした。

いつの間にか横に立って居たアルがそっと差し出したハンカチを受け取り、涙を拭う。

「ついでに成功報酬の方も忘れずにお願いね」

「もう服は買いませんからね!」

プロらしくしっかりと請求も忘れないホクトの言葉に即座にクギを刺すアル。

「はぁ?久々のまとまった収入なんだから少しくらいいいでしょ」

「どこが少しなんですか、前金全て使い込んだだけで充分過ぎるでしょう!」

「大体あんたは五月蠅過ぎなのよ、小姑か、あんたは」

「あはははは」

ホクトとアルの掛け合いと、それを見つめるミモザの笑い声が、青く晴れた空に吸い込まれていった。

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